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#5 本を追う②/深瀬

山王商店街に阿部久書店という古書店があります。
お祭りの屋台をお祭り以外で見つけた気分でしょうか、不意にあらわれて、幸いでした。
手に取るだけで物語が始まりそうな本がいくつも眠っています。そして、僕はそのうち一冊をつかまされ、そして(大仰に言うと)謎をときました。

そう、8月に。

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謹んで新年のご祝辞を申し上げます🎍

ちょっと、あきれないで。
もう少しだけこいつの文を読んでやりませんか?



今回は前回とはうってかわって、鶴岡は山王町の古書店 阿部久書店さんへのインタビュー記事となっております。

【前回のあらすじ】
鶴岡の古書店で見つけたのはめちゃくちゃオシャなラベルが貼ってある太古の国語・計算ドリル!これはいったい誰が?そしてどんな目的で?真相を確かめるべく、お気にのハワイアンシャツを雨に濡らしながら、僕は二人の屈強な男達と共に古書店「阿部久書店」への取材を敢行した!

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【自己紹介】

阿部久書店にやってきた庄内人(しょなんちゅ)を紹介しよう。

まずは、雲梯(うんてい)を個人所有している、
<百姓一揆>を紹介しよう。(ショウナイユースライター)(左)
次に、ベルマークを未だに集めている、
<中島そうし>(僕の同級生)(右)
最後に、エアコンから小さな夏を感じ取れる、
<深瀬>(ショウナイユースライター)

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↑取材前、鶴岡dadaでの小ミーティングでチームワークを高めつつ、レッテルについての考察を深める3人。豪雨によって既に負け顔になっている。

【阿部久書店到着】

阿部久書店の阿部等さんとのあいさつ、おおまかな内容の確認を済ませ、レジ脇のオシャンティーなテーブルを囲んで茶をいただいた。レッテル本の製作者を突き止めつつ、阿部久書店の秘密にも迫るインタビューがはじまった。

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阿部をQで囲ってるロゴがかわいい。

〈インタビュー開始〉

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深瀬)これが件のスクラップブック(レッテル本)です。
(ペラペラ、阿部さんがレッテル本に目を通す)
阿部さん)んー、ラベルが貼ってあるんですね。
深瀬)製作者さん、分かりそうですか?
阿部さん)作った人というか、昔はマニアでこういうのを集めていた人はいっぱいいるんです。
一同)おぉ~!
阿部さん)それをこうやって貼って取っておくんですけど、お金持ちはちゃんとしたスクラップブックを使っていて、買うんですけれども。あんまりお金のない方は学習ドリルなんかを使って貼り付けて。
深瀬)これを作った人はやっぱり大人ですか?(酒のレッテルが貼ってあったから)
阿部さん)いや、子供ですね。
百姓)でもなんか、お酒とかのものって
阿部さん)それは親のやつ。
一同)親のかあ~。
阿部さん)多分この学習ドリルが要らなくなったので、スクラップブックとして使ったのだと思います。多分中学生ぐらいだと思います。
深瀬)そういうことなんだ、。
阿部さん)自分で、集めたんだねえ。こういうののコレクションだと何万枚かもってる人もいるくらいだから、これは、まだちょっと甘いね(笑)
一同)なるほど(笑)

〈阿部久書店の仕入れ方法〉

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そうし)こういうレッテルみたいなものって、個人宅から引き取ったものなんですか?
阿部さん)そうそう、直接買い取ってくる。というか、大体こういうのって戦前の頃に、ほら、もう自分は東京なんかに出ちゃって、昔のこういうのが、そのまま。
深瀬)遺品ですか。
阿部さん)遺品。そう、もう蔵とかもつぶしたり家立て替えたりするときにね、「あららら、こんなの出てきた」って。
深瀬)そういうのを持ち込んで貰うんですか?
阿部さん)のもあるし、あとは買いに行くと、「こんなの出たので、買い取ってほしい」となって来るとか。
百姓)結構、お願いされて回収に行くってことも?
阿部さん)そうですね、多いですね。

〈レッテル本の話にもどる〉

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↑前回の本を追う①でも言及しました。左上

深瀬)そういえばレッテル本に庄農が作ってた乳酸菌飲料のラクピスのレッテルがあって、やっぱり製作者さんは庄内の人なんだなと考えてました。
阿部さん)おお~~!!農業高校の加工品なんだ。
深瀬)デザインは、?
阿部さん)学生さんがやったんでしょうね。
深瀬)ですよね、でもこんな素敵なデザイン出来るんだな~って驚きました。
阿部さん)うーん、これは良かったねえ。
深瀬)これが千円で買えてすごいですよ。びっくりしました(笑)

