【続・感染症後の世界】ニューノーマル時代に大変革を迎える分野#4-1 デジタルインフラなど
こんにちは。シンラボ共同代表の草場です。
超有名オライリーメディアの創業者ティム・オライリー氏が、感染症後の世界で必要なテクノロジーについて書いた本、「21 Technologies for the 21st Century」の第二部、「New Normal」についてまとめています。
7. 私たちが知っているようなオフィスの終わり
8. クラウドコンピューティング
9. アジャイル、スケーラブル、レジリエンスの高いデジタルインフラと運用
10. 働く人としてのAIとアルゴリズム
11. 市場の調整
12. センサーとモノのインターネット
13. ロジスティクス
前回の記事は以下です。
今回は、アジャイル、スケーラブル、レジリエンスの高いデジタルインフラと運用、についてです。長すぎて二つに分けましたが、それでも長いです。
9. アジャイル、スケーラブル、レジリエンスの高いデジタルインフラと運用
ここでは、サービスとしてのソフトウェアの話が展開されます。感染症の影響で、自治体等のデジタル化が加速しています。なかなか進まなかった分野が一気に進んだ点に注目し、そもそもソフトウェア業界の仕事の仕方を概説しています。
ソフトウェアの有用性、脅威を広く認知させたが、Marc Andreesen氏の「Why Software Is Eating The World」です。日本語に訳した記事は以下。
Andreesen氏は当時、以下のように指摘しています。
ますます多くの主要なビジネスや産業がソフトウェアで運営され、オンラインサービスとして提供されるようになっている。新しいソフトウェアのアイデアは、既存の産業を侵略するシリコンバレースタイルの新興企業の台頭をもたらすだろう。
しかし、現在はAndreesen氏の指摘からさらに進んでいる、とオライリー氏は主張しています。昔のソフトウェアは、注文するとCDが送られてきて、それをPCにインストールしていました。今は直接ダウンロード、変更もリアルタイムで反映されます。以前紹介した21世紀の最低限必要なテクノロジーであるGitHub上ではソフトウェアのソースコードをいつでも改変して共有できます。
オライリー氏が言うには、
Andreesen氏は、ソフトウェアを駆使したビジネスが、従来の 20 世紀のビジネスとどのように異なるのかについては触れていない。
ここから、この本では、ソフトウェアについて深く考察されています。
ソフトウェアは、どのように使用され、どう評価をさえているかを検証し、継続的に修正・改良されなければならない。シリコンバレーの企業では、これを「Build-Measure-Learn」サイクルと呼ぶ。
すべての企業は、社外の誰もが目にするユーザーに向けたアプリケーションと、企業の学習を支援する並行した「神経系」の2つの別々のソフトウェア・アプリケーションを構築しなければならない。肉体とよく似ている。私たちの筋肉は、視覚的、触覚的、聴覚的、触覚的、触覚的なフィードバックがなければ役立たずであり、筋肉を制御し、自分の意志だけでなく、外部からの刺激にも反応することができる。
肉体の例えはまだよくわかりませんので、もう少し見ていきます。
「Build-Measure-Learn」サイクルは、シリコンバレーの起業家精神の秘訣について最も影響力のある本、Eric Ries著『The Lean Startup』の中で見事に説明されている。この本では、ユーザー中心の反復的でデータ駆動型のプロセスを通じて、人々が実際に何を求めているかを効率的に発見するための方法論が紹介されている。この方法論は、スタートアップのためだけのものではない。「Running Lean(オーディオ、英語)」、「Lean Enterprise(英語)」、「Lean Analytics(英語)」、「Leading Lean(英語)」、 「UX for Lean Startups(英語)」を含む一連の書籍では、この方法論をより詳細に掘り下げ、さまざまなタイプのビジネスに適用している。
リーン・スタートアップ、とても有名です。この本で止まっていたので、それに続く本を読み、様々なタイプのビジネスに適用するフレームワークを学んでみます。
しかし、しかし、です。デジタルネイティブ企業はこんなところはあっという間に通り越しているそうです。
しかし、デジタルネイティブ企業は、「Build-Measure-Learn」サイクルをはるかに超えて、ほぼ自律的なデジタル神経系を構築している。
GoogleやAmazonのような企業は、ユーザーから学習し、その学習をリアルタイムで適用する膨大な自動システムを構築している。それらを構築するプログラマーも深堀りやデバッグ、意味のあるアップデートを行っているが、彼らが構築するプロセスはそれ自体が動的である。
典型的な例がGoogleの広告オークションで、毎秒63,000件の検索に対して動的に広告オークションを実行している。ヘッジファンドやウォール街の銀行のプログラマーは取引モデルを構築していますが、実際の取引の意思決定は、彼らが書いたプログラムが1日に何百万回も行ってる。これは、ビジネスの意思決定の本質を完全に変えてしまう。
ユーザーからの声を集めて、すぐにサービスに反映するフィードバックループをほぼAIがやっている、しかもそのスピードが、私が考える想定の遥か上でした。ビジネスの意思決定の本質が変わる。
ソフトウェアの世界では、「ウォーターフォール方式」という開発手法があります。ビルの設計のように、設計図をきちんと作成し、納期を決め、細かい作業工程にすべて落とし込んで開発を進める手法です。
21世紀、この方法は欠陥があると指摘されています。
2013年のHealthcare.govの失敗後にクレイ・シャーキー氏が書いたように、"ウォーターフォール方式は、実際の作業をしながら何も学ばないことをすべての関係者が誓うものである"。この失敗はソフトウェアに限ったことではない。以前、シンガポールの主任公務員だったピーター・ホー氏は、「私はアメリカの企業と一緒に仕事をするのは嫌いだ。彼らは契約書に何でもかんでも前もって明記したがる。常に未知のものがある。一緒に学んでいくようなパートナーシップが欲しい」と言っていました。
ウォーターフォールに代わる方法が、タイトルになっている「アジャイル」です。小さなチームによる反復的な開発であり、構築し、測定し、進むごとに学習していくということです。
そして、リーン・スタートアップのところでも述べましたが、この方法は、ソフトウェア開発を管理するためだけのものではありません。
この手法は、事実上あらゆる種類の製品開発のための教訓を持っており、使用していない企業は、深刻な競争上の不利な状況にあります。
また、ソフトウェアは開発だけでなく、その後の運用もセットで考える必要があります。これは勿論、ソフトウェアだけでなく他の分野にも当てはまります。DevOpsと呼ばれる動きです。
「DevOps(デブオプス)」とは、 開発手法やツールを使って 開発者と運用者が密接に連携することで、 より柔軟かつスピーディーに システムを開発することです。
サービスとして運用されなければならないソフトウェアを構築するアプローチとして、DevOpsは、サービスを構築して実行するさまざまなチーム間のコミュニケーション、スケーラブルになるようにプロセスを自動化すること、リーン原則(トヨタのリーン・マニュファクチャリングの実践の意味で、ボトルネックにつながる制約を特定して改善することに焦点を当てています)、測定、ベストプラクティスの共有に焦点を当てている。この組み合わせをCALMSと呼ぶこともある。
むちゃくちゃ長くなりそうなので、今回はここまで。
草場壽一
https://sinlab.future-tech-association.org/
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