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「自信の育て方:根拠のいる自信/根拠のいらない自信」~スポーツ指導の現場から~

 縁あって、中学生の球技スポーツでフィジカルコーチ兼監督をしています。その甲斐あって、就任2年目、昨年度敗退した地区大会で、見事準優勝を修めることが出来ました。ですが、県大会では結果が出せず、メンタルについて子ども達に伝えるための通信を作ってみました。
*以前、通信をベースに作成した記事がわりと好評なので、通信に近い形でアップしてみます。
 コーチングスキルをお持ちの方、同様にスポーツ指導をされている方の意見を聞けるとものすごく嬉しいです。

これまでのあらすじ:

 地区予選を準優勝とで突破した我がチームは、万全の準備で県大会に挑んだはずだった。だが、完璧にアップを終えたはずなのに、プレッシャーの中で身体が動かず、実力を発揮できないまま敗退してしまった。一方で、ライバル校はほどほどにいい戦果を上げていた。落ち込む彼らに、シンイチロウ・コーチは通信を書いて手渡す。
「君たちは、『ポルナレフ状態』に陥っていたのだよ」

コンセプト

ポルナレフ状態(注1)を示し、自己の状態を客観視させるとともに、マイナスである「自信の欠如」を笑いに変え、肯定的に受け止める下地とする。
・強いメンタル構築には、個人の努力ではなく、チーム環境が大切であることを示し、個人の負担を軽減しつつ、チームビルディングのきっかけとする。
・敗因を見えにくい「メンタル」中心に設定することで、順調に伸びている技術やフィジカルの問題から意図的にずらし(*2)、今までの取り組みが不安なく継続できるようにする。
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以下、通信本編

「自信」 自分を信じる心。メンタルトレーニングシリーズ。

ポル君2

「ド、ドライブ(トップスピン攻撃)が入らない・・・」と首をひねりつつ、あれこれ修正しても、結局入らなくて、何をしていいかわからなくなり、自爆するわけに行かない、と置きに行ったボールを相手に撃ち抜かれ、自分は何をしてきたのだろう、とうちひしがれたことの ある全ての卓球部員へ

問い
 A:根拠のある自信  B:根拠のない自信 
   どう違うでしょう?

A:「根拠のある自信」は、自分を支える裏付けです。

「過去に○○したことがあるから」という経験に基づくものが土台。
「たくさん練習したから」「自分の方が技術は上だから」など、支えとなる要素を信じることで自信が持てるようになります。
「ぼく、メンタル弱いんだ、自信がもてない・・・」というあなたには、
おすすめの伝統の対応策があります。
「死ぬほど練習する」
いわゆる、「地獄を見てきた男」になれば、たいていのことは平気になります。

でも、「根拠のある自信」にも、欠点があります。

△相手の方が格上だと、相手の裏付けに圧倒されてしまう。
▲裏付けというメッキがはがれると、自信がなくなる。

 いわゆる、「負ける理由を見つけて諦めてしまう」という奴です。
 「あの人、小学校からの経験者だから。」
 「相手の方がサーブ上手だから」
 「今回、テスト明けで練習できてないから・・・」 
 だから、諦める・・・。
 これが、一見完璧に思える「根拠のある自信を育てること」の欠点です。

B:根拠のない自信 はどうでしょう?

 根拠のない自信の欠点は、根拠がないのに自信を持っているので、練習しない可能性があることです。だって、練習してなくても大丈夫だと思っているので、練習しません。
 でも、「根拠がない自信」ならではの良さもあります。
「なんとかなる気がする♪」

 マンガの主人公タイプです。プリキュアとか、戦隊シリーズのリーダーがこんな感じですね。
 こういう基本設定の人に「やる気」が加わるとどうなるでしょう?
 ☆相手が強いとき
  「すげ~! アイツかっこいい!」→「よ~し、オレもやるぞ!」
 ☆自分が調子悪いとき/練習できてないとき
  「あかん、今日、調子悪い!」→「よ~し、このままで勝つ方法探すぞ!」

 そう、相手が強いことも、自分が弱いこともただの事実でしかありません。「自分が諦める理由」ではないのです。
 では、どうすれば「なんとかなる!」の心は育つのでしょうか?

