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NPO法人設立イベントレポート「〝まちの学校食〟始まります!」(2022年4月26日(火))

はじめまして。NPO法人まちの食農教育の堂脇です。
4月から半年間、省内の研修制度を使って本NPOに関わることになりました。

4月26日に開催した設立イベントでは、4月から神山で暮らすわたし自身も皆さまに〝はじめまして〟させていただく場となりました。

当日の様子をレポートします!


昨秋から準備を進めてきたNPO法人が3月17日に設立され、いよいよ『まちの食農教育』として活動がスタートすることになったことをうけて、〝食農教育〝への思いや〝学校食〟プログラムなど今考えていることなどをお伝えしました。

当日はたくさんのゲストにもお越しいただき、『まちの食農教育』への期待を語ってもらいました。

(1)どんな人たち?なんのためにやるの?

①法人名とロゴの紹介

樋口)〝食〟はみんなが毎日関わることです。だからこそ、それを支える〝農〟にみんなが関われる機会をつくることが必要だと強く思います。
これまでのフードハブ(食育係)での取り組み、昨年の勉強会を通じて、この〝食農教育〟を「続けていった方がよい」と感じています。これからも、まちで育つ子どもの〝共通体験〟として食農教育を進めていけるよう、一緒につくりあげていくメンバーを募り、NPO法人『まちの食農教育』を立ち上げました。

②メンバー紹介

③NPO法人になって新たに関わることとなった安東と堂脇とのクロストーク

(中央左から)安東迪子、堂脇義音

樋口)どういった経緯で神山に?

安東)昔から食に興味があって、食品輸入会社でフランスのワインなどのオーガニック食品の輸入に携わっていました。食料廃棄の現状に直面したのがきっかけで、飢餓や栄養失調の問題で苦しむ開発途上国の子どもたちと食事を分かち合う〝TABLE FOR TWO〟の活動を始めました。アフリカなどの学校に通う子どもたちへ地産地食の給食を提供するうちに、日本の食・給食にも貢献したいと考えるようになり、そうした中で、『食農教育NPO』の立ち上げメンバー募集の記事を見て、「これだ!」と思って連絡しました。

アフリカの学校での給食の提供(2015年)

樋口)堂脇さんはなぜ神山に?

堂脇)私は、「未来を担う子どもたちを支えたい」と思い、文部科学省に入省し、現在、文化庁で働いています。前職の復興庁で、東京五輪を契機とした被災地の情報発信業務として、被災地産の食材や花のPRに携わったときに、農家さんや漁師さんなどの熱意を目の当たりにし、農林水産業や食べ物の大切さを実感したことをきっかけに、文部科学省の職員として、「食育・農作業を通じて子どもたちの成長を支えたい」と思うようになりました。そんな中で、フードハブ・プロジェクトでの取り組みと、NPO法人としての新しい活動が始まることを知ると同時に、NPO法人等の現場での実務に携わることにより現場感覚や組織経営を学ぶといった省内の研修制度を知り、ご連絡した次第です。

被災地産の食材を使ったスープによるPR(2019年)(復興五輪ポータルサイト

樋口)お二人は、これからどんなことをしたいと思っていますか。

安東)これからやりたいことは2つあって、一つは農体験・給食・食育を通じた体系的な〝学校食〟プログラムをつくること、もう一つは法人が安定して活動を行えるように経営・体制を整えることです。

堂脇)〝食〟は生きる上での基本であって、私たちにとって一番身近な習慣です。子どもたちには、単純に『おいしい』から始まる感覚を大切にしてほしいです。また、一行政官の立場からすると、この不安定な現代社会においては、自ら気づき、考え、判断・行動する力が重要になってくると考えていますが、一番身近な〝食〟と、それを支える〝農〟を学ぶことで、子どもたちの〝生きる力〟を養うことができるのではないかと思っています。その意味で、これまで神山町で培ってきた取り組みを全国に発信することには大きな意味があります。その発信・広報や、そのために必要な行政・学校・農家さんたちとの調整・連携に関わりたいです。

樋口)改めてお話を聞いてみてこれからの活動が楽しみです。堂脇さんは9月まで、安東さんは9月から神山におられるので、色んな方々と色んな活動を一緒にできればと思っています。

(2)これからどんなことをするの?

