見出し画像

【蒸留日記vol.11】本場のクリスマスツリーことヨーロッパトウヒを蒸留してみる!

こんにちは、新年1ヶ月目いかがお過ごしでしょうか?
エフゲニーマエダは早くも夏が待ち切れなくなりました。
家を囲う大量の雑草たちに活路が見出されたのです!!

いやーまさか北海道の田舎が、中東のごとく庭からオイルが湧くオイルランドだったなんて思いもしませんでした!


さて今回はありふれた針葉樹のなかでも一際存在感を放つヨーロッパトウヒ!

広い目でみるとエゾマツの仲間で、同じトウヒ属樹木(Picea)だったりするんですが、いろいろ見比べてみるとところどころ特徴に差があることに気づかされます!

そんな北海道在来種のエゾマツヨーロッパよりやってきたヨーロッパトウヒの違いを挙げつつ、蒸留していきましょ〜う!


■ヨーロッパトウヒ/ドイツトウヒ(Picea abies)の簡単なプロフィール

ファンタジー作品を象徴する景観をつくりだすヨーロッパトウヒの森

よくハリーポッターやナルニア国物語など、ファンタジー系映画でよく見るThe北欧の森!な景観をつくりだしているのがこのヨーロッパトウヒ!(Picea abies)
とにかく背が高く、葉っぱが垂れ下がる特性により、森の中の様子を包み隠すおどろおどろしさが醸し出されます…!

英名はNorway spruce(ノルウェースプルース)
「ヨーロッパ全土に生える」というよりはその名の通り『ノルウェーなどヨーロッパ北部・北極圏寄りの寒いところ』北欧メインで生えているトウヒ属になります。

あとドイツの一部の山岳地帯にも生えているので"ドイツトウヒ"と呼ばれたりもしますよ!

※便宜上文中では2つ名である"ドイツトウヒ"と呼称します。

●本場のクリスマスツリーの木はコレ!

北海道の平地でみられるドイツトウヒの防風林

クリスマスと聞くと"トナカイ"と"モミの木"を連想しますが、実はヨーロッパ本場ではヨーロッパトウヒが本命。

アレッ?モミの木じゃなくトウヒの木なの?と混乱を招きます。

ヨーロッパにおいて紛らわしくもヨーロッパモミ(Abies alba)が生育しています。英名はシルバーファー:Silver Firと呼ばれている針葉樹です。
北海道ではトドマツが近縁種にあたります。

モミの木はこのヨーロッパモミを言うのですが、それぞれの生育特性として、モミの木は寒い北方ではなかなか育つことができないんです。
なので寒さに強いヨーロッパトウヒに占有を譲る形で、北欧のクリスマスでは身の回りにありふれたヨーロッパトウヒをクリスマスツリーとして活用しているそうなのです〜!


●北海道でのドイツトウヒ

山沿いに密植してある雪をかぶったドイツトウヒ林
ドイツトウヒは外来樹なのでキレイに列で植えられていることが多い

空知地域の旧炭鉱街で育ったエフゲニーマエダには割となじみある針葉樹だったり。
・線路脇の防風林(鉄道林)
・小中学校などの校門・校庭にズドンと生えてたり
・古い公共施設など

には必ずと言っていいほど列植してある背の高いマツなんです。
ある種北海道開拓の歴史とセットで広まった外来樹とも言えますね!

炭鉱があった時代に植えられているので、どのドイツトウヒも基本的に大柄です。

●エゾマツとドイツトウヒ、どう違う?

葉っぱが垂れ下がるのがドイツトウヒ / 横に広がるのがアカエゾマツ

ヨーロッパトウヒのわかりやすい特徴が、
①長く垂れ下がる葉っぱ
②10cm以上もある大きな松ぼっくり

などでしょうか。
さすが大陸育ち!というべきか、随所の部位のスケールがそもそもビッグなんです。

しだれてカーテン様の枝葉
トウヒ属ではかなりの大きさを誇るドイツトウヒの松ぼっくり

ドイツトウヒの葉っぱはカーテンのように長くしだれていて、1本1本が垂れ下がる独特な枝葉のつき方をすることによって、横殴りの吹雪を防いだり、霧をキャッチして水滴にするなどの防霧・防雪効果があります。

それぞれの葉っぱたち

葉っぱの1年枝を見比べてみます。
モミ属のトドマツとは違い、しっかり先端が尖っています。
これがトウヒ属の特徴であったり!

