見出し画像

【EURO2024】代表招集拒否は巨額の罰金!スペインの法律とスポーツの関係

こんにちは、しえです!いつもご覧いただきありがとうございます!

EURO2024、グループリーグ突破を決めているスペイン代表。2試合で突破を決めるかつ3連勝という見事な戦いぶり!

スペイン代表のインスタやYou Tubeを見ていても、チームの雰囲気はとっても良さそう。みんなで監督や選手の誕生日をお祝いしたり、モラタ選手がカルボナーラを作って振る舞ったりと和気あいあいとしています。

雰囲気の良いスペイン代表ですが、実は選手たち、スペインの法律により国際大会に参加しているということをご存知でしょうか。

今回は複雑なスペイン代表への招集と法律についてご紹介します。ぜひ、最後まで!


代表に招集されたら参加は義務

参加しないと大変なことに・・

国の代表として戦う国際大会。現在行われているEUROやワールドカップなどの大きな大会から、インターナショナルウィークに行われる親善試合、各コンペティションの予選など様々な試合が組まれています。

もちろん普段はクラブの試合もありますから、代表に選ばれる選手たちはかなり大変ですよね。休みたいときもあるでしょう。

しかしながら、スペインの選手たちは怪我などの理由がない限り、代表に呼ばれたら必ず招集に応じなければいけないという法律があります。法律!!!そう。義務なんです。

FIFAの規定もあるけれど

国の法律だけではない

FIFA(国際サッカー連盟)の規定の中には、クラブに対して「FIFAが定めるインターナショナルウィーク中の国際試合において、各国の代表に呼ばれた選手の所属するクラブはその参加を許可しなければならない」というものが存在しています。

簡単に言うとクラブ側に「インターナショナルウィーク中はオタクの選手が代表に選ばれたら、絶対に出してや」ということです。

クラブが選手を出したくないのは理解できます。可能であればしっかり体を休めて、リーグの試合に備えてほしいですもんね。規定がなければ代表招集に応じないクラブも必ず出てくるでしょうから、これは納得です。

スペインにはこのFIFA規定に加えてさらに国の法律が存在している、というわけです。

本当にある!代表招集の法律

代表招集に応じる義務はスペインの法律、「artículo 47 de la Ley del deporte」にしっかりと明記されています。

Artículo 47
1.スポーツ競技者は本国の参加する国際大会に招集された場合、大会への参加やその準備に参加することは義務である。

2.1の競技者が雇用されている場合、その雇用が特別なものであるかどうかに関わらず国際大会への参加期間中もその地位を保持するものとする。しかしながら労働活動の管理および支配の権限は停止されるものとする。

artículo 47 de la Ley del deporte 10/1990


要するに
1.呼ばれたら参加するのは義務
2.クラブ所属は変わらないけれど、活動への参加をクラブが拒否できず、労働の管理もできない

ということです。

2.はFIFAの規定と似たような内容ですが、謎なのは1です。どうして選手にまで?国の代表に選ばれてプレーすることはとても誇り高いこと、コンディションの問題以外で参加拒否する選手なんているの?と必要のない法律に思えます。

ところが、スペインでは選手自身が「スペイン代表でプレーしたくない」と代表招集を拒否してしまう出来事が過去に何度も起こっているんです。

スペインのためにプレーしたくない事件

すべては過去の積み重ね

先程のartículo 47 de la Ley del deporteが制定されたのは1990年のこと。今から約30年前、それほど古い法律ではありません。わざわざ新しくこのような法律を制定するのには、スペイン国内で「代表招集拒否事件」が何度も起こったからです。

最初はバスク人選手

バスクの旗、イクリニャ

昔からサッカーが親しまれてきたスペイン。その歴史の中で一人ではなく何人もの選手が代表招集を拒んでいます。

まず一人目がレアル・ソシエダで10年以上もキャプテンを務めていたInaxio Kortabarriaイナシオ・コルタバリア。デビューから引退までをレアル・ソシエダ所属を貫き通したいわゆるワン・クラブマンです。

