【EURO2024】歌わないんじゃない、歌えないんだ!スペイン国歌に歌詞がない理由【注目】
こんにちは、しえです!いつもご覧いただきありがとうございます!
EURO2024が開幕しましたね!日本ではWOWOWとAbemaが放送中。しかもAbemaは無料という大盤振る舞いです。誰もが世界最高峰の試合を見られるなんて素晴らしい!ぜひ一緒にスペイン代表を応援しましょう。
そのスペイン代表、今夜1時からグループリーグ第1試合のクロアチア戦に臨みます。くじ運の悪いスペインが入っているのは死の組と呼ばれるグループ。スペイン、クロアチア、イタリア、アルバニアが同居するかなり難しいグループです。なんとか勝利を上げて欲しい。
勝率が上がるらしいので、大声でhimno nacional(国歌)を歌っ・・・。
ああ!しまった!!スペインの国歌、歌詞がありません!!歌えません!
今回はスペイン国歌にどうして歌詞がないのか?をご紹介します。ぜひ最後まで!
歌わないんじゃない、歌えないんだ
国際大会に欠かせない国歌。国を背負って戦う選手たちは、国歌を歌うことでチームの団結力が上がるという研究結果が出ているそうです。
気をつけて見てみると、強いヨーロッパや南米のチームの選手は思いっきり歌っていますね。ポルトガルとかコロンビアとか。大声で歌えるような、壮大なリズムのものが多くあります。
イムノを歌うことでアドレナリンが出て、戦うメンタルが作られると言われているので歌うに越したことはない。なのに、スペインの選手たち、全員黙って聞いています。理由?歌詞がないからです。
歌詞がない国歌は世界で4カ国
国歌の歌詞にはその国の歴史や誇りが込められているもの。それぞれの国を称賛するものもあれば、戦いの歴史が歌詞となっているもの、国民を鼓舞するものも多くあります。
対して、日本のように「貴方様の世がいつまでも続きますように」と歌われているものは類をみない。そしてその珍しい歌詞を持つ日本の国歌は、世界国歌評定会にて1位に選ばれているんですよ。素晴らしい!
美しい国歌を持つ国の民として、スペインに言いたい。どうして国歌に歌詞がないの?実は歌詞がない国歌を持つ国は、スペインを含めて世界に4カ国存在するようです。
歌詞がない理由はそれぞれ
歌詞がない国歌を持つ国は、スペイン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ共和国、サンマリノ共和国。
現在も歌詞が提案され、承認を待っているらしいボスニア・ヘルツェゴビナ、多民族国家だから言語の問題で歌詞が付けられないコソボ共和国、元々が賛美歌で歌詞の必要がないという考えのサンマリノ共和国と、それぞれの国に理由はあるようです。
ではスペインは?スペインの国歌は過去に4回、歌詞を付けるのに失敗しているという歴史を持っています。
国歌「MARCHA REAL(国王行進曲)」
ではここで、スペインの国歌「MARCHA REAL(国王行進曲)」を聞いてみてください。
10年も前の映像を持ってきてしまいました。これはスペインサッカーがあまりに強く、「無敵艦隊」と呼ばれていた黄金時代のものですね。若い頃のシャビ・アロンソ素敵ですねぇ、今もかっこいいけど。
ね、誰も歌っていないでしょ。セルヒオ・ラモスとかめちゃくちゃ歌いそうなのに、歌っていない。歌詞がないから。
観客が歌っているように聞こえますが、全員「Lololo(ロロロ)」で音程を取っています。日本で言う「ルルル」と同じですね。ローロ♪ロローロ♪と歌っているだけで、歌詞ではありません。
結構壮大でいい国歌に聞こえませんか?長さもちょうどいい。歌詞を付けようと思えば付けられそうなのに、どうしてないのでしょうか。
どうして歌詞がないのか?
