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【必見】公共系コンサルティングを志す人へのささやかなアドバイス

はじめに、公共系コンサルティングとは何かを述べておきます。

公共系コンサルティングとは政府(官公庁)や国際協力機構(JICA)等から公示された政策提言や調査に従事するコンサルティングを指します。民間企業をクライアントとするコンサルティングを民間コンサルティングと呼ぶとすると、行政機関をクライアントにするのが公共系コンサルティングです。(あまり一般的な語彙ではない私の造語です。ご容赦ください。)

私は学生時代、国家公務員総合職試験を突破して、いわゆる「官庁訪問」をしたものの、希望する省庁から内定を得ることができず、民間のコンサルティングファームに入ることになりました。ですが、広く社会課題を解決するような、公益性の高い仕事がしたいという想いが強く、これまでお世話になった2つのコンサルティングファームで4年間余りを公共系コンサルティングに従事することになりました。(2023年8月時点では、コンサル歴7年目です。)

地方創生・復興支援に始まり、日本企業の海外進出支援や開発途上国の援助に資する現状把握のための調査、首相の名前で発表するような公的文書の作成支援、有識者委員会の運営と取りまとめ・・・、テーマも期待される成果も様々な案件に従事する中で、公共系コンサルティングの面白さを体感することができました。

他方、このような案件を行政の方々と進めていく中で、公共系コンサルティングが真の意味で公益、ひいては国益に適っているのか?という疑念を感じざるを得なかった場面もあります。当然、やり方によっては「上手くできた」ものもあったでしょう。ただ、どうしても行政案件であることが制約条件となっていることが多々あったことも事実です。

公共系コンサルティングに関する、このような複雑な想いもあり、2023年9月から民間企業を支援するコンサルティングに戻る決断をしました。(他にも理由はありますが、論旨から外れるため割愛します。)

この記事では、次の点を中心に説明します。
・公共系コンサルティングに関わる機会はどこにあるか?
・一般的な案件獲得~案件終了の流れはどうなっているか?
・公共系コンサルティングでのやりがいは何か?
・公共系コンサルティングの限界は何か?

想定読者は、公共系コンサルティングをやってみたいと思っている学生や社会人の方々です。また、私と同じく公共政策系の大学院にいる方々にとっても現場の声をお届けすることで進路選択や論文のテーマ設定の参考になるのではないかと考えています。

今回、記事を有料にしました。

理由は名指しはしないにしても、行政機関の公示案件に対して「やや批判的」な視点で説明せざるを得ない箇所があり、一般公開をすると筆が鈍る可能性があるからです。

その代わり、通常記事を分けて書くべきところ、すべて一つの記事にまとめて記述をすることにしました。見出しから興味のあるところを中心に読み進めて頂ければと思います。(総字数をご覧いただければお分かりだと思いますが、情報量は多いです。また赤裸々に内情を記載しているため、100円喜捨いただければそれ相応の学びや笑いはあるかと思います)

では、長い前置きはこれくらいにして、本旨に入ろうと思います。


1. 公共系コンサルティングの機会はどこにあるか?

ここでは、私が主に関わった中央省庁と国際協力機構(JICA)に分けて記載をしたいと思います。

1.1 中央省庁の公示案件

まず、中央省庁(経済産業省、厚生労働省、農林水産省、etc…)の公示案件は大手コンサルティングファームやシンクタンクが担い手となっていることが大半です。大手コンサルティングファームは、戦略コンサルから総合コンサルまで幅広く公示案件で提案書を出している印象です。一方、シンクタンクはいわゆる総研系(総合研究所と冠する企業)を指します。

なぜ、シンクタンクのみならずコンサルティングファームまでが参入しているのか?私なりに理由を2点挙げたいと思います。(実際にコンサルティングファームの経営層が従業員に対して説明している内容と概ね重なります)

一つは、コンサルティングファームにとって政府系案件をやることがブランディングに繋がるからです。

本記事を書いている時点では、デジタル田園都市構想や人的資本経営、インパクト投資/ESG投資といったキーワードが官邸主導で発出されて具体的な政策に落とし込まれています。このような政策にルール形成の段階から関わっておけば、仕組みもよくわかり、民間企業にどのように適用すれば良いかの見通しも立ちやすい。

その裏返しで、コンサルティングファームの支援を受ける民間企業からしても、ルール形成から携わっているファームが伴走してくれれば心強い。こういった事情で、たとえ政府公示案件単体では十分な収益が確保できずとも、上手く動きをつくることができれば、民間企業に対する支援のところで投資分は回収できる。こういう勘定で政府系の案件に手を上げるコンサルティングファームがあるということです。

もう一つは、コンサルティングファームにとって数少ない、上流の戦略案件が残っている領域でもあるからです。

巷に「コンサル本」が溢れていることに加え、コンサルティングファーム出身者が様々な企業の経営企画部などに転職している昨今、企業は敢えて高級なコンサルタントを使って、中長期の戦略立案をする必要性が薄れています。(この説明は、方法論がある程度人口に膾炙しているという意味で必要性が薄れたという意味です)

さらには、技術革新の変化が目覚ましい今日においては、現時点を起点に3-5年の経営計画を策定する意義がだいぶ薄れています。この点にモニターデロイトは早くから着目して、大義(時代が変化しても揺るがない大目標の設定)の設定と足下(半年―1年くらいの短期的な状況への対応)を同時に進めていくような新しいタイプの戦略策定を推奨しています。

全体としては、いわゆる戦略案件は減少傾向にあり、むしろ実行までを総合的に支援することが潮流になっています。(このことを以て、End to Endで支援するなんて言ったりします)

そんな中、政治・経済・社会・技術のマクロな状況を鑑み、日本が今後採るべき政策を考える機会が得られる公共系コンサルティングは、数少ない上流の戦略案件の宝庫です。もちろん、絵に描いた餅になってしまわないよう、次年度以降の政策の実現に向けた道筋は考えて然るべきですが、大局観を持って未来を語ることができる案件機会にはなっています。

1.2 国際協力機構(JICA)の公示案件

上記の戦略コンサルティングファームも参戦するような中央省庁を中心とする公共系コンサル案件に加えて、国際協力機構(JICA)が公示をしているのが、開発途上国の調査や開発支援の案件です。つまり政府開発援助(ODA)を着実に実行するために必要な調査や実行をコンサルタントと一緒に行うことがあります。

この領域は、「開発コンサルタント(開発コン)」が幅を利かせています。※その理由は詳述します。

毎年発刊されている国際協力キャリアガイドを覗くと、具体的にどのような会社がいわゆる開発コンであるのか分かります。

他にもいくつか種類はあると思いますが、私と同じように公共系×国際系といった関心領域で公共系コンサルティングを見ている人たちにとっては、上記のコンサルティングファームやシンクタンク、開発コンの門戸を叩くことで案件に従事する機会を得ることができます。

※ちなみに、小規模な企業や個人で関わることはできないのか?という疑問も湧いてくるかと思います。結論を先取りすると「出来なくはないが、非常のハードルが高い」です。このあたりについては、第4項目のところで記載をします。

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