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真庭を熱狂させた映画祭をレポート!「ニューガーデン映画祭2024」

今年は全国的に開花が遅れたようですが、ノーザンオカヤマもそろそろ桜の季節です。今回は、3月に真庭市を熱狂させた「ニューガーデン映画祭2024」をレポート!衆楽舎から私Haruもスタッフとしてお手伝いに行き、間近で見た感動をお届けします♪


市民有志の熱い思いで生まれた映画祭

コンセプトは「映画が触媒となり新しい土壌を生む」

真庭市は、ノーザンオカヤマの中央部に位置する人口44,000人ほどの小さな町。鳥取との県境は「蒜山(ひるぜん)三座」をはじめ標高1,000m級の山々があり、また、岡山県三大河川の一つ、旭川の源流地域であることから、豊かな山と川に囲まれたところです。

そんな場所でどうやって映画祭が誕生したのでしょう?その答えは、2022年に久世の商店街に生まれたミニシアター「ビクトリィシアター」にヒントがあります。

古民家を活用したミニシアター

人口減少の影響もあって映画館がなくなってしまった真庭市に、古民家を活用したミニシアターを作ろうと呼びかけたのは、真庭で映画制作を続けている山﨑樹一郎監督。その時の取材で、「こどもが映画を楽しみに来られる劇場を作りたい。とはいえ商業的な娯楽ではなく、見られる機会の少ないが世界的に評価の高いものや、知性を育めるような優秀な作品を上映したい。」と語っていたことを思い出します。

そして、その思いをさらに大きく羽ばたかせて「映画祭」へと発展したのは、シアターオープンから1年後。「映画が触媒となり新しい土壌を育む」をコンセプトに「ニューガーデンシネマ映画祭」が2023年3月に誕生しました。

実行委員長は、「ビクトリィシアター」支配人でもある柴田祥子さん。山﨑樹一郎監督が上映作品をコーディネイト、そして、久世といえばこの人!という河野文雄さんが町の魅力を伝える仕掛け作りをする、という素晴らしいトライアングルを中心に、市民有志が実行委員会を立ち上げ運営する市民主体の映画祭が誕生したのです。なんという行動力とスピード感!

山﨑監督と柴田実行委員長

2回目となった2024年は、3月8日から10日の3日間に渡り、映画監督や批評家などを招聘して4つのセクションで特集上映が行われました。

*「ビクトリィシアター」誕生の際に衆楽舎noteで取材した記事はこちら↓
   山﨑監督、柴田さん、河野さんの熱い思いをぜひお読みください!

2年目はさらに充実したプログラムに!

「映画祭」好きの私Haruは、この映画祭がまた開催されると聞き、いてもたってもいられず、運営のお手伝いをさせてもらいました。(実は2月に下見にも!笑)

まだ雪の舞う山間の景色と対照的に、熱気ムンムンだった3日間。ここからは、中から見た感動を交えてレポートしたいと思います。

まず、オープニングを飾ったのは、映画祭特別関連企画「山の中の劇場」。オープニングセレモニーの後、300年前に真庭であった山中一揆を題材に山﨑監督が2014年に制作した時代劇『新しき民』が上映され、その主演を務めた鳥取県在住の俳優、中垣直久さんによる朗読劇「狼森と笊森、盗森」(宮沢賢治)が続きました。

朗読劇では一気に森の世界へ誘われ、山に囲まれた真庭だからこそ沁み入る神秘的な時間が流れました。

オープニングセレモニー
朗読劇の後の中垣直久さんと山﨑監督のトーク

2日目からは久世と勝山の2会場での上映が目白押しです。「オッティンガー、真庭に現る!」セクションでは、いま世界的に再評価されている、ニュー・ジャーマン・シネマの女性監督ウルリケ・オッティンガーの西ドイツ時代の作品3本が上映されました。

昨年渋谷でも熱く盛り上がったオッティンガーを真庭で観られるなんて!真庭をザワつかせたかったという山﨑監督の思い通り、溢れるほど満席の回もあり熱気が漂っていました。各回の上映後にはドイツ映画評論家の渋谷哲也さんのトーク付きという贅沢さ。ベルリンの壁があった時代の西ドイツの情勢や、オッティンガーの自由な作風についての解説に触れ、観客からも活発な質問が発せられました。

優しい語り口調で深い解説をしてくれた渋谷哲也さん

パースペクティブ・ナウ」は、 注⽬の若⼿映画作家にフォーカスしたセクション。『絶唱浪曲ストーリー』の川上アチカ監督、『すべての夜を思いだす』の清原惟監督が真庭入りし、アフタートークで作品への思いを語ってくれました。

全日程参加の川上アチカ監督
公開されたばかりの新作を引っ提げて真庭入りした清原惟監督

お二人とも真庭は初めてとのことでしたが、観客との触れ合いはもちろん、街の景色や音にも心を動かされたよう。川上監督の「解像度が上がる」という言葉がとても印象的でした。

お二人の作品はまだ各所で上映されていますので、見逃した方はぜひチェックしてくださいね!

