マガジンのカバー画像

小説集

33
運営しているクリエイター

#ブラック企業

小説 ケア・ドリフト⑬

小説 ケア・ドリフト⑬

 部屋に取り残された丹野は呆然としていた。「距離を置きたい」と言われたのも初めてなら、日頃から大人しい結衣が激昂した姿を見たのも初めてだった。

「貯金しなければならない、その為には・・・」

 そう考えると頭痛がしてきた。さっきまで、吸いたいと思っていたタバコも吸ってしまうと、頭痛に吐き気が加わりそうな気がして止めた。もう寝てしまおう。そう思った時、丹野が見つめていたのは角の折れ曲がった岡田の名

もっとみる
小説 ケア・ドリフト⑨

小説 ケア・ドリフト⑨

「どういうことですか?ちゃんと説明してください」
 丹野や若菜など施設に勤める職員たちは施設長に詰め寄っていた。その先頭に立っていたのは、国本看護主任と東野介護主任である。
「だから、落ち着いてください。ちゃんと説明しますから」
「だったら、詳しく説明してくださいよ。全員の給料を二割削減するってどういうことですか!」
 丹野はこのところ頭痛がひどく、半分程度の理解で話を聞いていた。結衣のお見合いの

もっとみる