スペインは新しい国ではなく、ながーい歴史を持つ国です。「太陽の沈まない国」と呼ばれるほど広いエリアを統治したこともあった。国土をイスラム教徒から取り返したこともあった。輝かしい時代は長かったはずです。
ではどうして国歌に歌詞がないのか?歴史とかまとめて歌詞にすればいいんじゃないのか?でも、できない理由がいくつか存在するんです。
理由①元々が行進曲だった
まず1つ目の理由が、このマルチャ・レアルという曲の起源にあります。国歌として認定されたのは1942年のことですが、実は250年以上も前から存在する曲。軍隊の行進曲だったそうです。作曲者は不明で、行進曲ですから歌詞が存在しなかったのですね。
軍隊の行進曲が式典などに利用されるようになり、国歌としての認識が自然に高まって行ったという特異な歴史があります。
理由②言語が異なる地方が存在する
大学生で初めてスペイン国歌について学んだ際、「スペイン国歌に歌詞がないのは様々な言語が混ざった国だから」と習いました。
スペインで一般的に話されているのはCastellanoと呼ばれる言語。厳密にいうと「スペイン語」という言語は存在しないと考える人もいます。なぜならこの国、公用語がカステジャーノ以外に4つも存在するからです。
地方によって話される言葉が違い、カタルーニャ語、バレンシア語、ガリシア語、バスク語がカステジャーノと並んで使用されています。この4つ、ただの方言ではなくカステジャーノとは異なる言語なんですね。
特にバスク地方のバスク語は、カステジャーノとはまったく違う。私もそこそこカステジャーノを話しますが、バスク語に関してはまったく理解できません。単語も文法も何もかも違う。そのため「スペインの国歌」としてひとつの言語の歌詞を付けることができないんです。
理由③国民の同意が得られない
②の多言語が共存する国歌だということに付随して、国民の同意が得られないことが上げられます。
スペインは地域性が強い国である上、かなり複雑な歴史をもっています。地域性の強さもこの複雑な歴史から起因するもの。カタルーニャ地方がつい数年前にスペインから独立しようと投票を行ったこともありましたし、近代までバスクでも独立運動がありました。
国民の殆どが話せるカステジャーノであっても、地方の人からすると異なるアイデンティティの押し付けに思えてしまう。そのことから歌詞を付けることに反発する層が少なからずいるんですね。
理由④歌詞がない国歌が受け入れられている
3つ目に上げられるのが、歌詞がない国歌が普通に受け入れられているということです。世界的に見るととっても珍しい歌詞のない国歌ですが、スペインの人々は特に歌詞を必要としていない、という意見も。
歌詞がない国歌に独自の歌詞を付けて歌う歌手も存在しており、なんだか汎用性が高いんですね。自由に歌える国歌、ということでしょうか。
過去に4度、歌詞を付けようとしたことも
元々行進曲だった、言語が違う地域がある、国民の同意を得られない、歌詞のない状態で受け入れられていることがマルチャ・レアルに歌詞がない理由です。
しかしながら実は過去4度、歌詞を付けようとする動きがありいずれも失敗に終わっていることも大きな要因と考えられます。
1回目:フアン・プリム将軍時代
一度目に歌詞を付けようとする動きがあったのは1870年のこと。フアン・プリム将軍によって、マルチャ・レアルの歌詞を公募するコンペティションが行われました。主に音楽家や作詞家に向けて募集がかけられたそうです。
しかしながらどれもふさわしいとされなかったため、この試みは失敗しています。フアン・プリム将軍が銃弾に倒れたことも影響があったのかもしれません。
2回目:アルフォンソ13世時代
https://youtu.be/BTFLVsNbYzg?si=kSiqwAMYMEJh-L3G
アルフォンソ13世時代には今のマルチャ・レアルの音階に合わせて歌詞が付けられていました。この時代の歌詞はスペインよ栄光あれ!といった内容で、今歌われていてもおかしくないものです。
しかし、アルフォンソ13世が国外に亡命したことで一度も公式の場で歌われることなく、幻の歌詞となりました。
3回目:フランコ独裁政権時代
2回目はフランコ独裁政権の時代。この時にも正式に認められてはいないものの、完全に歌詞が付けられていました。
¡Viva España!(スペイン万歳!)
Alzad los brazos, hijos(腕を上げろ)
と歌いだし始められる歌詞で、国民を鼓舞する色の強いものでした。しかしフランコの死後、歌われることはなくなりました。
4回目:バルセロナオリンピック開催前
4回目は近年、2008年のこと。バルセロナオリンピックが行われる前に、歌詞を付けようという動きが盛り上がりました。
この時も歌詞が作られ、発表される直前でしたがその案が流出。大きな問題となり、取り下げられる事態になりました。
そしてその後、歌詞を付けようとする動きは今のところ見られていません。
国歌が歌えなくても
国歌を歌う、という重要な意味を持つ試合前のルーティーンが行えないスペイン代表。
しかしそれでも、黄金期にはユーロ連覇とワールドカップの優勝という偉業を成し遂げています。この時もなかったからね、歌詞。大丈夫やろ。信じています。
もうすぐ開始のEURO2024、スペインの初陣。ぜひ、試合開始前の国歌にも注目してみてください!一緒にロ♪ロ♪ロ♪で歌いましょう!
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