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同士


地上5階その名もなければあの頃のまま
雪の日には滑る鉄の階段が屋上への近道
延長コードはふたつもあれば十分足りる
ベランダ越しに渡る友人の声が大人しい
避難した近くの川で夜を明かす震災の日
砕けた木製の鏡をガムテープで貼り付け
またこころを渡すようにコードを延ばす
ふすまと軽い扉と高々とした天井が良く
遠くに見える街を敵陣と見なして過ごす
シャボン玉を飛ばしてシャッターを切る
落ちるなよと交す言葉が肌に残っている
延長コードの回収もふたりいれば足りる
ベランダ越しに渡る友人の声は大人しい
その名もない屋上から鉄の階段をつたい
地上5階名もなき部屋に心を閉じ込める





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都内でフォトグラファーをしております福森翔一と申します。商業フォトグラファーとして活動しながらSNSの中で「撮り下ろし企画」をしています。テーマをいただいて写真を撮り下ろし額装写真として自宅にお届しています。現在172人のご依頼があります。活動の応援をよろしくお願いします。