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雑誌編集の仕事の話|ワンダーフォーゲル2021年2月号

現在発売中のアウトドア雑誌『ワンダーフォーゲル』2021年2月号で、昆虫のページの編集を担当させていただきました。
東北大学教授の昆野安彦さんに、高山昆虫の生態や上手な見つけ方のコツなど、初心者にもわかりやすく教えて頂きました。
今回は、このページを編集するときに考えたこと、見本誌が届き他のページを読んで感じたことなどを書いてみます。

今回の特集の内容は?

特集のタイトルは、「登山者のための北アルプス自然読本」です。
地質・植生・動物の3章構成で、熟読すれば北アルプスの自然通になれそうなボリューム感に仕上がっています。
ポイントは〝登山者のための″という部分。難しい学問の本ではなく、登山をする上で知っていると面白い、役に立つような知識を詰め込んだ1冊となっています。

登山をするなら、自然のことを学ぶべき?

登山を始めるときって、まず必要な道具を揃えたり、登山技術の本を読んだり、行きたい山を調べたり、そういう現実的な部分から入る方が多いと思います。限られた時間のなかでピークを目指して、安全に下山することを考えていると、山の中でゆっくり自然を楽しむ余裕がないという人もいるかもしれません。

でも、その現実的な山に行くための準備って、実は自然学の入り口なんじゃないかって思います。例えば登山計画を立てるときにも、山の天気は変わりやすいから雨具を持っていこうとか、この山は滑りやすい岩質だから転倒に注意しようとか、この山域にはクマが出るからクマ鈴を持っていこうとか、山でのサバイバル技術って、昔から登山者が実体験とともに積み上げてきた、リアルな自然学だと思います。

そして、登山者の多くは、興味の対象は違えど、自然とともにあることが好きな人たちです。どんなにハイペースで登山道を歩いていても、ふっと立ち止まった瞬間には、周りの自然が、目に、耳に、入ってきます。
足元に咲いている花の名前は何だろうとか、いつも聞こえてくるあの鳴き声はなんていう鳥のものだろうとか、なんでこんな不思議な形の岩があるんだろうとか。山に登れば登るほど、山の自然のことが知りたくなってくるはずです。

何が言いたいかというと、「自然のことを学ぶべき」だなんて、気負って勉強しなくてもいいと思うんです。好きな山のこと、目の前の自然のことを、好奇心のままに少しずつ知っていくことが、登山者のリアルな自然学ではないでしょうか。
なので、今回の昆虫ページを編集するにあたっても、登山者としての好奇心を大切に、登山者が興味を持てる内容にすることを心掛けました。

大学教授は、大学に籠って研究しているのか?

皆さん、大学教授って聞いてどんな人を思い浮かべるでしょうか?
教壇に立って難しいことを教えている人?研究室に籠って研究をしている人?私が大学生の時に教室で見た教授は確かに皆そういうイメージでしたが、それは遠くから眺めていたからかもしれません。

編集の仕事をする上で、専門家にお話を伺う場面は多々あります。そんな中で出会った、自然を研究する大学教授の皆さんは、そういうインドアなイメージとはかけ離れています。
植物の研究者は植物を、クマの研究者はクマを、イノシシの研究者はイノシシを、蝶の研究者は蝶を追って、どこまでも自分の足で追いかけていきます。とにかく研究対象が好きで、どこで発見できるのか、どうすれば気づかれずに近づけるか、研究対象を保護するためにはどうすればいいかなどを日々試行錯誤しています。
ピークを目指して歩く登山者とは一見交わらない存在に見えますが、お話を聞いてみると、実は山が大好きな熱い人たちが多いんです。
今回昆虫ページを監修・執筆いただいた昆野安彦さんも、蝶や昆虫への愛に溢れ、自ら北アルプスに何度も足を運ぶ、とても素敵な方でした。

今回のワンダーフォーゲルの特集では、大学教授に限らず、各分野の専門家の人たちに取材してまとめたり、専門家ご自身にコラムを書いていただいたりしています。編集の時点では、外部編集者は他のページに目を通す機会はないのですが、見本誌が届いて全体を通して読んでみると、本当にそれぞれのページに、それぞれの専門分野に対する熱い想いが溢れていました。高山植物やキノコ、鳥、ケモノ、昆虫などの図鑑は、眺めているだけでワクワクしてきます。
ぜひ気負わずに、読み物として読んでほしい1冊だなぁと思います。

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