研究員SSS

合気道家として稽古の中から気づいた教訓を記します

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合気道家として稽古の中から気づいた教訓を記します

マガジン

  • 武道から学ぶ現代社会を生き抜く術

    武道の有段者(合気道弍段)である筆者が稽古や過去の達人の書物を通じて学んだ教訓をまとめています。

  • 経済動向•経営を考える

  • 古典マラソン

    古典作品(文学、哲学、思想書)を読み、キーポイントと感想をまとめています。

最近の記事

中世ヨーロッパの武術

私は合気道を長らく嗜んでいるが、最近以下の本に出会った。中世ヨーロッパの武術書を絵と共に現代語訳している良書である。 雑感であるが、以下のような気づきがあった。 ①中世ヨーロッパの武術は、現代まで継承されているものではない。戦争が続く地域かつ兵器技術の変化が激しく、武術として洗練されずまた文化として残っていかなかった ②ただ、レイピアや徒手格闘はフェンシング、レスリングとしてスポーツになっている。あくまでもスポーツとして残り、ボクシングなどは興行、ショーとして発展していっ

    • バイオメカニクスと合気道

      バイオメカニクスという学問領域を知っているだろうか。「生体力学」と訳され、物理学や解剖学等の知見をもとに、人体の動きを複合的に捉える学問である。私は専門家ではないが、合気道を考えるきっかけになるかもと以下の本を読んでみた。 一万円弱する教科書だが、体系的かつ基礎的なバイオメカニクスを学ぶという意味で非常に良い本である。 この本を読んで、合気道の稽古のアプローチの一つとして、技の理合を物理学的に理解することも大切ではないかと考えている。理合を科学的に捉えるという発想自体は以下

      • アニメ業界の今後

        昨日の日経新聞でアニメ業界について触れられていた。 日本のアニメ市場は、市場規模が拡大しており国内外の合計で約3兆円に到達した。経団連としては今後日本のコンテンツサービスを積極的に海外に打ち出し、世界市場への打ち出すことを想定しているという。 ただし、現在の日本のアニメ制作会社の経営は厳しく、少なくない割合が赤字である。クリエイターの待遇も十分とは言えず、フリーランスという形態であることも相まって、平均年収未満の待遇で働く人も多い。 アカデミー賞で注目 日本アニメ、10の

        • 型稽古の重要性

          先日、剣術の達人として知られる黒田鉄山先生がご逝去された。私は合気道家だが、先生の書籍からたくさんの示唆を頂いた。 複数の書籍があるが、私が拝読したのは「気剣体一致の武術的身体を創る―ふたつとない姿態創造への道標」である。 この本では、剣術の型を通じて、武術的な体、姿勢を作っていくという考え方が示されている。つまり型稽古の重要性と意義を実体験に基づいて示していると言える。先生の継承される流派では、剣術、居合、柔術を併修するが、剣術、居合の型稽古が柔術に、柔術が剣に生きるとい

        中世ヨーロッパの武術

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        • 武道から学ぶ現代社会を生き抜く術
          7本
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          1本
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          3本

        記事

          ChatGPTとの武道に対する議論

          ChatGPTと武道に対してやり取りを重ね、その結果をまとめたものが以下。尖った内容ではないが、論点を整理することはできたのではないか。 —- あなた(筆者)の提案では、武道を競技と捉えるのではなく、型を通じて自己を見つめ直し、人格形成を図ることが有益だと考えていました。私(GPT)は、武道を競技として位置づけることに疑問を感じる人もいることを指摘しました。その上で、以下の点について議論がありました。 1. 武道の本質と競技: 武道の本質は生命のやり取りや実践的な技術に

          ChatGPTとの武道に対する議論

          自然体とは

          1.自然体とは何か「自然体」よく聞く言葉だが、その意味を深く理解している人は少ないのではないだろうか。 インターネットで検索すると、以下の定義となる。つまり、自然体とは武道における姿勢にまつわる用語なのである。 私は少し武道を嗜んでいるが、武道において自然体は、体に力みがなく、そして体が捻れていない姿勢を指すことが多い。 自然体は、力が抜けている状態であり、日常生活で何気なく過ごしている姿勢に近いと考えて大きな問題はない。 2.自然体がなぜ重要か武道の一つとして合気道を

          合気道家という生き物

           プレゼン資料や議事録ばかりを仕事で書いていると、無性に長い文章を書きたくなることがある。 特段書きたいことがあるわけではないのだが、気の向くままに文字を書き連ねたいと思う。  私は合気道という武道を6年ほど嗜んでいる。合気道には試合がない。試合で相手に勝つことを目的に稽古するのでなく、自分の技と心身を鍛えるために日々修行に励む。基本技と呼ばれる技がいくつかあるが、合気道家は稽古初日からキャリア30年の有段者になっても同じ技を稽古する。動きの形を覚え、その動きの意味(理合とい

          合気道家という生き物

          暇と退屈の倫理学

          まとめ 人間は動物と同じようにそれぞれの環世界を作り出すことができる。そして動物以上に卓越した環世界移動能力を有し、新しい世界観を獲得することができる。しかし、世界観の構築には新しい習慣の創造が必要である。習慣とは反復であり、一定の安定性の中であたらしい世界が作り出させれる。 暇と退屈においては、2×2のマトリクスで表現できる。暇はないが退屈している状態。これが人間的な生であり、ときおり生じる退屈を気晴らしで乗り越えていく。この安定と均衡の中で人間は生きている。なんとなく退