〈阿部久書店と東北学〉

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二階の書庫でも自由に本を買うことが出来る。

百姓)ええ~おもしろいな、ほんとに街の本屋さんみたいな認識だったんですけど、ここは古書店っていうか、扱ってる本が、なんていうか研究資材みたいな。
阿部さん)そうですそうです。それが京都大学の元学長がね、今大阪経済の名誉教授なんだけど、その人から電話かかってきて「送ってくれ」って。
深瀬)東北学?
百姓)東北学ね。
深瀬)二階に沢山あるんですか?
阿部さん)うん。東北学は赤坂憲雄さんってね、うちの嫁さんの先生なんですけど、芸工大で。その東北学を発案したのも、赤坂憲雄さん。

〈阿部久書店の始まり〉

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↑変な本がたくさんある。 

深瀬)阿部久書店の始まりっていうか、それも気になったんですけど...。                 阿部さん)昔の昔はね、明治の初めぐらいに来て。それからですね。私が五代目だから、150年はなってないか、130年ぐらいかな。              そうし)その昔から、そういう昔の貴重な本とかを集めていたんですか?
阿部さん)うんそうですね。
百姓)最初からそうなんですか?
阿部さん)最初は違うね。ここは元々問屋街だから、そこに船着き場があって。鉄道が来る前は駅ってのは船着き場なんですよ。そこに駅があったもんだから、そこから荷物の積み出しをして。その時に、綿とか、そういう雑貨みたいな物を取引してたの。布団綿とかね。そういう材料を仕入れて、というのをやっていて。そのあとに郵便局とかもやってたんだよねえ。今の本局とは違くて。それをやってたり、あとは貸本屋とかね。昔は新刊本屋でお金持ちしか買えなかったから貸本とか、古本とかそういうのをね。
深瀬)その昔の古本っていうのも、さらに昔の、いつ頃になるんですかね?
阿部さん)やっぱり明治の初めぐらいからのが、普通に手に取って読む本で、江戸時代の本は全部筆書きなもんだから、写すんですよね。写したものをやり取りして。ちゃんとした本っていうのはもうめちゃくちゃ高くて、買えなかった。
深瀬)なるほど。
百姓)一枚ずつ綴じないといけないでしょ?
阿部さん)そんで全部手刷りなんですよ。だから高かったです。ちょっとやそっとで小銭出して、っていう話じゃなくて、覚悟を決めて買うという(笑)大枚はたいて。

〈町の古書店の立場〉

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1階の内装。レジのつくりがすごく好きだけど残念写ってません

百姓)なんかちょっと、ちっちゃい頃来た時より綺麗になりました?(お店が)
阿部さん)うんそうですね、リフォームを。これは まちづくりですね。山王まちづくりといって、まちづくりの一環でまちをきれいにしようということで。ここもそれに倣って。
深瀬)山王町色々やってますもんね。
深瀬)古書店っていうのは庄内でここだけですか?
阿部さん)ここだけです。
百姓)あ~やっぱり。
阿部さん)山形県でも少ないからねえ。ま、ブックオフ出来ちゃうと、「やってられない!」ってなるんですよ!全国チェーンとは質は違うけど、もう淘汰されちゃうんですよ。
百姓)付加価値がついてる感じだよね。ここは。ブックオフと比較すると。
阿部さん)ブックオフの視点は「新しくてきれい」か。その判断だけなんだけど。
深瀬)ブックオフ、手強いな。

〈阿部久書店で取り扱う本について〉

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またまた二階の書庫。取材後3人で探検しました

そうし)一階と二階って違うんですか?置いてる本は     
阿部さん)
二階は書庫ですね。古本がずらっと並んでます。
百姓)中に入ってるやつと、あ、今日雨ですけど外のやつって、何か違うんですか?
阿部さん)外に出てるやつが、いわゆるうちでは「価値無し」。見る人の目線よっては違うんだけどね。
深瀬)最近の本で行ったら品ぞろえは?
阿部さん)無いですね。最近の本はあんまりね、うちにはおかないんで。
百姓)普通の、本屋さんではないという。
阿部さん)”鬼滅の刃”は置いてないですね(笑)
深瀬)それを求めてここには来ないですね(笑)
百姓)前、手塚治虫の「MW」(むう)という漫画を、ここで買って、ほんとに、「ここで出会えてよかったな」って。やっぱりそういう出会いですよね、ここは。新しい、均一な本との出会いっていうよりかは、「どういう経方をした本と出会うか」っていう。
阿部さん)まあ古書として生き残る本、。十万冊くらい本って出版されるんですけど、古書として残るのは一割無いですね。ほとんど廃棄本ってことです。古書としてそれなりに生き残るってことは、それなりに誰かが欲してるってことです。
深瀬)そこの価値決めるの難しいですよね、。
阿部さん)難しんですよ。ドー~っと出版(だ)すでしょう?ただその中から古典として残るのはごく一部。すごく大変。