手のスケールからわかるように、アカエゾマツは小さい針葉がモシャモシャと生えますが、ドイツトウヒはその2倍以上のサイズがあります。
どちらかというとトドマツ(Abies sachaliensis)クロエゾマツ(Picea jezoensis)に似た趣を感じます。

樹皮はガリッガリで図太く生えるドイツトウヒ

ドイツトウヒの太めの幹を観察。
バキバキに裂けており、トドマツとは瞬時に違いを見抜けます。

成長の遅いエゾマツなどはこのぐらいのサイズだと国立公園内でなければなかなか拝めない。
大陸育ちのドイツトウヒは大人になるのも早いのです。


■では蒸留してみよーう!

葉っぱが大きいので釜はややスカスカに感じる

ドイツトウヒの下枝の葉っぱは長く垂れ下がっており、集めるのも意外とカンタン。
垂れ下がる枝から50cm以上はある長い葉っぱを何本か拝借するイメージ。

そして葉っぱはかなりチクチク(トウヒ属の特徴)なので釜に収めるのに一苦労。。。
長いものは細切れにせず、ロシア人のマフラーのようにグルグルと巻き入れた。
トウヒの葉っぱは大きく尖っているので、細切れにできる形してないんですよね。。。


■蒸留の結果は…?

釜いっぱいの葉っぱを2時間蒸留し、得られる精油は2mLほど

蒸留機を回して2時間しっかり待った結果が、わずか指先に乗るほどの歩留まりという結果に。

ここまで少ないのは、初回冬のラベンダー葉っぱ以来の抽出量の少なさでしょうか。
いつもなら針葉樹オイルは開始10〜20分ほどでオイル層ができるのですが、一向に溜まらないオイルになかなかアセりました((笑

蒸留2回を経ても3mLしか得られなかった

とてつもないオイルの少なさ!!!!!
ドイツトウヒはかなりヘルシーな針葉樹らしいです。
一応オイルが出ることは出るのですが、量が量という結果に。。。

ただし香りはしっかり濃厚なフローラルウォーター(芳香蒸留水)が2リットルほど得られました!
唯一エッセンシャルオイルの抽出量が少ないだけ!という見方もできますね。

●アカエゾマツよりさらに少ないオイル量

同じトウヒ属でもアジア原産と欧州原産とではこのような違いに

結果は一目瞭然です。
北海道のアカエゾマツよりさらに採れる量が少ないようです。
育つ地域・環境が違えば精油を含む量もここまで変わるとは、正直植物たちには驚かされます。。。


●歩留まりが多いのか少ないのか、国際相場探ってみた。

11.3ユーロ(¥1500ほど)

18.99ドル(¥2200ほど)

23.26ポンド(¥3600ほど)

[Norway spruce essential oil]で検索。
ヨーロッパ生産主体とはいえ、販売ショップによって価格まちまちだなぁーという印象。
そこまで流通していないのかもしれない。。。


■蒸留やってみた感想!

時期によっても葉っぱが含んでる精油量は変わるんだろうけど、トウヒ属はぜんぜんオイルを含んでいないこと(むしろトドマツがオイル持ちすぎ)の裏付けとなる蒸留結果でした!((夏も試せよオイ〜

ドイツトウヒ/ヨーロッパトウヒは西欧化の濃い歴史がある北海道ではわりとありふれた樹木資源なので、オイルだけじゃなく芳香蒸留水でもトドマツと差別化して活用出来たらよいよねーという感想を持ちました!

ドイツトウヒはその身デカいわりに、なかなか風などで倒れない丈夫な針葉樹!なので伐採の現場に出くわすことは非常に稀!

したがって安定的にオイル作れるものでもなさそうなので、北海道の精油素材のうち一つにこんなのがいるよね〜くらいの認識だろうか!

「春や夏間になるとオイルめっちゃ出ます!」とかになるとまたオイル作りでの認識もまた変わるんだろうと思います(笑)


ではでは!


この記事が参加している募集

つくってみた

若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。