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【学術集会・抄録】地域における見えにくい支援対象者と向き合う中でみえたこと

2022年12月17日(日)@聖学院大学
埼玉県精神保健福祉士協会 第10回学術集会 抄録
となります。

アンケートは公開することを前提に実施しております。


発達障害との付き合い方を考える会「かもみぃる」実践報告 
~地域における見えにくい支援対象者と向き合う中でみえたこと~

下茉莉・小谷野和樹・井上直之
(発達障害との付き合い方を考える会「かもみぃる」)

Ⅰ、背景と目的
私には発達障害があり、精神保健福祉士(PSW)として、障害者としての実体験を日々の支援に活かしてきた。その中で、経済的なひっ迫や精神疾患を発症するなど、状況が悪化、複雑化しないと支援に繫がることができない現実を多く目にした。目に見えて分かりやすい障害者以外は「自分達の支援対象ではない」という意識が障害福祉分野に浸透している印象を強く受け、課題として感じている。
発達障害というと、強度行動障害や困り感の分かりやすい層へ目が向きがちで、「支援が必要だが工夫できている故に見えにくく、生き辛い層」に支援の必要があるという認識は低い。しかし地域には「診断名や障害者手帳を持たない支援対象者」は存在しており、情報や相談できる場所、支援を必要としている。この課題を模索する中、長崎大学病院の今村明氏の「こころの発達 五重塔モデル」という概念を知った。すべての人に特性があり、その上に様々な要因が重なり、人格形成や対人関係の傾向が出来上がることを念頭におくと、個別支援の質を上げるためには特性理解が必要不可欠ということが読み取れる。これに基づき、かもみぃるの実践報告を行う。

Ⅱ、実践内容
2018年にインフォーマルな社会資源として発達障害との付き合い方を考える会「かもみぃる」を立ち上げた。すべての人が自己理解と他者理解を経て、納得したうえで自分の人生を選択していく力をつけることを目的とすることから、かもみぃるは「当事者会ではない」と定義づけた。対象者は、主に成人発達障害当事者(グレーゾーンも含む)や家族、支援者、企業関係者、発達障害に関心のある人である。主な活動内容は4つで、①ゆる茶話会(46回開催)②YOFUKASHI(2022年から開始し、7回開催)③よろず相談④その他(イベント・講演会・地域づくり等)としている。また、参加者の声をまとめるため、過去の参加者100名にメールでアンケート協力依頼を行った。

Ⅲ、実践結果
小規模ながらコツコツと継続したことで、少しずつ参加者が増えていった。現在は目的や趣旨を理解した参加者の一部がコアメンバーとして企画運営のサポートをしている。また、小さな親の会「あんどみらい」が誕生した。アンケート結果については20名の回答があり、現状が浮き彫りになった。

Ⅳ、まとめ
コアメンバーを含む参加者との対話を重ねる中で、すべての人が自分と相手の特性と向き合うことは、お互いを理解し、納得した上で決断や行動をすることに繫がり、「より自分らしい生活」を実現するためにとても有効であると実感した。
茶話会を通じて具体的支援に繫がるケースもあり、実際に使えるサービスがあるのにも関わらず、繋がれていない状況を変えていく必要があると改めて感じた。

後に複雑化し困難事例となってから繋がってくる可能性を考えると、支援対象者予備軍ともいえる。
地域の相談機能自体が福祉サービスの利用を前提に配備されているので、予防支援という観点からも支援対象者の見直しの必要性を感じる。また、特性と向き合うことを障害者だけに求めていてよいのだろうか。

PSWは今以上に自分の特性に向き合うべきと私は考えている。自分自身の特性と向き合うことができてこそ、利用者の特性を正しく理解し受け止められるのではないか。
かもみぃるとしては、引き続き現在の活動を継続する予定である。見えにくい支援対象者を支援機関へ繋げていくことも、かもみぃるの一つの役割だと考えている。

発達障害をもつPSWとしては、教科書的な内容ではなく、内面で起きている出来事を言語化し、支援の質向上のために発信し続けたいと考えている。また障害者、支援者双方に向けた、コミュニケーションや自己理解のプログラム実施に向け準備をしている。

学術集会で発表する機会を得て、「かもみぃるの活動」と「PSWとしての活動」それぞれで目指すべき方向性を改めて整理することができた。

▼発表スライドはこちら▼
https://note.com/simo_chamomile/n/n5c1ae90e831c

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