こどもと映画の週末」セクションでは、こどもも⼤⼈も楽しめる作品として、『ユキとニナ』(諏訪敦彦監督、イポリット・ジラルド監督)、『古の王子と3つの花』(仏、ミッシェル・オスロ監督)、『父を探して』(ブラジル、アレ・アブレウ監督)が上映。世界の良作を映画館で鑑賞できる貴重な機会となりました。

そしてそして、映画祭の最後を飾ったのは「こども映画祭」 。2023 年冬に真庭で開催した「こども映画教室プチ」のお披露目上映などがあり、講師を務めた諏訪敦彦監督とこどもたちとのトークも開催されました。

こども映画教室とは、国内外で活躍する映画の専門家が、こどもたちと映画制作のワークショップなどをしている活動です。こどもたちの瑞々しい視点や感覚に気づきをもらいつつ、未来へ映画文化を繋ぐ土壌が作られているのを感じました。近い将来、真庭から映像クリエイターが続々と生まれていくかもしれません。

諏訪敦彦監督と真庭のこどもたち

町と交流できる場も充実!

会期中は、地域の飲食店などと連携しながら、「食」を通して⼈々が気軽に集い交流できる場づくりも充実。2日目の夜には町飲みイベント「シネマ de のみ~の」が、3日目には「シネマルシェ」が開催され、映画祭に来た人には「町」を知ってもらう仕掛けが、町の人には「映画」を知ってもらう仕掛けがあることで、それぞれが自由に交差する姿があちこちで見られました。

「シネマ de のみ~の」は大賑わい
実行委員も一緒に飲んでます笑
こんな秘密の場所も!

ゲストの監督・映画関係者、遠方から駆けつけた映画ファン、地元の飲食店の方々、映画祭を支えるスタッフ、市民の皆さんがゆるりと混じり合う光景は何とも心地よく、微笑ましかったです。

のみ〜の最終地点となった「ラウンジ500」はまさにカオス。監督同士の交流もあり、時には熱い議論を交わし、一方では満点の星空を眺め、町散歩を楽しんだり…。人と人が自然に混ざり合い、何か新しいものが生まれるような、濃縮かつ濃厚な時間が紡がれているのを目撃し、何度も目頭が熱くなりました。

のみ〜の参加店「ラウンジ500」に大集合

真庭市立中央図書館前に地元の人気店が多数出店した「シネマルシェ」は、あっという間に売り切れ続出。次回はもっと早い時間にマルシェに行かねばと誓いました。

シネマルシェ

ニューガーデン映画祭のススメ

自分たちの祭として楽しむ

私が「映画祭」を好きな理由は、監督や出演者のトークなどがあり、作り手の思いを知ったり解説を聞いたりすることで深みを与えてくれること。そして、映画好きがリアルに集まって互いに感想を言い合うことができること。真庭のニューガーデン映画祭は、それらを満たすだけでなく、町の人が積極的に関わって「自分たちの祭」にしているところが大きな魅力だと思います。

オープニングパーティには市長も

映画祭や「のみ〜の」のポスターがあちこちに貼られ、「もうすぐ映画祭だからよろしくね!」と声を掛け合っているのも、地元の方々が一緒になって映画祭を楽しんでいるのも素敵でした。日本各地でいろんなイベントが開催される中、外から来る人ばかりが楽しんで地元の人は冷めているというケースもありますが、ここでは市民の手づくり映画祭ならではの温かさとおもてなしを随所に感じました。

ロケーションの魅力

ビクトリィシアターは言わずもがな、もう一つの会場となった真庭市立中央図書館も素敵な場所なんです。中国勝山駅から、暖簾の町として知られる勝山町並み保存地区を通って向かう道中も楽しい時間。地元木材を活用した建物にはシアターがあり、真庭が注目を集めている森林・林業・バイオマスの図書なども充実しています。1Fのオープンスペースには地元のこどもたちがいつもいて(この時期はコタツがありました!)、市民に開かれ、愛されている場所なのだと感じました。図書館にシアターがあるのは大切ですね!