樋口)これから育てていきたい事業は大きく3つあります。

  1. 学校食について…農体験から給食までを学びのプログラムとして提供していきます。まずは神山でつくって、深めていくことを優先的に取り組んでいきたいと思いますが、神山で終わりではなく、神山で積み重ねてきたその価値を広く伝えられたらと思っています。

  2. 大人の食育について…大人を対象にした農体験や食育などの研修プログラムを検討しています。〝食〟と〝農〟をつなぐことを意識して、子どもだけでなく、大人にも展開できたらと思っています。

  3. 食農教育をそだてる勉強会について…ESD(持続可能な開発のための教育)の視点も取り入れながら、これまでの研究を整理したり、発展させたりして、町内・外の多くの方々を対象に勉強会を開催できたらと思っています。

この3つの事業の中で今最も注力したいのが、〝学校食〟です。

樋口)農体験と、食育と、給食とを別々に推進するのではなく、育てる、つくる、食べることからその先につなぐ一連の取り組みを〝学校食〟として、地域の人たちとそれぞれの知見・ノウハウを共有しながら、子どもたちの成長を支えるといったことができたらと考えています。

学校給食は、その目的の一つに『学校における食育の推進を図ること』が掲げられており(改正学校給食法)、全国の学校では、『栄養教諭』が学校給食を通じて児童・生徒への食・栄養に関する指導を担っています。

樋口)神山町では、〝奥田先生〟お一人がその役目を担われているのですが、NPOでは、栄養教諭の先生だけでは手が届かない〝農体験〟やそれに関わる地域の方々とのコーディネートをしながら、栄養教諭の先生と一緒に、食育や栄養指導、農業への理解などを推進できたらと思っています。

神山町における学校給食は、学校給食センターにより提供されていますが、今年度から、事業主体は㈱フードハブ・プロジェクトが、現場での調理等オペレーション業務は関連会社である㈱モノサスの社食研が担っています。

樋口)NPO法人まちの食農教育としては、これらの団体・方々と協力しながら、これまでも実施してきた農体験から給食までを一連の流れとして〝食〟と〝農〟をつなぐ〝学校食〟プログラムがつくれたらと思っています。

〝学校食〟プログラムの核となる給食に関わっている給食センターの奥田香里さん(栄養教諭)、モノサス社食研の荒井茂太さんから、神山町の学校給食について伺いました。

(中央左から)奥田香里さん、荒井茂太さん

樋口)栄養教諭ってどういうお仕事なのでしょうか。

奥田)学校給食の運営、食育活動が主な仕事となっています。特に重要なのが、献立作成です。文部科学省『学校給食摂取基準』に沿ったものであることはもちろん、神山町では、地場産物の活用にも取り組んでおり、道の駅と連携して町内産の食材を多く取り入れられるよう、献立を作成しています。今日は、神山町産の干し芋を使った『干し芋シチュー』を提供したのですが、神山ならではの給食の一つとなっています。また、学校給食が児童・生徒たちにとって〝生きた教材〟になるように、学校給食を通じた〝食育〟にも力を入れています。例えば、『徳島県食育推進パワーアップ作戦』の一環として、バランスのよい朝食や野菜についての授業を行ったり、それ以外にも、お茶についての授業・体験を行ったりしています。
このように、食の観点から子どもたちに関わることができて、楽しく、幸せに感じています。特に、神山町では地場産物を多く使うことができるので、地元の食材を〝食育の教材〟として活用することができるのはやりがいを感じています。

樋口)昨年度の活動を通じて、〝学校食〟についての想いや期待があれば聞かせてください。

奥田)昨年度は、神領小学校の1年生が育てた野菜を給食センターに納品してもらい、上級生たちが考えてくれたメニューを基に給食で使用して提供しました。実は、野菜が苦手な児童もいたとのことですが、自分たちが育てた野菜は特別なようで、その日はよく食べてくれました。

神領小学校1年生が育てた野菜を使ったシチュー(2021年)

奥田)今後も、給食センターとしては、どのような取り組みをすればよいかを相談させてもらって、学校給食がよりよいものになるよう進めていければと思っています。

樋口)荒井さんは、この1か月近く給食センターで調理に入っておられますが、これまでどういうお仕事を?

荒井)私は、元々グーグルのフードチームで社員食堂・カフェの運営をしていました。そのとき、食・社食の可能性を感じ、社員食堂の事業を始め、三菱地所などの社員食堂の運営を務めてきましたが、もっと可能性を広げたいと思い、モノサスに入社し、関連会社であるフードハブと連携して社員食堂や学校給食に携わっています。

樋口)この機会にぜひ、今の現場の様子を聞かせてください。

荒井)今日は、朝からキャベツ15kgを手切りしてきました。毎日、本当に新鮮な野菜を仕入れさせていただいているので、その触感を感じてもらうためにすべて手切りに変えています。実際、お子さんたちから「野菜の触感がおいしくなった」(レタスチャーハンの日には)「レタスチャーハン(のレタス)がおいしかったよ!」といったお声をもらっていて、小さな変化に気づいてもらっていることにありがたく感じつつ、その感性を大事にできればと思っています。
やっていて、すごく可能性を感じているので、皆さんと双方向的にやりとりしながら、よりよい学校給食をつくっていければと思います。

樋口)お話を伺ってみて、私たち、町の人たちも食べられる機会があればいいなと思いますし、逆に、子どもたちから直接お声をもらう機会があってもいいなと思っています。引き続き、〝学校食〟が学び多きものとなるよう、皆さんと一緒につくっていきたいです。

この後、一般社団法人農山漁村文化協会『うかたま』編集長の中村安里さんからの応援メッセージを紹介しました。

(3)応援するには、どうすればいいの?

