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農業について思うこと

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大学農学部卒業後、高等学校の農業教員を25年間勤め、2009年に47歳で有機野菜を生産直売する株式会社しあわせ野菜畑を起業しました。 この間、農業について学んだこと、考えたことを…
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記事一覧

自分の心に正直に 

 当社のスタッフは10名です。女性が多いこと、年代が若いこと、食や環境に関心が高いことが特徴です。  そんなスタッフが、お客様向けに発行しているニュースレターにコラムを順番に書いています。  先月の担当は真理さんでした。  ○    ○  ○  しあわせ野菜畑で働き始めてからちょうど1年。赤ちゃんを授かることができました。結婚して3年、子供になかなか恵まれなかったのと、子供を自分と同じアトピーや喘息にしたくないなぁとの思いから「食」と「ストレス」を見直そうと、「しあわせ野

品種の話

 大根には青首大根、白首大根、桜島大根、聖護院大根、守口大根などの種類があります。  一般的に知られているのはそこまでですが、実はその中にもたくさんの「品種」というものがあります。  例えば、今年は青首大根を育てますが、今日、品種だけでも、総太り、おしん、お春、天宝という4品種をまきました。  ニンジンは、ちはまとベターリッチの2種類です。 大根は寒さにあたった後に暖かくなると花が咲いてしまうという性質があります。これを「バーナリゼーションを引き起こす低温感応性」というので

農業ブームだったころ・・・

今週(2009年)の週刊ダイヤモンドは特大号でテーマは「農業がニッポンを救う」です。 「未開拓な農業は日本の成長の源泉である」「農業は日本に残されたフロンティアだ!」といった切り口で農業の可能性を取り上げています。 新規就農者や農業に参入した企業で働いている若者たちの笑顔があふれた本の中からは明るい未来を感じます。 興味のある方、ぜひ読んでください。 このところ、雑誌だけでなくテレビでも農業への新規参入が取り上げられるようになりました。景気が低迷する中、各地の就農説

「農ガール」「農業女子」って知ってますか?

近頃(2009年当時)、就農(農業を始めること)に関する記事を多く見るようになりました。 自然志向や環境意識の高まりや食の安全安心に関するさまざまな問題の発生の中で、ここ数年、農業が見直されて始めていたのですが、昨年の経済の悪化に伴う雇用不安の中で、新たに農業を始めることがブームのように取り上げられ始めています。 先週の日経MJ(日経流通新聞)の裏一面はこんな記事でした。 農業を始めた自分にとって、農業への新規参入ブームは追い風ではあるのですが、この記事を読みながら、危な

農業には、みんなを幸せにする力がある

 自分は47歳の時に25年間勤めた農業高校の教員をやめて農業を始めました。  専業農家の長男であった自分は、卒業したら農業をやるつもりで大学の農学部に進みました。専攻は農業経営学、卒論は「企業的農業の可能性」でした。  ところが、どう考えても農業をやって楽しい生活が送れるとは思えません。休みもお金もないような農業しかイメージできませんでした。友人たちの多くは公務員や農業や食品の関連産業に進んでいきました。  そこで、「農業高校で、生徒たちと一緒に農業の可能性を考えてみよう」と

ボツにした話 ② ③

最近、Noteに農業を始めた頃に静岡新聞の農業欄「こだま」に書いた記事を載せています。 懐かしく思う内容もありますが、悩んでいたことは10年たったのに全く変わらす、10年前の自分に励まされているような感じで読み直しています。 農業欄「こだま」は静岡県内の農業者が1年単位で交代で書きます。どんな人が読んでくれるのかなぁと楽しみと不安の中で書きましたが、改めて読み直すと今の自分を励ますために書いていたんだなぁと思ったりしています。 何を書こうかなぁと考えながら書いていたので、ボツ

野菜の日に思う

当社のメールアドレスはinfo@yasai888.comです。 @マークの後をドメインといい、好きな文字を申請することができます。 自分が最初に考えたのは yasai831です。しかし、「831で野菜」と言うのはベタ過ぎてセンスがない気がしてやめました。 さて、自分の車のナビはとっても賢くて、エンジンをかけると今日は何の日か教えてくれます。時には歴史上の出来事を教えてくれたりもします。 その賢いナビが、去年の8月31日に「今日は野菜の日です」と教えてくれるので、「おいおい、