勝山にある真庭私立中央図書館
映画祭中はポスターでジャック

勝山の図書館と久世のビクトリィシアターとの往復は、強制的に真庭の自然を感じる道のりになっていて、旭川沿いを車で移動するのも、ローカル列車の姫新線にのんびり乗るのも乙な物です。市外から映画祭に来た人たちが、地元の店や人との出会いを素直に喜んでいて、「映画祭×ノーザンオカヤマ旅」というスタイルも面白いと感じました。

シアター裏は旭川の河川敷
姫新線の久世駅はローカル線好きにおすすめ

私も移動の合間に、久世の商店街で焼き芋を買って休憩したり。町の人との触れ合いが映画以上に心に残っています🎵

焼き芋美味しかった!

ちなみに、「真庭市立中央図書館」や「ラウンジ500」は山﨑監督の『やまぶき』にも主要なシーンで登場します。他にもノーザンオカヤマのあちこちが出てきますので、山﨑映画の聖地巡礼としてもこのエリアを楽しむことができますよ。

映画『やまぶき』の図書館シーンのロケ地

『やまぶき』は近々津山市での上映もありそうです。まだ観ていない方は、その機会をお見逃しなく!

未来への息吹を感じる映画祭

その他にもこの映画祭で感動したのは、若手スタッフが生き生きと輝いていたこと。映画好きや映像作家を目指す若者たちが市外からも集い、地元の人に勝るとも劣らず熱量を持って映画祭を支えていました。「こども映画祭」セクションとも連なり、岡山の映画文化がさらに熱くなり、若手の才能が開花していくのだろうな、と未来への息吹を感じました。

諏訪敦彦監督を囲む若手スタッフさん

また、会期中に毎日配信され、映画祭を盛り上げたDAILY  NEWSにもご注目を。東京から移住して地域おこし協力隊として活躍する酒井さんが連日取材し、翌日刷り上がる紙面が楽しみでした!

毎日発行されたDAILY NEWS

メディアでも話題に

地元メディアにも大きく取り上げられたニューガーデン映画祭。注目度が上がってきています。

地元メディアの取材を受ける川上アチカ監督

東京から観客として駆けつけた、各国の映画祭を知り尽くしているであろう元東京国際映画祭ディレクターの矢田部吉彦さんも「映画祭の根源的な使命と魅力を噛みしめた」と朝日新聞の連載コラムで熱く語ってくれました。

私は今回が初参加でしたが、来場者としても、スタッフとしても、これからもずっと続いて欲しい大好きな映画祭となりました。今後の展開が楽しみですね。皆さんもぜひ一緒に盛り上げましょう!

映画祭まで待たずとも、ビクトリィシアターでの上映やイベントにどうぞ訪れてみてください。

昨年夏に開催されたイベントレポートもご参考に↓


ノーザンオカヤマ セレクション

最後は、衆楽舎おなじみ音楽コーナー。映画祭にちなんで、私Haruがセレクトしました。

1本の映画との出会いが人生を豊かにしてくれることってありますよね。それには「町の映画館」が大切な役割を果たすと思います。そんな感動を思い出させてくれる名作です。ビバ!映画館!

エンニオ・モリコーネ『ニュー・シネマ・パラダイスのテーマ』



衆楽舎とは

ノーザンオカヤマ(岡山県の県北部)の魅力を独自の視点で発掘・発信しています。名称は、岡山県北の中心都市である津山市の大名庭園、「衆楽園(しゅうらくえん)」を由来としつつも、敢えて「シュウガク」と読むことで、大衆音楽のように「沢山の人の楽しみ」という思いを込めました。

岡山県在住・出身の音楽好き、グルメ好き、旅好き、洋服好き、インテリア好きの仲間が集結し、それぞれ本業を持ちながら、エリアの文化的な魅力をアップさせること、そしてその魅力を紹介、応援することを志しています。津山市の田町文化STOREというカフェ&ギャラリーを拠点に、文化交流のハブとなるイベントなどの場作り、リノベーションによる新しい拠点の開発、また、住まい作りによる移住者支援など、様々なことにチャレンジしています。

今年もやります!日比谷でのポップアップをお楽しみに

今年もGWに、日比谷でのポップアップストア「ノーザンオカヤマ ブルース」が帰ってきます!詳細は衆楽舎インスタで!

田町文化ストアではイベント盛りだくさん!

この夏もいろいろな企画が盛りだくさん。DJ、夜カフェ、ハーブティスタンドなどなど。ビストロカカシさんの軒下アペロは毎月第三日曜!
営業日時やイベント内容はインスタをチェックしてくださいね。


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衆楽舎のPR担当、Haruでした。



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