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Vol.19 ハーフタイム時に有効なケア方法

今回は主にサッカーに焦点を当てられた研究内容です。
その前に、僕と一緒にマガジンを書いている安田が先日、Jリーグ特別指定選手に認定されました。
とてもおめでたいです。
特別指定選手とは大学に在学しながらJリーグの公式戦に出場できるという制度です。

一般的には大学の試合もプロの試合も出場できるというのが利点ですが、
大学で学びながらプロスポーツができるという事も利点だと思います。
特別指定選手の新たな可能性を広げていって欲しいなと個人的には思っています。


さて本題に移ります。

参考論文

大学サッカー選手におけるアイスアンダーラップ、アイスタオル、冷水摂取を用いたハーフタイム中のクーリングが後半の運動パフォーマンスに及ぼす影響

○先行研究

サッカーは前半と後半を合わせた90分間にダッシュを何本も繰り返しながら行うスポーツ。
ブラジル一部リーグの選手を対象に行われた実験によると前半よりも後半の方が明らかに走行距離が落ちているという報告がある。
また、多くのスポーツ現場においてハーフタイムなどのレスト時間にアイシングをしている場合が多い。

リカバリーを目的としたアイスバスは最も効果的なアイシング方法の一つとされるが、推奨される時間は10分〜15分であり、サッカーにおいてはハーフタイムが15分のため現実的に考えたところ実施するのは難しいと言える。

そこで手軽にできる
・アイスアンダーラップ
・アイスタオル
・冷水摂取
の3つで後半の運動量に及ぼす影響を明らかにしようとした研究である。
(3つを比較した実験ではなく、ケアをせずに安静にした場合とこの3つを行った場合の比較した実験でした)


○方法

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まずは3つのケア方法については以上の通りです。
アイスアンダーラップは馴染みがない人がいるかもしれませんが、テーピングを巻く時に使うアンダーラップを冷水に浸しておいてそれを筋肉に巻きつけるというケア方法です。
割と気持ちよさそうですね。

ある大学のサッカー部で紅白戦を2回行いました。
1回目の紅白戦と2回目では2週間空けて行いました。

ハーフタイムの過ごし方

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主な実験プロトコルになります。
前半が終わった後に鼓膜温を測定しています。
鼓膜温の測定が何を意味するかというと、深部体温の計測の指標です。深部体温が回復に影響があるという報告は数々の研究で出されていますが、なかなかそれを下げるのが難しいんです。下げ過ぎてしまう場合もあります。

鼓膜温を測定したら上記の3つのケアを行い仰向けになり下肢を挙上しています。
その後にアイスアンダーラップを外して鼓膜温を測定して後半に臨んでいます。

なかなかここまで入念にケアをしているチームがあるとは思えないのですが、実際はこのくらいやる事は出来そうですよね。

1試合目と2試合目でこのようにクーリングのケアをしない場合とクーリングのケアをする場合で分けて行われました。

分析方法は、クーリング条件とコントロール条件間における移動距離前半移動距離後半移動距離
前半後半移動距離変化値
(前半移動距離−後半移動距離)
前半最高速度後半最高速度
前半後半最高速度変化値
(前半最高速度−後半最高速度)

で行われました。
要するに、アイシングをして後半の運動強度と、運動量はどうなったのかってことです。

また、主観的な身体の動きやすさも試合直後に後半直後と後半全体で10段階評価をして数値を出しました。


○結果

走行距離と走速度

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有意な差を示したのは前後半の走行距離の差です。
コントロール条件(アイシングをしていない条件)が有意に低値を示しています。
言い換えると、アイシングをしてケアをした群は走り落ちにくかったということです。
平均値で比べると

アイシングをした条件は
前後半の走行距離の差が84m
アイシングをしない条件は
前後半の走行距離の差が204.5m

約120mもの差があります
これはサイドライン1本分くらいの長さで、後半ロスタイムにそこで走り切れるかで勝負が決まる競技ですから有効な方法と言えるのではないかと思います。
また、シンプルに直線で120m走ることがほとんどないのもサッカーの特徴でそれを含めれば、割と大きな差なのではないかなというのはサッカーをしているみなさんならわかるのではないかと思います。
走速度(運動発揮力)に関しては有意な差は見られませんでした。


・深部体温(鼓膜温)の変化

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こちらは有意な差が認められませんでした。
15分間安静にしているだけで深部体温はアイシングをしている時と同じくらい下がるんですね。
ですので"深部体温を下げる!"という謳い文句の商品はよく考えてから使った方が良さそうです。
あれだけクーリングをしたのに安静時とほとんど変わらないんですもん。(短時間の場合など細かいところは調べる価値があるところでもあります)


・主観的な身体の動きやすさ

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クーリング条件の方が有意に動きやすいという結果が出ました。
でも少し気になるのは、試合終了後に後半直後の動きやすさを聞くことってどうなのかなとは思いました。
普通あんなに冷やしたりしていたら動きにくいと感じる人の方が多いように感じます。
実際にアイシング後は皮膚温が戻るまで筋発揮力は落ちるという論文も見たことがあります。

まあでも主観的な評価っていうのは実際に用いる場合はかなり大事だと僕は思っていて、意味があると思ってやるのと意味がないと思ってやるのでは効果に違いが出ると思うからです。まあこれに関しては全てのことに言えて、そんなんで学問を語るな!と怒られてしまいそうなのでこのくらいにしておきます。


○研究まとめ

今回実験で行ったクーリング方法は後半の運動量を落とさない為の有効な手段だったと言えることを示唆するものとなった。

またこの研究ではクーリングでは深部体温が下がらなかったが、皮膚温自体は当然下がっていることから
それが熱感覚を下げ、疲労感や主観的疲労強度を抑え、後半の運動量の低下を抑えたのではないかと言われています。
要するに皮膚次第を表面的に冷やすことに意味がありそうなので
ハーフタイムにサブの選手が出ている選手を仰いで風を送ったり、ひょうのうを渡して冷やさせたりする事は有効なのではないかという事です。
しかしこれはあくまで主観的な評価での実証なので科学的な根拠を得るためにはさらなる研究が必要とされるものだと思います。

○今回の私見

今回の研究はより手軽な方法でというコンセプトのもと実施されたような実験でしたが、読んでいてこれでも少し手間が多いなとは実際に思いました。
また完全に横になってしまう事は僕の感覚では後半にすぐ動けなくなるような気がします。

ですので今流行りそうな気配がある
手のひら冷却法太い血管を冷やす
などの措置でパフォーマンスがどうなるのかをもっと見ていけたら面白いなと思いました。

これからはかなり暑い季節になります。

そしてコロナ期間で十分に運動ができていなければこのような身体のケアで勝負がつく場合もあるでしょう。

このように勉強を進めているうちに自分も実践してみたくなるのでみなさんも暇なときは是非、僕と安田が書いているマガジンを読んで知識を増やしていってください!僕らも有益な情報を提供できるように日々学んでいきます!

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