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現代アーティストの才能 4タイプ診断 ☁️ 美大のモヤモヤしない生き方は?

 「自分には才能が無いのではないか?」 —— 。
美大の中であっても、入学してから、そのように悩む人はたくさんいます。そんなとき、漫画の『HUNTER×HUNTER』にでてくるような能力診断があったら、自分のタイプに合った生き方がわかるのかもしれません。

  なんて、可愛いこと書いてみましたが、現代美術のアーティストの現在進行形の考え方や、美大を例にしたセクハラ問題、どんな業界にもある派閥争い、美大vs美大の裁判にも踏み込みます。「才能のかたち」をテーマに、今を生き抜く分析的テキストです。


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目次 》
・才能 4 タイプ   ( スピード、コピー&エンハンス、デバフ&ルール、パワー )
 ・SECIモデルと人でなし
  ・図形でわかる「才能のかたちマップ」
   ・美大は、ダメ人間育成所 ⁈
    ・4 タイプ別 解説
(後半)へ つづく


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その1: 才能論

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・ 才能 4 タイプ  ( スピード、コピー&エンハンス、デバフ&ルール、パワー )


このテキストでは、美大を例にして、全ての人の「才能」を 4 タイプに、分類し、分析します。4タイプの詳細から知りたい方は、先に (後半) の記事へどうぞ。以降、このページでは、4タイプ全般の基本となる考え方と活用方法をお伝えします。


☁️「才能」には意味がない? ☁️

 「才能」という言葉は、日常よく使いますか?
筆者は、全然使わないです。良い意味で使われても、悪い意味で使われても、なんかちょっと腹が立つじゃないですか。鼻につくというか。そこで、どうして腹が立つのかを考えるわけですが、「才能」は、周りの人よりも上手くいかないときに使う言葉だと言えます。なぜ、上手くいかないとき限定なのかと言えば、上手くいくときというのは、上手くできる原因というのが分かっていて、「才能」以外の別の言葉に置き換えられるからです。なぜか上手くできないことを「才能」という単語でしか表現できない自分のなさけない語彙力や分析力、そして、そもそもの解決の見えない状況にイライラするわけです。さて、ここで一つ、気が付きます。「才能」という言葉は、具体的な意味を持たないのに、腹が立って不安になるというデメリットがあります。なんとも理不尽な言葉です。

☁️ 全ての人に才能は? ☁️

  仕方のない才能トークを解決してしまうには、わりと一般的な方法があって、発見した具体的な才能にどんどん名前を付けていくというものです。例えば、「絶対音感」という言葉がありますね。または、「○○力」(○○りょく、○○するちから)と題したビジネス本や自己啓発本の発売は、毎年、耳にすると思います。ただ、何冊本が発売されようが、全ての才能に名前を付けることはできないですよね。それに、絶対音感はほとんどの人には必要のない才能かもしれません。さらに問題なのは、「○○力」って言われたら、その「○○力」を本を一冊読んで、努力して、実践して、「○○力」を鍛えないといけません。それって、才能では無いと思いませんか? 努力せずにできることが才能だと思っていませんでしたか?
  筆者が思うに、才能とは「能力の偏り」のことです。得意な能力が偏っているから、その部分は、ほかの人よりも少ない練習量で身につけることができて、楽ができる。これが、自分の才能探すときに、求められるべき定義だと思います。ならば、最低限、全ての人がどれかのタイプには当てはまるものを「才能」として、再定義すればよいのです。

