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「チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論」 畑中 翔太


「内村さんの現場は必ずいいチームができる」



「チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論」 畑中 翔太


ウッチャンこと内村光良さんは、新社会人となる学生を対象としたアンケート結果において「理想の上司」ランキングで5年連続1位に選ばれました。(本書刊行時。現在は6年連続。)


これはあくまでもテレビのイメージやキャラクターによるものだと考えられていましたが、実は業界内でこんなうわさがあったんですね。

内村さんの現場は必ずいいチームができる


この本の著者・畑中翔太さんは、テレビのCMやプロモーションなどの「広告・マーケティング」の企画・制作に携わっています。


畑中さんはウッチャンと広告制作で仕事をする機会があり、そこでウッチャンの仕事の姿勢に驚かされました。

内村は大御所然とした雰囲気を微塵も出さず実に自然体で、通常なら緊張感が張り詰めるような制作現場において、自分の出番ではないときも楽屋に戻ることなく、椅子に腰をかけることもなく、スタッフと同じように現場に立ち、さらにはエキストラのことを気遣い、撮影現場の空気を盛り上げてくれた。


畑中さんは「理想の上司」や「いいチームができる」というウッチャンのうわさが本当だと、実際に見て、感じて、腑に落ちました。


そして


リーダーとしての内村さんに強い興味を覚えました。いいチームをつくる〝リーダーの正体〟を知りたくなりました。


畑中さんはこれらのことが、本書を執筆するきっかけになったと語っています。


しかし


大きな問題がありました。

内村自身は「多くを語らない人」だということである。


本人にインタビューをして、仕事に対する考えや哲学などを聞けるといいのですが、そのような「リーダー論」などをウッチャン自身が絶対に語らない人であるということ。


ならば、どうするか?


畑中さんは内村光良をよく知る仕事仲間や関係者に話を聞き、取材し、分析し、内村光良像を浮かび上がらせる方法をとりました。


なので、この本は一切ウッチャンの言葉が直接語られずに、内村光良の本質に迫った「人間像」と「リーダー像」なのであります。


まさにこの他己評価が一番、その人自身を評価できる方法ではないか!


僕はウッチャンのテレビ番組を子どもたちといっしょに見ていて、よく感じることがありました。


それは


ウッチャン自身が本当に楽しそうにしていること。そのことが画面から伝わってくるのです。


同じことを「スカッとジャパン」総合演出の木目洋介氏が語っていました。

「内村さんは人を、チームを、モチベートするんですよね。

゛この人が一番頑張っているなぁ〟と自然にみんなが思ってしまう。その頑張りも、無理をしているんではなくて、楽しんで頑張っているから」


読み進めていくにつれて、ウッチャンの行動においてのリーダー像が仕事仲間によって、次から次に語られます。


そうして気づきました。その仕事仲間たちはリーダー・内村光良としてではなく、人間・内村光良が大好きであり「この人のためになら」と慕う気持ちがハンパないことでした。


僕はこの本を読んで、リーダとして必然なのは仕事ができる能力だけではダメで、それ以前の「人間力」が大きいのだと確信しました。こんなリーダーがいるなら絶対に仕事は充実して、楽しいものになるという「人間力」を持っている人。


仕事仲間が考えるウッチャンのリーダー像が


・誰よりも一番現場を「楽しむ」

・「緊張」をさせない

・少し向こうに「旗を立てる」

・「最後」は背負う

・「今日は機嫌が悪い」をつくらない

・誰かを「傷つけること」に敏感になる

・「みんな」の前で指摘しない

・「仕事人」の前に「人間」である

・つっこめる「隙」がある


僕はテレビの画面から伝わってくる楽しさの裏側に、ウッチャンの「包容力」のようなものを感じます。


僕は芸人さんが出ている番組を見ているとき、おもしろくても違和感みたいなものが残ることがありました。


でも、ウッチャンの番組にはその違和感を感じないんですよね。


このことを解消してくれる、日本テレビの古立善之ディレクターの言葉が

「誰かを貶めて笑いを取るといったレベルの企画では、(ウッチャンは)笑わないんですよ。

今までにない構造だったりとか、人が内面に抱えている矛盾だったりとか、その人が年をとることによって持つ憂いだったりとか、そういう普遍的なこと、人間味のある、でも愛があるみたいなことじゃないと、あの人自身が笑わないんですね。ただ単に若手をいじめてとか、負荷をかけてとかだけだと笑わない。

『イッテQ』でやる笑いを内村さんというフィルターにかけて〝選ぶ〟っていうのに近い


古立氏が「内村から唯一叱られた」ということがあったそうです。


リーダー・内村光良のこの気遣いが本当に印象的でした。僕はこの言葉に心を動かされ、完全に「突破」されました。


それが


大学卒業後すぐかどうかのタレント・イモトアヤコさんが、はじめて「バンジージャンプ10本勝負」のような海外ロケに挑んだときのことです。

「結果的にイモトの出世作になったロケでもあったんですが、内村さんから『イモトはまだテレビに出たてで、周りのディレクターやスタッフから〝飛べ〟と言われたら、絶対ノーと言えない。そういう絶対ノーって言えない人間を飛ばせるのはダメだよね』と、かなり強く言われました。

要するにノーって言える自由度がある人が、自分の意思で頑張ってバンジージャンプするのは笑えるけど、自由意志がない人間が、もう飛ぶしかないと追い詰められた状況で飛ぶのは違う、と」

(中略)

さらに内村はイモト氏に直接「今後、本当に嫌なときは断ってもいい。自分で断れなかったら、俺から話すから俺に電話しろ」と連絡したそうだ。

古立氏は「以後、仕事をしていくうえで、自分の中で大きい出来事だった」と振り返る。


仕事仲間との関係性、お互いの信頼がないと、こんな言葉がでてこないですよね。


ウッチャンのリーダー論だけではなく、読んでいてスカッとするエピソード満載の本でありました。



【出典】

「チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論」 畑中 翔太 朝日新聞出版


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