見出し画像

【逆噴射小説大賞ピックアップ】2023年版 その弐

ここのところ絶妙に忙しく、前回のピックアップから間が開いてしまいました……。

逆噴射小説大賞の応募作品のなかから僕なりにテーマを決めてピックアップをしていきますの第二回目です。なおテーマは機密事項として非公開ですが、全体のトーンからなんとなく察することができるかもしれません。

では、やっていきます。


レザレク

特殊清掃ならぬ特殊葬送お仕事もの感があり、これは間違いなくおもしろくなりそう……と感じました。800字と短いなかでも主人公の故人への接し方など、しっかりと人物が掘りさげられている点にも好感を持ちました。ベテランと新人のバディという組み合わせも王道感があり、嫌な感じにならない程度に不気味さと不穏さも漂わせている。最後の引きのテンポ感、絵力えぢから、臨場感も素晴らしい。全体的な完成度がとても高く、初日零時投稿勢のなかでも特に印象的でした。

グッドデイズ、マイシスター。

バーチャルアイドルを素材にしたSF……と思いきや、人怖系という意外性! 全体を通じたテンポがよく、グイグイと力強く展開していく。途中に挟まるバーチャルアイドルとしてのセリフがとてもそれっぽいんですが、シリアスな展開のなかにこれを放りこまれると、逆に恐怖を誘う効果がある……。

墳墓酒、悪霊

全体的な雰囲気が徹底して冷たく、まさしく地下墳墓感がありとてもよいなと思いました。そして何よりも主人公がドクズなのが素晴らしい。これは D4C(Dirty Deeds Done Dirt Cheap) ……いともたやすく行われるえげつない行為ッ! この作品、かなり好きです。

呪孵し

石や宝石を嚥下して呪いをかけるという設定がおもしろいなと感じました。そしてやってることはかなり深刻なわけですが、主人公の「わかってますぅ」というノリがかわいらしく、そのギャップが印象的です。文のテンポ感もよく、スッと読める点も好感を持ちました。

庭付きの古い家

「密かに誰にも被害を与えない系の非道徳行為を楽しんでいた主人公が災厄に見舞われる」的な類型の物語なわけですが、「あーあ、やっちゃった……」感が強く、すごく印象に残りました。主人公がしでかしてしまったことにまったく気づいてない点もポイント高いですね。すなおに続きが気になってしまう……!

遺物混入

これは……なんだか夢に出てきそう。「ぺろぺろしたんか」ってなんなんですか! そんなのいきなり聞かれても困っちゃうでしょ! 「ぺろぺろ」がなんなのか気になって仕方がないでしょ! 絶妙に人の生理的嫌悪感ギリギリのところをついてきて、とにかく印象を残ってしまう作品でした……!

俺と老博士のDead or alive

なんだかよくわからないが、なんだかよくわからないにもかかわらずおもしろいと感じさせる不思議な味わいがある! とにかくテンポ感がよいんですよね。博士と木下(川上)君の掛け合いも楽しい。よきバディです。

久子

『白川男爵から深夜に呼びだされ、何やら嫌な予感がした』という出だしの一行からすでに雰囲気あるなと感じました。作品のカテゴリーとしてはスリラーになると思うけど、全体的に漂うミステリーの佇まいと、不穏な空気感がとてもよいです……! あと作品そのものとは関係ないものの、ヘッダー画像はおそらく作者のいしづかさんご自身の作だと思われ、とても雰囲気があって印象的でした。

整地巡礼

主人公が訪れる先々で何かが起きている……! というかタイトルで「整地」とあるように、行く先々がぺんぺん草になっていくの嫌すぎる……。少女との会話がワンクッション挟まることで、事態の不気味さ、嫌さが引き立つという構成が巧み。どう考えても主人公自身が災厄なんだけど、自覚がないところもまた不気味さの一因になっている……!

【今回は以上です】

【おまけ】しゅげんじゃ氏の応募作

あ、ライナーノーツも書きました。

なんとなくですが、ピックアップはあと二回ほど(つまり第四回まで)続きそうな気がしています。


きっと励みになります。