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【徹底解説】各国が開発する隠れた次世代通信「量子暗号通信」とは?


今日は量子暗号通信に取り組む企業のニュースについて解説してみます!

前回同様、かなり聞きなれない言葉が並びますが、出来るだけかみ砕いて解説していきます!

解説するニュース本文はこちら👇


量子とは?

まずは、「量子」という言葉を見ていきましょう。

文部科学省の記事にわかりやすいものがあったので載せておきます。👇

量子とは、物質を構成する原子や電子、またそれを構成する陽子や中性子といった極めて小さい物質です。この世界では、身の回りにある物理法則は通用せず、「量子力学」というとても不思議な法則に従っています。

量子には、見ていないところでは波としての性質を持ち、観測すると粒子としての性質になるという特徴があります。

これは二重スリット実験でも有名ですが、「シュレーディンガーの猫」という有名なパラドックスが不思議さを物語っています。👇

この思考実験では、箱の中に「猫」と「原子の崩壊を検出すると青酸ガスを出す装置」を用意し、「50%の確率で崩壊する放射性原子」を放つというものです。現実的な見方をすれば、箱を開けても開けなくても猫は生きているか、死んでいるかの0-100となります。しかし、量子力学では、観測するまでは、猫が死んでいると同時に生きているという奇妙な状態でいることを表しています。

この二つの状態が共存していることを「重ね合わせ」と呼び、とても重要な性質です。これを粒子AとB二つでペアを作ると「量子もつれ」と呼ばれる性質を持ちます。これは、粒子に「上向き」と「下向き」という二つの性質(先ほどの猫が生きてるか、死んでるかのようなもの)があったとするとき、観測する前はAもBも上下両方の性質を持っているが、Aを観測するとAは「上向き」となり、観測されてないないBは同時に「下向き」になるという性質です。これは、どんなに遠くにBがあってもAの観測と同時に決まることから「量子テレポーテーション」と言われています。

このように、量子力学は当たり前が通じない世界であり、あのアインシュタインですら否定をしていました。


量子コンピューター

では、最近よく聞く「量子コンピューター」とは何でしょうか?

これを説明するためには、従来のコンピューター(古典コンピューター)との比較するのがわかりやすいです!(参考👇)


古典コンピューターは情報を「0」と「1」に置き換え、電子回路を組むことで計算しています。この時、情報は「0」か「1」でしかないので、たくさんのパターンを何度も試すことで答えにたどり着くため、時間がかかります。

一方、量子コンピューターは、計測するまでは「0」であり、「1」でもあるという「重ね合わせ」の状態でいることができます。そして、量子の波としての性質を利用したアルゴリズムを組むことによって、計測前は様々なパターンの計算を平行して行い、計測時には答えに収束するということが可能になります。この「0」と「1」の併存状態を、さらに「2」「3」と増やしていくと、並列計算のスピードが上がっていきます。

イメージでいうと、「15」という数字を因数分解してください。という問題に対し、古典コンピューターは、「まずは、2で割れるか試してみよう。あ、余りが出たから不正解だ。次に、3で割れるか試してみよう。お、割れたから正解だ!」というように、一つ一つ計算していきます。

これに対し、量子コンピューターは、「世界Aでは2で割れるか試してみます。同じ時刻で世界Bでは3で割れるか試しています。」と同時に計算ができるので、計算が早くなるという仕組みです。

しかし、量子コンピューターは万能ではありません。特定の分野でその計算力を発揮します。それは、因数分解や組み合わせの最適化といった、計算できなくはないけど、すべての通りを試していると膨大な計算量になるという分野です。

こちら👆の記事では、古典コンピューターで1年以上かかる計算を30分で答えを導き出すという成果が出ています。


量子暗号


この量子コンピューターの得意分野である「因数分解」や「組み合わせ」が使われているのが「暗号」の分野です。

パスワードを想像するとわかりやすいですが、他人のパスワードはすべての通りを試せば当てられるのですが、膨大な試行回数がかかります。

これと同様に暗号も因数分解で従来のコンピューターでは解読に時間がかかりすぎてしまうため、安心とされていました。

しかし、量子コンピューターの発展により、ほんの短時間で暗号が解読されていしまう可能性が出てきました。これが自動運転や軍事において応用されたら大変です。

そこで、量子には量子だ!ということで、「量子暗号」というものが生まれました。

これは、量子の「見られたら変わる」という性質を応用したものです。
暗号の鍵となる情報を量子に乗せて送信します。その途中で何者かが鍵を盗もうとすると、量子は見られることになります。その途端、量子は姿を現し、送り主は盗まれたことを感知します。それと同時に新しい鍵情報に更新をすることで、前の鍵は使えなくなるという仕組みです。(参考👇)


そして、ここからが今日の本題のニュースです!(長かったですね笑)

量子暗号通信を用いると、原理的にかつ絶対に盗聴が不可能であるものの、現時点では通信距離が数十km程度にとどまっているという状況にある。本格的な社会実装に必要な数百km以上の長距離通信が実現されるまでには至っていないという。(引用)

このように課題として、長距離通信ができないという量子暗号の弱点を克服するために、中継をするという技術を持つLQUOMという会社が注目を集めているというニュースでした。

ちなみにこの分野で、中国はかなりリードしています。2016年には量子科学衛星を打ち上げ、今年には4600キロの量子通信を実現させるなど、量子通信ネットワーク構築を急いでいます。


近年、サイバー空間での安全保障は緊急性の高い議題になっているので、この技術の事業化には官民問わず多額のお金が集まりそうです!

概念がとても難しい分野ですが、少しづつ理解していくことで、未来が少しづつ見えてくると思います!


おわりに

今回も読んでいただきありがとうございました!

このニュース解説してほしい!というものがあれば是非コメントに書いてください!
(こちらからスキやコメントといった反応ができなくなっています。)

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