☁️ なぜ、美大の才能か? ☁️

   綺麗ごとを言ってるが、真面目な話、本当の才能は存在するだろう!仮に、全ての人に存在する才能が定義できたとして、そんなものは使えないに決まっている!そんな指摘もあるでしょう。筆者も、幾度となく圧倒的な才能というものを目にしてきました。一般的にイメージされやすいことで言えば、スポーツマンや高学歴でビジネス的に成功している人とかでしょうか。美術で言えば、信じられないほど色彩感覚に優れたアーティストや、とにかく絵の具に愛されていてマテリアルの扱いが上手い人、研究者のように論文の書けるアーティストもいれば、集中力の質が異常に高く何をやっても上手くできてしまう人までいます。言わば、チート能力なんですが、ここで注目したいのが美大です。美大では、これら一流の才能に対し、平凡な才能で対抗し、時に、ひっくり返している様子を見かけることも多いのです。
  美大というのは、特殊な環境で、アートという自営業を学生たちに一時的に強いた上で、競争させていると言えます。一般的に、企業の商品というのは、複数人(あるいは何百という人が) 協力し、役割の分担の上で、完成させていると思います。しかしながら、美大の作品というのは、最初から最後まで、学生ひとりで完成させることがほとんどです。役割の分担は発生しないため、学生は自分の得意を見つけ、( 逆に不得意な分野は徹底的に排除し、) その得意を最大限にのばした上で発表しなければなりません。つまり、美大の中では、自分の得意分野を理解し、成長させるプロセスが必要なのです。それは、本人が特異な才能を持つかどうかに関わりません。全ての美大生に、自分らしい生き方の発見と、価値観を具現化し、作品を提案することが求められています。また、美術の作品の制作プロセスは、具体例から抽象的な情報をまとめ、具体的な作品にし、完成した作品から、新たに抽象的な情報を取り出すという企業で求められる開発プロセスとも重なります。そんな美大生の生き方は、才能論に悩まされる現代社会人の参考になるかもしれません。

☁️ 頭の良さは関係あるか?☁️

  近年、流行りのオンラインサロンでよく見る現象で、頭の良い人の成功論がなかなか真似できないというものがあります。成功者の考え方のプロセスがわかっても、それを熟考の上、自分の状況に落とし込み、活用し、応用することができないのです。また、現代アートは、見た目ではなく知識だという人がいます。それは、美術が一見のビジュアルだけで高額な価値が付いていると思っていた人にとっては、わかりやすい説明なのですが、そんなわけはありません。高級品にしても、文化的な何かにしても、知識やマネーゲームだけでどうこうではなく、高級料理であれば味が大切なように、美術であれば見た目が大切です。
  味覚や音感や色彩感覚に個人差があるように、視覚からたくさんの情報量を得ることが得意な人がいます。絵を描く人であれば、絵の具の種類、描き順、描くスピード、下地の処理、構図の良し悪し、視点誘導の巧みさ、絵の具の構造の面白さ、などを見ながら、他の作家と照らし合わせ、作品のルーツ(文脈)や、珍しい技術があるか、現代性や世代の特徴があるか、過去の作品に対してどういうアプローチを取っているか、などを作品の見た目から読みとる練習をしているのです。こういうと、難しく感じますが、そうではありません。例えば、メイクや音楽、英会話、海外の料理を想像してください。どれも繰り返し経験するうちに、最初は気づかなかった細かな部分に気が付きませんか? 仮に、わからなかったとしても、好きか嫌いかや、向き合い方は、自然と生まれてくると思います。五感で感じとっていても、意識していなかっただけで、感覚的なアップデートは、早いものが多いのです

  はっきり言ってしまえば、このテキストの半分は、性格診断です。ただ、自身の性格の把握と、自己肯定というのは、悩んでいるときには、すごく役に立ったりします。性格を強化する (自分のキャラを決定してしまう) ことによって、情報を受け取ったときの好き嫌いのジャッジや、それとどう向き合うかの決定が早くなります。悩みが減ればパフォーマンスは上がるので、結果的に、他の才能のある人に勝てることが増えるというのが、美大でよく見る勝利のセオリーの基本的な考え方です。この「性格を強化する」ことの得意・不得意は、その人の素直さやまっすぐさによるので、頭の良さとはあまり関係がありません。もちろん、戦略的にプロのアーティストになりたい学生がいれば、それには、いろいろな意味での頭の良さが必要です。しかし、成功が戦略だけで決まっているのかというと、そんな簡単な話ではありません。大人になれば分かるように、成功が目標なのであれば、運も金も知性も才能も時間も出来ればほしいものです。ただ、それが全て手に入らないのが普通であって、だとしたら、ゲームのようにステータスポイントの振りを考えてしまおうというのが、このテキストのポイントになります。

