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【AIと戦略】Appleのプライバシー問題への取り組み!『予測マシンの世紀 第四部』#20

こんにちは。シンラボ共同代表の草場です。

AIとの共同に関して、『予測マシンの世紀 AIが駆動する新たな経済』をまとめていきます。推理小説のようで、ドキドキワクワクです。

目次
はじめに―機械知能
安さはすべてを変化させる
第1部 予測
第2部 意思決定
第3部 ツール
第4部 戦略
 第十五章 経営層にとってのAI
 第十六章 AIがあなたのビジネスを変容させるとき
 第十七章 あなたの学習戦略
第5部 社会(AIと人類の未来) 

いよいよ第四部、戦略です。どう戦略に組み込むか、一番大事な部分です。先日の記事は以下。

■あなたの学習戦略
昨日は、学習の方法にシミュレーション、クラウド、エッジを最大活用することを見ました。

本日は学習に必須なデータに関して、プライバシーという観点で見ていきます。学習には、データを提供してくれるお客様が必要な場合が多いです。ここで、戦略を決める必要があります。

戦略とは、何かを犠牲にして何かをすることだとすれば、AIの分野では、Appleほど強く、早くからコミットしている企業はない。ティム・クックは、アップルのホームページのプライバシーに関する特集ページにこう書いている。
「Appleでは、お客様の信頼が私たちのすべてです。だからこそ、私たちはお客様のプライバシーを尊重し、強力な暗号化と、すべてのデータの取り扱い方法を規定する厳格なポリシーで保護しています」

以下がページです。

さらにこう書いている。
「数年前、インターネットサービスの利用者は、”ネットサービスが無料である場合、あなたはお客様ではなく、商品である”ということに気付き始めました。お客様は製品なのです。しかしAppleは、優れたカスタマーエクスペリエンスはお客様のプライバシーを犠牲にするものであってはならないと考えています。」
「私たちのビジネスモデルは非常にわかりやすいです:私たちは素晴らしい製品を販売しています。私たちは、お客様のメール内容やウェブ閲覧の習慣に基づいてプロファイルを構築し、広告主に販売することはありません。また、お客様がiPhoneやiCloudに保存している情報を「収益化」することもありません。また、お客様に販売するための情報を得るために、お客様のEメールやメッセージを読むこともありません。私たちのソフトウェアとサービスは、私たちのデバイスをより良くするために設計されています。単純明快です。」

データを広告に活用するか、製品の向上に活かすか。どちらがいいかはわかりません。Appleは徹底して顧客目線を貫いています。ビジネスモデルが明確で、「顧客が喜ぶ製品を売る」です。その製品の向上のために、データを収集していると。

Appleは、政府の規制によってこの決定をしたわけではない。このコミットメントは、その仕事をより難しくするでだろう。Appleは、プライバシーを尊重した形でAIを行うことを計画している。アップルは、消費者が自分のデータをコントロールしたいと思うようになることに、戦略的に大きな賭けをしている。
セキュリティのためであれ、プライバシーのためであれ、Appleはその取り組みによって、消費者が自分のデバイスにAIを搭載する可能性が低くなるのではなく、高くなることに賭けている。アップルだけでなく、Salesforce、Adobe、Uber、Dropboxなど、多くの企業がプライバシー保護に多大な投資を行っている。

こう見るとAppleは多大なコミットをしていますね。特に大事なのは、消費者が自分のデータを自分でコントロールしたいと思うことにかけている点だと思います。自分のデータを使って、自分のデバイス自体を賢くすると。これが可能になったのは、プライバシーを保護するデータ分析の技術的進歩、特にシンシア・ドワークによるディファレンシャル・プライバシーの発明があったからだそうです。以下をご参考に。

そして、これは戦略です。

この賭けは戦略的なものだ。Google、Facebook、Amazonなど、他の多くの企業は、データを利用してよりよい製品を提供することをユーザーに伝え、別の道を選んでいる。アップルは、プライバシーを重視することで、提供できる製品を限定している。
例えば、アップルとグーグルは、それぞれの写真サービスに顔認識機能を搭載している。消費者に役立つためには、顔にタグを付ける必要がある。グーグルは、顔認識をグーグルのサーバーで行っているため、デバイスに関係なくタグを保存することが出来る。一方、アップルは、プライバシー保護の観点から、顔認識をデバイスレベルで行うことを選択した。つまり、Macで知り合いの顔をタグ付けしても、そのタグはiPhoneやiPadには引き継がれない。当然のことながら、プライバシーへの配慮と消費者の使い勝手との間に障害が生じることになる。

トレードオフですね。著者も以下のように書いています。

実際にどのようなことが起こるかはわからない。いずれにしても、私たちの経済学者のフィルターによれば、人々のプライバシーに関する懸念と予測精度のトレードに関連する相対的なペイオフが、最終的な戦略的選択の指針となることは明らかだ。プライバシーが強化されれば、企業は消費者について学習することを許可されるかもしれないが、その学習が特に有用ではないということにもなりかねない。

データがあればあるほど精度が上がりますが、プライバシー懸念高まります。逆も然り。AI導入にあたり、真剣に考えるべき課題です。

草場壽一
https://sinlab.future-tech-association.org/


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