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電通が本社ビルを売却したい理由とは?

電通が東京・港区の本社ビル売却を検討しています。もともとは報道機関によるスクープという形でした。しかし電通サイドも「本社ビルの売却について検討していることは事実」とリリースで追認しました。

当社は、2020年8月から“包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し”および“事業トランスフォーメーション加速のための施策”に着手しており、その一環として、「電通本社ビル」の売却についても検討していることは事実ですが、現時点で決定している事項はありません。

今回は電通が本社ビル売却を検討している理由を整理します。

足元の出社率は2割

日経新聞の報道によれば、電通の足元の出社率は2割程度です。同社は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、在宅勤務やサテライトオフィスの確保などリモートワークを推進してきました。

同社はコロナ拡大後の20年2月以降、働き方改革を加速してきた。同ビルのグループ社員約9000人超が遠隔勤務を実施しており、出社率は足元で最大2割程度にとどまる。東京・目黒などにサテライトオフィスを設け、本社での集中勤務を減らしている。

リモートワークの推進により、電通本社ビルには余剰スペースが生まれていました。ですから、本社ビルを売却し利用スペースを限定した上で賃貸借契約に切り替えることにより、資本効率を高める狙いがあると推測されます。

3,000億円のキャッシュの使い道は?

電通本社ビルは3,000億円規模での売却が検討されています。これまでのビル取引の国内最高額は2,000億円だったとされていますので、過去最大級の金額のビル取引になる見込みです。

つまり、電通は本社ビル売却で3,000億円のキャッシュを手にするわけです。本社ビルの帳簿価格は土地を含めて約1,800億円ですから、1,200億円程度の固定資産売却益が発生するものと思われます。

本社ビルは02年に完成した。帳簿価格は土地も含めて約1800億円で、3000億円で売却したとすると1200億円程度の売却益が見込まれる。

ここで気になるのは売却で得たキャッシュの使い道です。現時点では明言されていないものの、成長分野への投資や構造改革に費用を使っていく可能性が高そうです。電通は2020年から早期退職プログラムの実施や政策保有株式の売却など事業構造の改革を推し進めているからです。

エイベックスも本社ビルを売却

本業と関連の薄い資産を売却する動きは、他の企業でも広がりつつあります。2020年の12月には、エイベックスが本社ビルの売却を決めました。電通同様、売却後は賃貸借契約に切り替えるとしています。

24日にも取締役会を開いて最終決定し、公表する見通しだ。売却するのは「エイベックスビル」。売却後は賃貸に切り替え、当面は本社を移転しない見通しだ。

コーポレートガバナンス改革により資本効率が重要視されるようになる中で、本社ビルなどの固定資産や政策保有株式など、本業との関連が薄く得られるリターンが小さい資産の売却が進んでいます。

今回は以上です。

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