☁️ 才能 4 タイプ ☁️

  このテキストでは、「能力で偏り」である才能を4タイプに分類し、美大生的な生き方のメリットとデメリットを考えます。【スピード】タイプは、エリートゆえの早咲きの才能で、成功には、ビジネス的感覚の鋭さと資金と覚悟を持ち合わせる必要があります。【コピー&エンハンス】タイプは、時代のムーブメントを生み出せる唯一の才能で、成功には、優れた友人という協力者と、巡りあわせの強運が必要です。【デバフ&ルール】タイプは、時代のカウンターをする才能で、成功には、戦略と反骨精神と派手さが必要となります。【パワー】タイプは、技術を追求することのできる集中力の才能で、成功には、時間と強いメンタルと分かりやすさが必要です。

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その2: クリエイター論

・SECIモデルと人でなし

 「才能 4 タイプ」には、二つの元ネタがあります。経営学者の野中郁次郎さんが提唱したSECI (セキ) モデルと、評論家の岡田斗司夫さんの提唱した欲求の4タイプです。SECIモデルは、個人が持つ知識や経験がどのように組織で共有されていくのかを体系化したもので、一般に、企業経営で使われます。また、欲求の4タイプは、岡田斗司夫さんが自身のYouTubeで「人でなしの4タイプ」と紹介されたこともあり、人間関係のコツや人付き合いに役立てようというものです。
  SECIモデルの組織に必要な4つのプロセスと、欲求の4タイプは、それぞれ対応しているという指摘が巷であります。ここで普通に考えるなら、欲求の4タイプで個人の性格診断をし、それを企業が4つのプロセスが機能するように人事や、場の提供に活用すればよいのです。しかしながら、それは、企業だからこそ実現できるアイデアであって、個人の成功には役立ちません。そこで、美大の中では、学生がアーティストという自営業を背負っているという話に繋がります。本来、4種類の性格の人が役割を分担し、協力することで、安定した成功が期待できるわけですが、ワンマンのクリエーター業ならどうするべきでしょうか? 個人の性格をキャラクターとして強化し、才能として使う方法のカギこそが美大にあり、それが「才能 4 タイプ」なのです。

☁️ 形式知と暗黙知 ☁️

  SECIモデルの4つのプロセスと欲求の4タイプの対応を具体的に見ていきましょう。SECIモデルの「連結化」は、欲求の4タイプの「司令型」です。「連結化」が得意な「司令型」の人を、このテキストでは、【スピード】タイプ と名付けました。同様に、「表出化」が得意な「注目型」の人を【コピー&エンハンス】タイプ、「内面化」が得意な「法則型」を【デバフ&ルール】タイプ、「共同化」が得意な「理想型」を【パワー】タイプと、名付けています。
  SECIモデルでは、個人の持つ知識や経験のうち、言語化しづらいものを「暗黙知」と呼び、4つのプロセスを用いて、「形式知」という説明できる知識へ変換していくのですが、これは美大における作品制作のプロセスと重なります。「共同化」で想像力を高め、「表出化」で作品に起こし、「連結化」で既存の作品同士の関係性を考え、「内面化」で作品を深く鑑賞し、また「共同化」へと進むのです。作品は、商品やアイデアと考えれば、より一般的なレベルでの応用が可能でしょう。

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・図形でわかる「才能のかたちマップ」

  以上から、筆者が二つの理論を一つの図にまとめ、才能 4 タイプのマップを作成しました。これを「才能のかたちマップ」と呼びます。

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  このマップの特徴は、中央に人口分布を示す図形があることです。このひし形が「才能のかたち」です。
  ここで考えたいのは、ついつい画面端の「天才」と書かれたエリアを目指したくなるのですが、それは違います。「天才」とは、岡田斗司夫さんの言うところの「人でなし」でもあるのです。このマップで筆者の提唱する「才能」とは、「能力の偏り」であると同時に「性格の歪み」です。マップの中央から画面端にズレるにつれて、一般的な人生設計が考えるづらくなると言っても差し支えありません。

