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水崎秋詩集「  」

24
詩だけをまとめました。 大切な言葉が詰まっています。
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記事一覧

詩「ガーデン」

詩「ガーデン」

さらさらなびく愛の跡
ひなたにそよぐ夢の島
秒針だけが走り去り
不可逆の今が残された

隣り合わせのハイドとシーク
ほらほらごらん「まぁだだよ」

回転木馬とブリキの人形
錆びた指先を握るだけ
必ず戻ると言ったきり
逆さまの城で待たされた

ガーデンハウスのパズルのピース
ほらほら逃げろ「まぁだだよ」

噴水からは静寂だけ
おもちゃ箱とノスタルジー
あの日の温もりは戻らない
あの日の苛立ちは戻らな

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詩「ナイフ」

詩「ナイフ」

ナイフと色褪せない天球儀
砂をふりかけた群青を横切る金属の彗星

渓流に立つ悍ましい物の怪
穏やかな足元だけを見て静かに後ずさる

朝焼けに混在するモノクロ
美しいを濁すのはいつだって夜明けの鐘

シンクロとは非科学的終末
通じ合った時こそ終わりを予感する悪癖

終幕を知らされないピエロ
泣きじゃくる少年には張りついた笑顔を

迷路と故郷に遺された名前
戻れないのならここで産声をあげようか

逆手

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詩「虚構潜水」

詩「虚構潜水」

夢に見た姿になってみた
中身を詰めたら出来上がり
伽藍堂にも劣る醜態
前を向いても向いただけ

火花を起こしても火を起こせない
くしゃくしゃピースは湿気たまま

困難苦難ゆらりと飛び越え
降り立つ先は処刑台

掃いて捨てるよ現在を
土台がなければ立てはしない
砂上の楼閣と笑われて
踏みつけてしまったこれまでを

走り出しても走り続けられない
ごちゃごちゃ文句は浮いたまま

艱難辛苦さらりと飛び越え

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詩「夢見鳥」

詩「夢見鳥」

誰かの心を動かしたいと
名乗りを上げた僕だよな
幼い心ってなんだっけ
幼いことを許す自分だよな

感情たちの群れの中で両足で立ってみた
うずくまっていたら見えない景色を確かめたくて

いつかはなれるのかな
大きな奔流の真ん中に
ここでいいんだと座り込んだ
プライドなんか明日にはガラクタなんだ

いつかは必要とされたいと
あたりを見回した僕だよな
強いと思われたかったっけ
関係ないって武装したよな

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詩「観測者」

詩「観測者」

涙を流す機能を持った
機械仕掛けの観測者

熱と光と細めた双眸
答えは最後にとっておく

戦い続けた星だけが
宿す閃きがあるんだろう

交わることはないんだよ
ここに心を置いていこう
置いた心が朽ちようと
確かな事実だけを携えよう

泥の中を歩いていった
脈動している観測者

風と終わりと静まる遠点
じっと夜明けを待っている

歌い続けた声だけが
届く地平があるんだろう

たくさん抱えてきたんだよ

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詩「狂犬」

貴女が好きですと
言ったことは一度もない

貴女といたいですと
言ったことは一度もない

それでも僕は吠えていた
貴女が好きだと吠えていた

そばにいられないと知っていた
いてはならないと知っていた

暗い底から這い出した
白い陽を浴びる貴女には
私は必要ないのです

未来が光に満ちている
自由を手にした貴女には
私は必要ないのです

私は貴女を忘れません
貴女が私を忘れても

雑踏に消える私の背

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詩「毒を食む」

毒を食む
右手に林檎、左手に空洞
舐めとった甘毒に貴女は小さく頷いた

貴女の黒髪は白く乾いてしまった
貴女の柔肌は黒く褪せてしまった
貴女の生命は儚く凪いでしまった

墓を立てよう
見晴らしなんてどうでもいい
墓を立てよう
空の高さなんてどうでもいい