          暇と退屈の倫理学

          「ビジネスの未来」雑感

          本の紹介山口周氏の作品。 現状認識→あるべき社会像の提示→やるべきことという綺麗な論旨展開で読んでて気持ち良い。ファクトとフレームワークがうまく使われていて、頭が整理されていく感覚。 評価:☆☆☆☆☆ ざっくりまとめ経済成長前提社会から低成長社会へと向かっている。そのような社会変化を正しく捉えて、システム、価値観のアップデートが必要である。高度経済成長時代は、今我慢すればさきで良いことがあると言う価値観。そして実際に社会はそのように動いた。頑張って働けば、給料はどんどん上が

          「ビジネスの未来」雑感

          「BCG次の10年で勝つ経営」雑感まとめ

          本の紹介BCG発行の経営本。最近の流行りのワードをうまく全体の流れの中でまとめていると思う。論旨としては、不確実性が高まる社会になる→社会価値の追求、データのハンドリング、組織・人材マネジメントを新時代型に変えていくべきという感じ(だいぶ荒いまとめですが)。ただやや総論的な感じも受けており、そりゃそうだよな、綺麗に整理されているなという感覚で終わる。ハッとされるような示唆はなし。 評価:☆☆☆ 簡単なまとめ次の10年におけるポイントを考えると、テクノロジーの指数関数的な発展

          「BCG次の10年で勝つ経営」雑感まとめ

          『ガリバー旅行記』スウィフト 読書リストvol.2

          青空文庫で無料で読めたので、ざっと一読。 童話として有名な作品だが、原作は18世紀に書かれた社会風刺本。 作品は4つのパートで構成されている。 ・小人の国、大人の国、ラピュタの国、(日本)、馬の国 主人公ガリバーがそれぞれの国に漂流して、生活するというお話。一般的に有名なのは一つ目の小人の国。ただ、作品としてはこの小人の国は、物語のフックでしかなく、国ごとの違いが相対化されていくところが作品の醍醐味。 小人の国で、巨人として比較的自由に生活したガリバーだが、次の大人の国

          『ガリバー旅行記』スウィフト 読書リストvol.2

          『国境の南、太陽の西』村上春樹 読書リストvol.1

          以前も書いたもしれないが、私は村上主義者、世間で言われるところのハルキストである。村上春樹の作品はあらかた読んでいるし、賛否が分かれる作家という事は承知しているが、私は極めて好意的に彼の作品を楽しんでいる。 では村上作品の何が良いのか。あまり周囲に村上春樹を好きな人がいないため、私は絶対的な主観になるが、1.当たり前の日常を美しく描く文体、2.孤独主義な主人公の心理描写、この2つに心地よさを覚える。正直私にとっては、ストーリーや細かい表現のメタファーではなく上記2点が滑らか

          『国境の南、太陽の西』村上春樹 読書リストvol.1

          「グリーンブック」名作映画vol.1

          ○あらすじ 1950年代のアメリカ。イタリア系移民のニックは、黒人のピアニスト、ドクの運転手としてクリスマスまでの8週間、ツアーに同伴することになる。ツアーの行き先は、アメリカ中南部。時代は、黒人差別が根強く残る20世紀半ば。ピアニストとして成功を収めつつも、ドクに容赦のない差別が向けられる。ニック自身も当初は、黒人に偏見を持っていたが、運転手として仕事をしていく中で次第に変化していく。 ○ポイント 実話を元にした話であり、20世紀半ばの人種差別の実態を感じる作品。差別を差

          「グリーンブック」名作映画vol.1

          【書評】カラマーゾフの兄弟/ドストエフスキー

          定期的に良書を読み、その学びを共有するシリーズ。今回は、有名なドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟。 本の背景この作品は19世紀末、ロシア帝国末期にロシアの文豪ドストエフスキーによって執筆された本。『罪と罰』に並ぶ最高傑作とされ、『白痴』、『悪霊』、『未成年』と合わせて五大作品として有名。長編小説で今回読んだ、光文社古典新訳文庫で、5巻にもおよぶ作品。取り扱われているテーマは、キリスト教信仰へのアンチテーゼ、経済格差、恋愛、貧困、正義など幅広く、読み手によって感じるメッセー

          【書評】カラマーゾフの兄弟/ドストエフスキー

          【書評】ツルツル世界とザラザラ世界

          概要元官僚、政策シンクタンク代表の著者が描いた現代社会の病巣とあたらしい世界の形。 グローバル化、経済成長至上主義の現在社会を摩擦のない「ツルツル社会」とし、地球環境の限界、人間の身体性との乖離など限界を迎えているとする。そして、相互扶助などの地域コミュニティー、機械に頼らない非効率的な生活に代表される「ザラザラ社会」。そういう二つの社会を両立させる社会の提案。 学び1.画一化社会の気持ち悪さ グローバル化、経済成長は正しいもの、目覚ますべきものとされている。しかし、

          【書評】ツルツル世界とザラザラ世界

          『人生論ノート』 成功と幸福は別物

          三木清『人生論ノート』1949年 西田幾太郎等の影響を受け、戦前に活躍した哲学者。反体制的な発言も多く、治安維持法違反で投獄され、獄中死した人物。本作は死後発表され、ベストセラーになったもの。人間中心主義(ヒューマニズム)の思想が詰まっており、幸福について、怒りについてなどの人生における哲学的テーマで構成されている。 <個人的キーポイント> ・幸福と成功は違う。幸福はアリストテレス曰く、観照的生活から生まれ、中庸であること。成功は、社会の価値基準でいう量が多いこと。月な

          『人生論ノート』 成功と幸福は別物