ボツにした話 ①

最近、Noteに農業を始めた頃に静岡新聞の農業欄「こだま」に書いた記事を載せています。 懐かしく思う内容もありますが、悩んでいたことは10年たったのに全く変わらす、10年前の自分に励まされているような感じで読み直しています。 農業欄「こだま」は静岡県内の農業者が1年単位で交代で書きます。どんな人が読んでくれるのかなぁと楽しみと不安の中で書きましたが、改めて読み直すと今の自分を励ますために書いていたんだなぁと思ったりしています。 何を書こうかなぁと考えながら書いていたので、ボツ

夢を語りワクワクしながら取り組む姿勢と、前を向いて最初の思いを忘れないでブレないこと

 昨年(2013年)、静岡県農業法人協会へ加入させていただきました。 静岡県内で会社として農業に取り組んでいる120社が加わって、会員相互の交流や農業経営上の課題解決のための研究・検討などに取り組んでいます。 農業と言っても職種はいろいろ、野菜以外に水稲、果樹、花、酪農、養鶏、養豚など多彩です。野菜でもいろいろな野菜があり、温室もあれば露地栽培もあります。有機野菜だけに取り組んでいるのは当社だけです。  それでも農業を会社としてやっていくには参考になることばかり、悩みも共通す

そうそう、私が欲しかったのは、これなのよ ♡

 農業を始めた頃は栽培にほとんどの時間を費やしているのに、いいものができませんでした。ところが、出席していた勉強会で、「いいものを作るのは当たり前、難しいのは売ることです。」と言われ途方に暮れたものでした。 生産者は「いいものを作れば売れる。」と思いがちですが、それでは経営と呼べないそうです。  最近、少しずつしっかりしたものができるようになりました。そして、同時に勉強会で言われた「難しいのは売ることです」を感じることが増えました。勉強会では「今までになかった新しい価値感を

自然の恩恵に感謝

 しあわせ野菜畑がある掛川市北部の土はとっても粘土質で、作物を作るのは大変です。土は固くて重く、ニンジンや大根などは掘り上げにくいし、ジャガイモは形が無骨です。雨が降ると靴に土がついて取れません。しかし、粘土質であるため栄養分の吸着力が高く、できた野菜は味に深みがあり、野菜本来のおいしさがします。    掛川の土地は第三紀層と言われる、とっても古い年代に形成された地層が隆起してできています。古い方から倉真層群、西郷層群、掛川層群と呼ばれる地層に別れ、倉真層群は地球に隕石が衝突

水風呂と農業

 皆さんはサウナ、それから、その後の水風呂は好きですか。 自分はサウナと水風呂は体をリフレッシュさせるための修行のようなものだと思っていました。修行僧が悟りを求めて滝に打たれるようなイメージです。  いつか農業をやろうと思いつつ、その一歩が踏み出せないで悩んでいた頃、空を見上げながら露天風呂に入ると考えが整理できるような気がして日帰り温泉によく行きました。そして、サウナの後の水風呂に入りながら、「農業も水風呂も同じかもしれない。入る時には勇気が必要だけど、入った方が心にも体

「しあわせ」の積み重ね

「大角さん、どうして、しあわせ野菜畑っていう名前にしたのですか。大角さん自身が、しあわせでなければ始まらないですよ。」  農業を始めた頃、農業経営の勉強会で講師の先生から言われた言葉です。 農業経営も勉強やスポーツと同じだと思います。目標にしていたことが思い通りにいかないと、自分の進むべき道が本当にこれでいいのかと不安になって笑顔を忘れてしまいます。自分が小さく思えて、出来ない理由ばかりが浮かんできて、どうしてかなぁと後ろ向きになります。  納得のいく結果を出すまで頑張れ

鍛えよう、いつまでも

         農業を始めたころは体力的にとっても大変でした。仕事が終わって畑から帰ってくると軽トラックの直角の座席に座ったまま動くこともできなかったし、夕食で茶碗を持ったまま寝てしまうくらい疲れていました。 休みの日をとることもできないし、テレビも2年くらいは見る時間がありませんでした。寝ていて筋肉がけいれんして目が覚めたり、夏は体の中のほてりがとれなくて水風呂に入ったりしたものでした。 「鍛えよう、若き日を!」というメッセージが地元の掛川西高校のグランドの外側に掲