そんな貴女の墓を立てよう
皮肉に満ちた墓を立てよう

エルサレム
聖地は遠く、光は見えない
飽き飽きする孤独に僕は小さく身悶えた

墓を立てよう

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詩「天寿全う主義」

長生きしたい
長生きしたい
あれもしたいこれもしたい
あれが欲しいこれも欲しい

したいことは絶え間なく
生きたい意志は淀みなく
醜く映った瞳にも
仲良くしようと微笑んだ

長生きしたい
長生きしたい
あれもしたいこれもしたい
あれが欲しいこれも欲しい

後悔先に立たずと誰かが言った
思い立ったら吉日と僕は叫んだ
意欲物欲強欲よくよく
自分勝手は才能だ

長生きしたい
長生きしたい

まだまだ生き

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詩「ひでじい」

詩「ひでじい」

「ひでじい」
-私-
思えば長く歩いてきました

自分の足では歩けない
遠い記憶の向こう側
父の二の腕、母の呼ぶ声
祖父母の笑顔、握りしめたお菓子

小さな歩幅は遠くへ行けず
数歩歩けば振り向いた
迷子の恐怖、水際の畏怖
汗だくのTシャツ、冷えたこめかみ

自分の足で踏みしめて
歩いたつもりの帰り道
大きな身体、小さな心
詰め込まれる知識、空洞の信念

思春期の衝動を秘めて
ペダルを踏んだ反抗期

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詩「持たざる者のマーチ」

透明人間この指止まれ
萎びたプライド踏みつけて
君の手のひらの上で踊りましょう
終焉へ向かうハーモニー

死んだまなこを吊り上げて
15の私へ希望にあふれた未来を捧ぐ

小さな怒りを覚えておけよ
薪の上に臥して待つ
何もなくても生きていくよ
肝を嘗めても前に立つ

生命活動このまま続け
腐れた昨日を押し退けて
君の足元の花に唄いましょう
復讐へ向かうストーリー

掠れたさけびを張り上げて
15の私

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詩「位相」

車窓に映るコマ送り
実感はハリボテ、生活感は幻想
知覚したピクセルは変わらず
忘れ去ってもそこにある
勝手に朽ちて滅びゆく

平穏はこころで描く
幸福は知識と経験で定義する
足りない頭で散々こねくり回したら
結局胸のぬくもりに頼るんだ

深海のしじまに落とし込む
愛と勇気と暴れる脳
こがね色の信念は
あぶくを吹いて黒くなる
次第に落ちて染まりゆく

ペン先は尖ろうとも
精神は角を落としていく
自我

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詩「ゾンビ」

遠い空、暗闇の中
包囲ほら、羨みのまま

目元から腐るわ視界が臭う
風が痛いと今さら知る

ばいばい秩序と吠え面人生
いつまで殺せばたどり着く

おーいまだ、曇天の下
脳にまた、混沌の血が

足元狂うわ地面が揺れる
かかとが重いと悲鳴を聞く

武勇を語れ負け犬人生
いつまで殺せばたどり着く

ばいばい秩序と泣き虫人生
うずくまったまま迷い立つ

死にながらにして生きていけ

詩「モチベ」

敬虔なるほにゃらら
聞き飽きたらポイだわ
ペイできなきゃゲームセット
雨降ったら家おろ

こうなったらやったる
ごめんやっぱ最悪
理性は目まぐるしく
答えなきあれこれ

聡明なるほにゃらら
アホになってパーだわ
おい言わなきゃエイムデッド
ミスったわ黙っとこ

こうなったらやったる
ごめんやっぱマジ無理
姿勢は腰苦しく
思考なきあれこれ

酔狂なるほにゃらら
はしゃいだらバンだわ
今日流したエンド

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詩「美学」

始まりは小さな欲求
醜いと思った 馬鹿げていると思った
それでも抑えられないのはこの胸の熱故よ

始まりは曖昧な志
くだらないと思った 薄っぺらいと思った
それでも冷めないのは食いしばった痛み故よ

何ができる?何もできない
何がしたい?全部したい
その一歩が尊く在るために
奮わせるこの理念を

後天的な精神の煌めきよ
過去を抜き去り輝いてみせよ
前を向いたあの日の私を
振り返って指差してみせよ

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