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身近に潜む相対性

【前提】
突然だが、私はうどんより蕎麦が好きである。
犬より猫が好きで、コーヒーより紅茶が好きでもある。

このような表現は、相対的な表現である。
相対的とは、それ単体では値が定まらず、他のものとの比較によって初めて実態が分かる状態を言う。
単に「蕎麦が好き」は絶対的な表現であり、これを言った人は間違いなく蕎麦が好きである。
しかし「うどんより蕎麦が好き」と誰かが言った場合、その人がうどんが大好きな人であれば、蕎麦はさらに上をいく大好物という意味になるが、うどんがそもそも嫌いな人が言ったとすれば、蕎麦の方がうどんよりはまし、くらいの意味にもなりうる。
相対性の上で何かを考える時は、基準となる値がどこにあるかがとても大切なのである。


【事例1】
私は毎晩寝る前に目薬を使うのが習慣化しているのだが、2~3ヶ月単位くらいの周期で、ある小さな問題が発生する。
それは、目薬がうまく目の中に入らなくなることである。
1回の失敗で済めばまだよく、2,3回と失敗することも多々ある。
数日後には問題なく一発で成功するようになるのだが、この問題は定期的に発生するのである。

実は原因に見当はついている。
目薬を使い始めた頃、どうも自分が「ここだ」と直感で思う場所で目薬を垂らすと、毎回目の下側に大きくずれてしまってるようなのであった。
少し上にずらし、また失敗したらまた少し上にずらし、、、とやっていくのは勿体無いし面倒である。
そこで私は、上手くいった時の感覚の覚え方として「ここだ、と思った場所より親指の太さくらい上にずらした場所」と覚えていたのである。
なので私は目薬を使う時は、まず最初に自分が「ここだ」と思う場所に目薬をセットし、その後に親指の太さ分だけ上側にずらしてから使っているのである。
こうすることで、うまくいくようになった。

しかし、2,3ヶ月するとそのうち目薬がまた目の下側に少しずれだすのである。
ずれていく原因はおそらく、「ここだ」と思う最初の位置が徐々にずれていっているからである。
「親指の太さ分」という移動量は、目の前にある親指を見ながらやっているのでズレは大きくならない。
となれば、そもそも最初の位置がずれていっている以外に原因は思い当たらない。
私は目薬が失敗しだすと、「ここだ」という最初の位置感覚を取り戻すためのキャリブレーション(調整)を行う必要があるのである。
(そもそもこんな厄介な覚え方をやめたほうが早いと思うのだが...)


【事例2】
私は数ヶ月前に少々奮発して、少し高級なマットレスを購入した。
どうもマットレスをより長持ちさせるための使い方があるらしく、配達に来たお兄さんから説明を受けた。
「3ヶ月に1回マットレスを回転させてください。表裏をひっくり返す回転と、頭と足側を反転させる回転を3ヶ月おきに交互に行ってください」

しかしマットレスは分厚く重いため、なかなかこれを1人で行うのは大変である。
(現に、配達には屈強な男が二人して運んできたのである)

どうにか少しでも楽な方法はないだろうか。
裏表をひっくり返すのは他に方法がなさそうだが、頭と足側を反転する回転に関しては、あくまで寝ている人の向きに対する相対的な話なので、マットレスではなく寝ている自分が回転すればいいではないか。
そうすることで、3ヶ月経ったら私の寝る向きを逆にし、さらに3ヶ月経ったらマットレスをひっくり返す、とすればいいので、手間が半分になるではないか。

こうして、私は半年に1回マットレスをひっくり返すだけで良くなったのである。
(と言いたいところだが、実際にはベッドフレームの形状との兼ね合いで私が向きを変えることは難しく、おとなしくマットレスを回転させている


【まとめ】
何かの問題について考える時、それが絶対的なものなのか相対的なものなのかを一度は考えてみることにしている。
絶対的な問題は愚直に解決するしか方法がないかもしれないが、相対的な問題であればそこには思わぬ解決方法があるかもしれないし、そもそも問題と思っていたものが問題ではなかった、ということすら起こるかもしれない。


遠藤紘也
ゲーム会社でUIやインタラクションのデザインをしながら、個人でメディアの特性や身体感覚、人間の知覚メカニズムなどに基づいた制作をしています。好きなセンサーは圧力センサーです。
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