〈髙野さん、見つかった?!〉

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店の奥に入りたかった。いつか。

そうし)ところでこの本の作者って、結局誰なんですかね。                      阿部さん)どっかに名前かなんか書いてあるといいけど。
深瀬)「髙野さん」っては書いてあるけどね。
阿部さん)髙野さん?!
そうし)なんとか、探っていくことは…。
阿部さん)わかりました!髙野さんだったら有名ですわ。
深瀬)え?そうなんですか?!
阿部さん)髙野さんは、本も書いてるし、ね!
百姓)ええええええ?!
そうし)うそ?!
百姓)すごい。こんな繋がり方あるんだ。
阿部さん)その娘さんだね、レッテル本を作ったのは。髙野さんは、狩川の有名な熊野神社の宮司さんをやってたの。有名なんですよ。探してください。
百姓)…ほんとっすか?
阿部さん)これ(僕らに本を見せる)の、娘さん。
深瀬)これなんだ?道案内?
阿部さん)庄内道案内。漫遊案内みたいなものです。レッテル本はおそらくその髙野さんの家から出て、阿部久書店でそこを片付けてた時に多分。そのなかの一つ。
深瀬)なるほど。
阿部さん)蔵元でしたので、段ボール200箱~300箱とか。そんなかのひとつですね。
百姓)おぉぉぉ~。
深瀬)大変ですね、。
阿部さん)トラックで何回も運んで、、。
深瀬)まさかこんなに早くレッテル本の製作者が見つかると思ってなかった(笑)
百姓)じゃあ、今もおうちはあるのかな?
阿部さんのおかあさん)神社さ。
深瀬)あるんですか?
阿部さん)今はもう、宮司さんは亡くなってるから。仙台に。
おかあさん)引っ越したな。
百姓)行った方が早いんじゃない?
深瀬)確かに。でもさ、他の親族がまだいるかもしれないし。
百姓)ああそっか。でもどうなんだろうなあ。
阿部さん)髙野さんちはね、昔ものすごいお金持ちだったの。
百姓)やっぱり!
深瀬)髙野さんの遺族の方で、今鶴岡に住んでる人っていますか?
阿部さん)いないです。みんな仙台。
百姓)仙台行く?普通に帰って一人で行った方がいいんじゃないの?(深瀬が上山出身だから)
阿部さん)仙台に住んでるけれども時々、見守りにおばあちゃんが来てますね。
深瀬)なるほど。これからどうしよう。
百姓)今日でここまでたどり着くと思ってなかったもんね。
深瀬)ここでダメだったら鶴岡の髙野さん家全部あたろうかなって思ってました、。
一同)(笑)


【本を追ってみて】

ただ趣味で好きなレッテルを集めていただけなのに、自分の子孫がそれを古書店に流したことでたまたま僕みたいなねっちっこい奴のもとに渡ってしまって、個人情報を調べられてしまって。高野さんは非常に災難だと思います。レッテル本に文はありませんでしたが、なんとなく、きっと許してくれるだろうなと勝手に思いました。

だから、僕が垂れ流しているこの取るに足らないような言葉からでも、だれかが僕を探りにきたら歓迎しようかな。そういう〆です。

もし本をさらに追うことができたならば、ここに追記することにします。それでは、お世話になった(特に阿部等さん、快くインタビューを受けて頂いたのにここまで執筆が遅れてしまい大変申し訳ないです。また伺います!)方々へ、最大の感謝をこめて。ではまた。

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もちろん取材後は二階の書庫で見つけたとっておきの本を購入(総額800円ほど)致しました。一番左なんて謎の日記だぜ、謎の日記。


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☆ライター紹介☆

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深瀬:地区対抗運動会にて飛び入り参加のアルジェリア人が表彰台独占アスリート一家再起不能

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