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塩素の味/バスティアン・ヴィヴェス

ほとんどセリフのないこの本をめくっていくと、イメージと感情で満たされていく。ほかの読書では、あまり得られない体験だ。輪郭線のない水の中の表現は、ほんとに水の中にいるかのように静かで、プールの非現実的な世界をよく描いている。

というか、社会人になってから、肩こりがひどい。
パソコンばかりだからなのか、肩を回すとゴリゴリ変な音がする。たしか3年くらい前、肩がこりすぎて、身体の色んなところの調子がわるくなって、それで病院に行ったら、運動をしてください。とか言われて、
それでたまにプールにいく。

子供の頃、水泳を習っていた。理由は特になくて、習い事の定番だったから親がやらせただけだ。それで、物心ついた頃から毎週通っていたけれど、特に楽しいということもなく、小学校の高学年になる頃いつものビート板キックをやらさせられながら、ふと、
なんでこんなことしてるんだろう
と思ってしまった。
それで間もなくやめてから、プールに行く理由もなくなって、遠ざかっていたのだけど、、、

だけど、プールはみかたによっては詩的な空間だ。子供の頃に受け取っていたイメージが抜けた頃、村上春樹の小説の主人公がプールで泳いでいるのを読んでいて、あの文体にやられてか、
ん?プールってオシャレなのか?
という気がしてきて、それで近くの市民プールに通い出したことがある。

水の中に沈むと聞こえる音。プールの底でゆらゆらしてる光の模様。プールの匂い。監視員の笛の音の響き。プール全体に漂う青っぽい色調。

しばらくプールに行くのをサボってたけど、これを読んでまた通いだした。


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