福森翔一

フォトグラファーが書く文章なので良し悪しは感覚です。日々はじまる毎日の頭の中の少しの部…

福森翔一

フォトグラファーが書く文章なので良し悪しは感覚です。日々はじまる毎日の頭の中の少しの部分を記録します。 https://instagram.com/shoichi_fukumori

最近の記事

指紋

画面に手垢をつけて届けた気持ち 頭を撫でれば体温を感じられたり 鼻をすすると大丈夫の声が掛かる 大切な事の外側はとても柔らかい 画面に手垢をつけて届けた気持ち 肩をさすれば呼吸を感じられたり 背中を支えると心臓が波打ち出す 大切な人の内側はとても柔らかい カーテンレースの花が床に伸びて 沸かしたお湯がすぐに冷めていく 坂道をのぼるよう階段をおりたら 平坦な道を真似たような朝がくる 大切な人の姿形はとても柔らかい

    • 再生

      微炭酸が抜け落ちて昼間が暮れる 興味のない事に会話を付け足して 首元に回した心配事で目が覚める どこ吹く風のその場所を確認する ブランケットを日除けに終わる朝 興味のない事に目配せしておいて 冷えた指先がなんともなく温まる リモコンの再生ボタンを確認する 互い違いの枕で昼を終わらせたら ここからの事を手書きで済ませる 抜け落ちた微炭酸だけまた暮れる

      • 移動する事

        夕方らしい夕方が窓景色を見送る 8両編成隣り合わせの後方座席を ノートの隅に記すように過ごして 今だけのような光で頬を赤らめる どこかの夕方みたいな街を見送る 8両編成隣り合わせの窓側座席を こぼさないようにメモに落として どの気持ちも数行の文字に替える 今日が沈むまでのすこしのあいだ 日よけを鼻先まで下ろして過ごす ありふれた風景は頭の中に仕舞う

        • 目配せ

          画鋲で張り付いた空に埃がたまる そうでもしないとねと思い返して 18の春がレアなまま焼けていく 簡単な言葉で首元まで手をまわす 板についてきた毎日に埃がたまる きっと大丈夫多分ねとそうやって 唾液を垂らした18の春がおわる 簡単な言葉で胃袋までも手で拭う 数分で書き終えた誰のための文が それらを横目に居眠りをはじめる 簡単な言葉で張り付いた埃を払う

          触れる

          こころに空いた穴はぽっかりして 17年目の東京生活すら味気ない 浮かんで消えた意味のない言葉と クシャクシャな時間を上蓋にする こころに空けた穴はぽっかりして とりあえずつけたテレビ興味ない 随分と経ったようで掛けた電話に まだ三日だねと笑うだけ蓋をする こころのぽっかりとした穴は適温 空気にしてはよく喉につまるけど 味気ないというくらいの味がする

          眠たい身体から毛布が擦り落ちる 少し開いたままにしたふすまから 寝息と寝言が呼吸みたいに溢れる 要らない言葉を水道水で洗い流す 眠たい目線には毛布を掛けておく 引き寄せたテーブルで傷ついたり こぼしたて米粒がへばりついたり 要らない言葉を水道水で洗い流す 触れるまま嬉しさに頬を赤らめる 大切な事を大切に出来るようにと 耳を澄ましておやすみを繰り返す

          プロペラに引っ張られた言葉たち 自分から湧き出た素振りの上手な 心中穏やかでないある日の出来事 赤の他人が黙って飲み込んだ平和 何かになると引きずった言葉たち 自分から流れ落ちた顔色の上手な 耳を塞いだ隣同士が音のない会話 こぼれたアイスの染みで知る平穏 米粒ほどに小さく映された戦闘機 入り口を隔てて並ぶ静かな喫煙所 プロペラに引っ張られた言葉たち 駐車場に隠れて真っ黒な灰になる

          生活

          溶けそうな夜と書きそびれる 吸い込んだ煙が配管を伝って 屋根の下でただの安心になる 日曜日は梅雨明けの顔をする 熱量とは反対側の静かな様子 飲み込んだ形が胃袋を伝って 屋根の下でただの安心になる 日曜日は梅雨明けの顔をする もうすこしだからと声にして 溶けそうな夜だけを書き残す 屋根の下には安心だけがある

          車窓

          ビル街その隙間を縫って墓がある 去る者を追いかけるような都会が ほんの数ヶ月間で規制線を巡らす 小さな頃の大きな夢を買い忘れる ビル街その隙間を埋める人がいる 珈琲が立てた湯気が熱に変わって 本心に香りをつけて話をつづける 小さな頃の大きな夢が持ち腐れる せっせと風景を言葉にしてみたり 無事だからねと安心させてみたり ビル街その隙間をくぐって暮らす

          30分

          毎日が毎日みたいな顔をして 大変みたいな身振りでおわる 忙しい誰かが首元を痒くして 寝息がこころの奥を洗い流す 仲間が仲間みたいな顔をして 大変みたいな素振りで噂する 触れずに突き刺ささる言葉に 寝息のひとつだけで蓋をする 鈴虫と雨上がりの音を背景に お腹の空いた様子を書き留る 忙し痒い首元を寝息が温める

          痛み

          夕方からはじまるお昼の散歩 お腹が空いて吐いたけむりと 覚え忘れた過去のアイコンを 熱冷ましのつもりで服用する そろそろに見飽きそうな夕方 痛んでかばった背骨のはじと 着飾ったつもりのアイコンを 熱冷ましのつもりで服用する もう始まるが終わりかけたり 見飽きた夕方には見惚れたり 熱を冷まして毎日を服用する

          スクロール

          旅をしたい気持ちだけで旅をして らしくない言葉で自分を表現する 羨ましいの声さえ聞こえないほど アンプが大げさに響き鳴っている 離れてそこに居たいとそれだけで らしくない言葉で良い草をさがす まだ足りないの空気だけ吸っては お腹だけいっぱいの振りを続ける 旅をしたい気持ちだけが旅をして ここに居たままどこにでもいける 誰でもない何者にもそっとなれる

          スクロール

          お裾分け

          鋭角な夕方が西武線向こうで沈む 窓から窓へ移動するただの景色と 見切れたエステの看板さえ美しい あともうすこしこのままでもいい 停車駅手前向こう側は夕方の角度 窓と窓のあいだ譲れたはずの席に 親が子を見つめるような風が吹く あともうすこしもすこしで終わる 西口改札差し込む夕方そのままに 大抵のことはこの場所で済ませる お裾分けされた日々はまた始まる

          お裾分け

          遥か街を切る ロンT

          昨年から販売しているロンT 限定制作でアッシュを作りました。 在庫残りわずかですが 気になる方は是非、 WEBSTORE を覗いてみてください。

          遥か街を切る ロンT

          バスに乗ってバス停を越える 目前の郵便局は賑わっている 予定通りに遅れてやってきて いささかというかいくつかの 足踏みをしながら街へ繰出す 数十円単位で変わる料金表に 一秒一分と車窓が坂をくだる 膝下に少しの穴が空きそうだ バスに乗ってバス停を越える そろそろ酔いが回りはじめる 予定より早く街に着きそうだ

          ボリューム

          口をあけて手が届く自然は美しい 余計な事を思う暇が多くあったり 通り過ぎた場面に引き返したりと 余計なお世話だろうけども忙しい 口をあけて追いつける朝は美しい 夕雲を貫いて飄々と夜を引いたり 疲れたまま2時間も寝てみたりと 余計なお世話にしてみては忙しい 今思ってることと覚えていること もう忘れて思い出せないと知る事 余計なお世話だろうけども美しい

          ボリューム