☁️才能タイプ別の分析は (後半)へ

・美大は、ダメ人間育成所 ⁈

  アーティストになりたい学生に対して、美大では、いったい何を教えているのでしょうか? 一つは、作品そのものへのアドバイス(講評)です。完成した作品を見て、テーマや表現形式、技法、材料、見せ方、美術史的な位置づけ、等を検討し、作品の方向性や改善点などを学生とともに追究します。もう一つは、作品制作に必要となるアーティストとしての考え方のアドバイスです。そもそも、作りたい作品を思い付くのは、まぎれもない学生自身ですから、どうやって作品を考え出すのかというアイデアを生み出す考え方自体へのサポートも必要になります。具体的には、過去から現在に至るまでのアーティストがどのようにそれぞれの作品を考え出したのかという例をたくさん知ることです。学生にとって一番身近なアーティストである美大の先生たち自身も例にしながら、とにかくたくさん展覧会に行ってみたり、たくさんの画集を読み漁ったり、仲間と意見を話し合ったりをしながら、美大の学生は、作品制作に必要なメンタルと思考方法を獲得していきます。

  作品を生み出すには、熱量が必要ですが、その熱量の元になるのは「性格の強さ」です。美大での教育の過程や経験を通して、多くの学生は、性格を強化し、自身のキャラクターを獲得していきます。より明確で力強い作品を発表するためです。人の性格というのは、その本質(4タイプ)は変わりませんが、成人してからであっても、環境や本人の意識次第で、キャラクターをより強め、性格を偏らせることは可能です。才能が「能力の偏り」であると同時に「性格の歪み」であると言えてしまうのは、こういうことなのです。

☁️ 美大と美大は仲が悪い? ☁️

  話題になったニュースに関西の美大(芸大)同士で、名称の権利を争った裁判というのがありました。名称の権利を争っていたはずが、そもそもこの二つの美大は仲が悪いみたいな話をよく聞きます。また、似たような話で、東京の美大(芸大)と関西の美大(芸大)の仲が悪いというのも、耳にすることが増えました。こういったウワサはどうして出てくるのでしょうか?
  結論としては、日本の美大(芸大)の一部に【スピード】タイプのアーティスト(教授、先生)が集まっており、また別の美大(芸大)には【パワー】タイプのアーティスト(教授、先生)が集まっているため起きている問題です。【スピード】タイプは、マーケティングが得意な、言わばエリートでビジネスマンな才能、一方で、【パワー】タイプは、職人気質で、より本質的なものを求める傾向があります。この正反対のタイプは、お互いに憧れを持つと同時に、批判しあうのです。

☁️ 美大のセクハラはどこからやってくる? ☁️

  才能 4 タイプの中で、セクハラの加害者になりやすいタイプというのがあります。セクハラやパワハラは、【スピード】タイプも加害者になりやすいのですが、よりタチが悪いのが【パワー】タイプのセクハラです。
  【パワー】タイプの才能を持つ人は、とても純粋であるという傾向があります。また、抽象的なことを自身の中で考え、独自の答えに辿り着くという能力に優れています。そして、自身の考える物事の本質(理想)を共有できる関係性を強く求めるという傾向もあり、どんなに社会が変化し、どんな組織に所属していたとしても、師匠と弟子のような関係に強く惹かれます。SECIモデルでいう、暗黙知を暗黙知に変換する「共同化」の話です。一般的に見れば、上司と部下、先生と学生、恋人同士、という関係であっても、パワータイプの人の中では、自分が師匠であり、彼女(彼氏、部下、学生)は弟子として強く思い込むことが多いのです。また、相手からすれば、その気がなかったとしても、非常に純粋であるため、「既に付き合っている」や「既に友達である」かのような勘違いも生みやすいのです。本人の意識次第では、逆に師匠のような人を求める傾向もありますが、その場合は、熱心なフォロワーになるため、問題に繋がることはあまりありません。
  もちろん、これは、【パワー】タイプの性格を人並み以上に強化して、その結末もあり、成功した人に多いパターンです。そのため、自身が【パワー】タイプの才能を持つ人も、意識的に問題の回避をすることは、可能かもしれません。
  美大や大学で、文化系の研究を行う学生は、【パワー】タイプの傾向の強い先生に気が付いた際には、注意してみてもよいかもしれません。

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・4 タイプ別 解説

  (後半)では、才能 4 タイプのそれぞれタイプ別の解説を行います。4タイプの性格診断だけでなく、成功に必要だと思われるものと、その方法論を探ります。美大流の才能のつかみ方は、アーティストにならない人でも、悩みの解決にはつながるかとしれません。
キャラクター(性格)を強くして、悩みを減らして、パフォーマンスを上げる、それが美大の才能論です。


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