最強の魔法
「なんとかなる!」の習得方法

1・考えがマヒするまで厳しい体験をする
 いわゆる「ブートキャンプ(訓練合宿)」方式です。大人の企業研修などでも使われます。「何も考えなくても身体が動く」状態を目指します。
 部活動も、基本的にこの方式です。

2・あえて無理な厳しい体験をしておく
いわゆる「トラの穴」方式。練習試合で強豪校に放り込んだり、高校生や大人と試合するのはこのタイプ。1の変形です。
 より厳しい比較対象を作ることで、「アレに比べたらましだよ」と困難を打ち消します。
 
 この二つは、基本的に「経験に基づく自信」の変形ですね。

★3・無条件に人を信じたことがある。そして、裏切られない。
 過去に支えられる自信、の変形ですが、かなり無意識です。
 「先輩、いつも勝負所で勝つな」
 「うちのチーム、5番シングルになったら(第5セットになったら)負けるはずがない」
 他人を信じることができると、いつの間にか、自分を無意識に信じています。
 脳は、他人と自分を区別できません。他人を褒めること、認めることは、自分を認めることにつながります。

 つまり、「強いチームは強くなる」の法則です。
 先輩諸君! 後輩のメンタルは君たちが育てています!

★4・無条件に人に信じられている。そして、失望されない。
 3の裏側です。脳は、相手と自分を区別できません。
「あの人が信じる自分」=「自分が信じていい自分」です。

つまり、心から「大丈夫、絶対出来る!行け~~~~!」
応援されるチームは勝ちます。
後輩諸君! 先輩のメンタルは君たちが育てています!

そう、強いメンタルは、
 信頼のあるチームにいると、勝手に育ちます!

「よっしゃ!」「ナイス!」「大丈夫!」と
 声かけがあれば、人はどんどん強くなるのです。

君たちなら大丈夫、必ず心は強くなります!

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以上、メンタルについて伝える通信でした。

配布、一読後、感想を交換させると、非常に自分たちの状態を客観視し、「出来ないこと」ではなく、「出来ていること」に目を向け、励ます声かけが生まれています
 中学校の部活動では勝たないといけないわけではなく、勝ちを目指して成長することに意味があります。成長するためには、適正な競争相手が必要で、地区大会で成果が安定してでたら、次のステージでの競争を通して、より大きな成長ができます。
 このレベルの意識付けが出来るまでプレッシャーをかけてくれた県大会の上位校に心から感謝します。

要望:監督達の語らいがしたいです♩

冒頭にも書きましたが、コーチング技術をお持ちの方や、スポーツ指導をされている方がいらっしゃったら、ご意見をお聞きできるととても嬉しいです。コメントをいただけると、とっても喜びます

*注

 注1「ポルナレフ状態」
傑作漫画「ジョジョの奇妙な冒険」第三部主要キャラ、ジャン・ピエール・ポルナレフの迷言より。第三部最強の敵であるディオに挑んだ際、ディオの能力に圧倒された場面が伝説となっている。
「あ、ありのまま、今起こったことを話すぜ」はあまりにも汎用性が高いため、メンタルの極限に追い込まれた人物を笑いながら客観視するのに最適である。
 注2「課題を意図的にずらす」
 課題の修正は行うものの、現在取り組んでいる技術課題に大きな問題は無いため。能力の不足は、取り組む技術の方向性の問題ではなく、質と時間の問題であり、意識の向上をした上で継続的に現在の取り組みを深める必要がある。というより、時間の制約で新しい取り組みは厳しい。
理由1 公立学校の部活動時間は、冬期は一日1時間を切り、平日は週に2回しか体育館が使えないため。理由2、最優先の退会は来年6月で残り半年。新しい課題に合わせた技術課題を認識させ、練習方法を定着させ、反復し、使えるように練度を上げる時間的余裕は全くなく、現在の方向性をブラッシュアップする方が効率的。


情報発信を通して、みんなが笑顔で毎日を過ごせるようにできたらと願っています。 体のケアや、メンタルヘルス、怪我の少ない動き方、などいつでも質問してください。 相手にあわせた情報発信、まず、あなたのために練習させてください。