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アイリスオーヤマがあえて非効率を追求するワケ

新型コロナウイルスの感染が拡大する中でマスク不足が大きな社会問題になりました。これを受け、シャープやファストリ(ユニクロ)など異業種が相次いでマスク生産に進出しました。

今回は、6月からマスクの国内生産に乗り出したアイリスオーヤマを取り上げます。同社は意思決定からわずか2ヶ月でマスクの量産体制を整備しました。このスピード感はどこから生まれたのでしょうか。

工場の稼働率をあえて7割にとどめる

アイリスオーヤマは、平時の工場稼働率を7割に抑えるというポリシーを採っています。つまり、設備にあえて余裕を持たせるということです。これは一見すると、非効率的な水準とも捉えられかねません。

しかし、同社の大山会長は、工場の稼働率に余裕を持たせることにより、経営環境の急激な変化に対応できる状態を目指していると語ります。

余裕を持たせることで、「大きな需要の変化があったときに対応できる。(急にくる)チャンスを逃さないことの方が、足元の効率化よりもトータルで見ると大きな意味がある」と述べた。

工場のムダが生んだマスクの量産体制

実際に、アイリスオーヤマがマスクの国内生産をスピーディに実現できたのは、工場に「ムダ」があったからです。工場内の遊休スペースをクリーンルームに改修したことで、マスクの量産体制を作り上げました。

角田工場内の物流倉庫の遊休スペースの一部をクリーンルームに改修し、延べ7100平方メートルに40機のマスク生産設備を導入する。

現在では、国内最大規模のマスク生産量を実現しています。

非上場企業の強み

アイリスオーヤマは非上場企業です。だからこそ、工場の稼働率を7割に抑えるという「ムダ」が可能になっています。上場企業の場合、これは簡単なことではありません。

上場企業の経営者は、資本市場からのプレッシャーにさらされています。市場からは、可能な限り資本効率を高めることが求められるのです。具体的には、ROAやROEといった指標で経営者は評価されます。

したがって、上場企業の経営者には工場の稼働率を最大限高めるインセンティブが働きます。その結果、アイリスオーヤマのように保有資産に余裕を持たせることは難しくなります。

アイリスオーヤマが非上場企業であることが、同社の「非効率経営」を実現しているのです。

今回は以上です。

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