①今年度の活動に必要な予算・目標について

上記の農体験や〝学校食〟プログラムをつくっていくため、1,200万円の予算を見込んでおり、神山町からの委託費・補助金(ふるさと納税分を含む)や役員からの借入金を除く約500万円のご寄附を集めていきたいと思っています。

あわせて、来年度の認定NPO法人取得を目指し、マンスリーサポーターを60名募ります。

②今年度の活動に当たってのご寄附・サポーターのご支援・ご協力について

  • マンスリーサポーター…月々1,000円からマンスリーサポーターになっていただけます。定期的な活動報告のほか、限定イベントのご案内を考えています。

  • スポット寄附…(関わっていただく最初の一歩として)単発のご支援になります。

  • ふるさと納税…ふるさと納税を通じてのご支援は、使途を「食農教育事業」とご指定ください。

  • クラウドファンディング…クラウドファンディングを通じてのご支援も現在準備中です。

皆さまのご寄附が、食農教育の普及と子どもたちへの支援につながります。ご支援・ご協力お願いいたします。

(4)まちのみんなの声を聞いてみよう!

まちの皆さんを代表して、2016年(初年度)に「農体験」をしてみて『風景の見え方が変わった』と語った長野有紗さん、竹田芽衣さん(いずれも当時小学5年生/現在高校2年生)と、当時の担任の篠田真理先生に、神山町の給食や農体験について伺いました。

(左から)長野有紗さん、竹田芽衣さん、篠田真理先生

樋口)町外の高校(普通科)に通っているとのことですが、どうですか。

竹田)神山の小・中では給食があったり、食や農業に関する授業があったりして、地域の食・食材について学ぶ機会が多かったのですが、今はそういった時間がなくなって、食に対する意識が薄くなったと感じています。

長野)給食が名残惜しいです。友だちと食に関して話す機会がなくなって、関心・意識が薄れていっていると感じています。

樋口)神山だと普段から食について話すことがあったと?

長野)給食があったので、給食の時間はもちろん、給食の前の休み時間に『今日の献立』について話したりと、毎日必ず〝食〟に触れていたと覚えています。

樋口)小学校での食農教育について印象に残っていることや、思っていることがあれば教えてください。

長野)野菜をつくり、育てる人がいて、それを加工したり、売ったり、最終的に消費する人がいますが、神領小学校ではその一連の作業ができて、貴重な体験をさせてもらったと思っています。

神領小学校と広野小学校との合同田植え(2016年)

竹田)自分たちでもち米をつくったり、神山中学校ではお茶摘みをさせてもらったり、町外で暮らしていたらあまり関わることがなかったことかもしれません。特に、米・野菜をつくるにとどまらず、食べたり、売ったりできたことがよかったと思っています。

収穫したもち米を調理し、地域の人にふるまった「ありがとうパーティー」(2016年)

樋口)当時の担任だった篠田先生はどうでしょうか。

篠田)これだけ〝食〟のことを深く考えている高校生って神山の子どもたちだけではないかと思います。当時、〝食育〟〝食農教育〟を通じた経験は人生を豊かにしてくれるものと思って取り組んでいましたが、やってよかったと感じています。

樋口)これからも食農教育を続けていきたいと改めて思っています。

最後に、後藤町長からエールをいただきました。

(中央)後藤町長

後藤)「農家といかにつながるか」が子どもたちの気づきや感性、発想力、ふるさとへの想いに影響を与え、いつもよりおいしい給食につながると考えています。また、子どもたちが作った農作物が給食として提供されることで、子どもたちにとってよりよい給食になると思っています。
こうした給食を通じて、〝食〟が体をつくること、生きる源となることを感じられる子どもたちが増えるといいですよね。特に、小さい頃の食事は子どもの味覚を形成するものであって、この体験は一生の宝になると思っています。
まちの食農教育を担うNPOの活動を、まちとして全面的に応援しております。

いよいよNPO法人として新しい挑戦が始まります。まずは神山から。役場、学校、給食センター、農家さん、子どもたち、まちの皆さんとともに、よりよい〝学校食〟プログラムを考え、広く社会に発信していきたいです。いつか、〝食農教育〟が全国、全地域に広まって、より多くの方々が〝食〟と〝農〟について自ら気づき、考え、判断し、行動することでより豊かに生きられるよう取り組んでいきます。

撮影協力:植田彰弘


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