彼はスペイン代表でプレーしたこともありましたが、1997年にはスペイン代表への参加を拒否。試合前にバスク地方の旗をピッチに持ち込むなどバスク人としてのアイデンティティを持つ人物でした。

現在で考えるとオヤルサバル選手が代表への参加を拒否するようなもの。それはそれは大きな問題になったのでは?と思いましたが、バスク地方ではかなり好意的に受け止められていたそうです。

外から見るより複雑なスペイン

以前スペインを訪れた際にコルタバリア選手の遠い親戚だという女性と偶然出会い、お話する機会がありました。バルで。さすがスペインのバル、誰でもいます(笑)

色々と話をしてもらいましたが、「今もスペイン代表はあまり好きではないの?」と聞いた私に「この国は外から見るより複雑だからねぇ」と言ってはっきりと答えてはくれませんでした。

スペイン代表のことを「嫌い」とは言わない。けれど「好き」でもないという層が今も存在しているんだなと感じた出来事でした。

選手のアイデンティティ

カタルーニャの地方愛は有名ですね

一番最初に代表招集を拒んだ選手はバスク地方出身でしたが、その後カタルーニャ地方出身者やガリシア地方出身者にも同じ道を選択する選手が現れます。

2000年代前半にバルセロナのDFとして活躍したOleguer Presas オレゲール・プレサスの場合も「カタルーニャ代表でいたい」としてスペイン代表に不参加を表明。メディアに大きく取り上げられました。

スペイン代表への参加を拒否する選手の多くはプレサスと同じくカタルーニャ代表、バスク代表、ガリシア代表のように「自分の地方の代表選手でいたい」という信念を持っていました。

スペインの法律によって代表への参加は義務となるわけですが、それでも地方愛の強い選手は「拒否するのではないか」と話題に上るということが続いていました。

私達から見るとスペインはひとつの大きな国ですが、強い地方愛と複雑な歴史により、スペイン代表に愛着が持てない選手も確かに存在したのです。

現在の選手たちは強すぎるスペインの地方愛と歴史、そして現代スペインの間で上手く折り合いをつけているように見えますが、かつては法律が必要になるくらい大きな問題だったというわけですね。

代表招集を拒否した場合どうなるのか?

法律で参加が定められているということは、破った場合の罰則も存在するということです。万が一現在のスペインで、代表招集を拒否するとどうなるのでしょうか。それもきちんと明記されています。

最大3万ユーロの罰金と・・

万が一現在のスペインで代表招集を拒否した場合、3,000ユーロ(約51万円)から最大30,000ユーロ(約510万円)の罰金が課せられます。これ、かなり重いですよね。500万オーバーて!

しかもこれを繰り返した場合、2年から5年の出場停止。選手で、さらに役職者であった場合は2年から5年の資格停止や役職の剥奪が行われるそうです。かなり厳しいですね。選手も大変です。

この法律が行使されたケースを探しましたが見つけられませんでしたので、多分、ないのだと思います。オレゲール・プレサスも罰金を払ったという情報は見つけられなかったので、ご存知の人がいたらぜひ教えてください。

一丸となったスペインを楽しめる時代

ありがたい時代ですね

都市伝説ではなく、本当に存在した代表拒否を禁止する法律。かつてスポーツにも政治を持ち込んでしまうくらい、スペインは複雑で難しい国だったことが分かります。今も明るく楽しく見えるだけなのか?そうは思いたくありませんが・・。

私が生きている間に、二度とこの法律のことを思い出す日が来ないように祈るばかりです。

割と過去の闇が深い国、スペイン。私は闇ごと受け止めます。歴史を超えてきたからこそ味わい深い。山あれば谷あり。決勝トーナメントも一丸となって頑張れ!








この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?