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【書評】ツルツル世界とザラザラ世界


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概要

元官僚、政策シンクタンク代表の著者が描いた現代社会の病巣とあたらしい世界の形。

グローバル化、経済成長至上主義の現在社会を摩擦のない「ツルツル社会」とし、地球環境の限界、人間の身体性との乖離など限界を迎えているとする。そして、相互扶助などの地域コミュニティー、機械に頼らない非効率的な生活に代表される「ザラザラ社会」。そういう二つの社会を両立させる社会の提案。

学び

1.画一化社会の気持ち悪さ
グローバル化、経済成長は正しいもの、目覚ますべきものとされている。しかし、グローバル化が信奉されるようになったのはここ数十年の話。人間の要望を元に拡大再生産を続けるシステムだが、国家も世界(地球環境)も無限に拡大できるわけではない。地球環境は、様々な環境問題にみられる、「外なる限界」を迎えている。さらに福祉国家化し、ナショナルミニマムを満たし続ける国家は、無限に拡大している財政赤字を垂れ流し続けている。さらに、効率化を進める社会は、構成員に強い画一化を求め、枠外の烙印を押されてしまう人を生み出し続ける。
そういう社会の中で、「爆速で進む周りに合わせなくていいんじゃないか。ゆったりとした世界もあってもいいじゃないか」という提言は響く人が多いだろう。私自身も両親が離婚したり、兄弟が不登校になった経験があり、この社会は一度レールから外れた人にとことん厳しい社会だなと感じた。円満な家庭、いい大学、いい会社というモデルケースの生き方があり、そこからはみでた人は落伍者とされる。競争に疲れたら一度休める、そういう空間と時間が与えられる社会が理想だ。

2.日常を極める、スローライフ
これは読んでいてすごいフィットした部分だが、

「禅寺の修行は日々の家事、雑事をきちんとこなすことが日課であり、修行であり、一年・一生を生きること」

これは最近強く感じることで、毎日をきっちり美しく生きることは本当に大変で難しい。自炊、掃除、洗濯を行いながら、仕事(やるべきこと)、自己研鑽、趣味をきっちりと行う。リモートワーク の環境の中、少し気を抜くと、1日はあっという間に終わる。1日1日を噛みしめながら生活する。簡単なようでこれが難しい。

いろいろな哲学書や文学を読んで、私が今強く感じるのは、「日常を極めた先に真理や幸せがある」ということ。文面にすると少し違和感を感じるが、言いたいことは自分の生活を確実に自分でコントロールできるようになることが先決ということ。なんのために生きている?私の使命は?と誰でも一度は悩むだろう。そんな時はまず自分の生活を見直そう。それを整えた先に答えがあるかもしれない。自戒も込めての一言!


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