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「役職が人を育てる」は正確ではない Teal組織 #1

#初投稿 #書籍レビュー #3文で自己紹介
私は元々、新しいこと好きで、自分はアントレプレナーだと信じ込み、社会に新しい価値を届けてやりたいと思って社会に出た人間です。

社会という外部がすべてで、新しいニーズや新規サービスを生み出すコト、アイデアの実現性ばかりに目が行っていたため、組織内の物事やいわゆる「組織論」は食わず嫌いでした。

アラサーになって経営企画で働き、マネジメントや経営の書籍を漁り出すようになって、「ああ、組織がすべてだ」と思うようになり、掲題の本を読み、思いあたる課題意識が非常に多かったのでシェアしようと思います。

初回は「役職は人を育てる」という通念が「本当にその通りか?」というもの。

多くの場合、上のポストを与えると人は成長しますので、経験的には正解です。より上位の役割、情報、権限が与えられた結果でしょう。

一方、本書は「役職や管理職が必要ない」組織運営について紹介しています。従業員全員がすべての情報を閲覧でき、自身の役割を自発的に提起し、組織と擦り合わせを行っているため、既に「平社員」が役職者以上の成長をしている事実が報告されています。

逆説的ですが、「役職が人を育てる」というのは半分正解、半分間違いで、「役職に紐づく権限と情報が得られないことが成長のボトルネックになっていた」というのが正確な表現かな、と考えます。

私個人の話ではありますが、有難いことに仕事柄、閲覧できる情報が多く、会社の色々なことが知れて、それによって成長材料が得られている感覚が大きいです。少しでも情報が欠けると仕事にならず、成長は限定的になったと感じます。

関連して、日頃思っていた大抵の企業の分かりやすい課題を取り上げます。

「なぜ多くの大組織で新規事業が上手くいかないのか」

「オープンイノベーションが必要」という論調に帰着しているあたり、自社で解決できず新興企業に力を求めている大組織側の事情は明らかでしょう。

私の答えは「課題を担当者に共有していないから」です。担当者の能力や経験、気質の問題ではない、という認識を本書を読んで強くしました。

必要な情報と権限、そしてミッションがあれば、勝手に人は成長する、というのが本書の一つの示唆です。

ここで一つ私が違和感を覚えた小さな逸話を紹介します。

職業柄、多くの外部セミナーに参加しており、昨年に「新規事業の作り方~種まきから計画策定まで~」的な講義に出ました。

そこには名だたる大企業の新規事業開発担当者がいたのですが、困った顔の多いこと。やらされ感が部屋全体を覆い、質問は僅か。(新規事業なのに!)

なぜ・・・

noteというツールで記事を読まれるようなオープンさや自発性、リテラシーのレベルが高い方は理解に苦しむかもしれません。

要因を「新規事業開発の経験が無い」「パッションが無い」という担当者の属人的な能力や気質に帰着させるのは生産的ではありません。それを満たす人材を当てられないのだから。

解決すべき根本課題は、経営課題がシェアされないまま、「とりあえず新しいことをやれ」という指令だけ降ろすマネジメントにあると私は思いました。

多くの大会社の新規事業の目標は、縮小する国内市場を前に、自社のアセットを活かして新しい市場に参入することのはず。(おそらくスタートアップの新規事業とは違う側面があるでしょう)

そのためには、自社アセットの把握と整理はもちろん、自社事業の成長余地の縮小という経営課題を前提に、参入余地のある市場の模索、業界内のポジショニング、既存事業における課題...etc、それらを棚卸しすることがスタートラインかと。

多くの場合、スタートラインに立つ前に、経営課題を共有することが憚られ、「新しいことをやる」という手段だけが切り離されている、というのが実態ではないでしょうか。

講師の方も、情報交換でお会いする別のコンサルタントの方も、「いきなり上から新しいことをやれと言われて困っている。何から手を付けて良いか分からず、手伝ってほしい。」という相談が絶えないと口を揃えるので、この直観もあながち間違っちゃいないのもしれません。

Teal組織に限らず、オープンな組織では、自社の優先課題は整理され、共有されているはずなので、このような事象は起きないでしょう。このあたりまでは「GoogleのOKR」の段階で達成可能そうです。

さて、こういった事象は1つの事例で、読んでいくと次々と「従来型組織」で働いて感じる違和感や諦めを見出すことができます。(かなり性善説の人間観に基づいた組織論なので、日本で実践するには、内部統制をどうクリアするのか、という論点が鬼門だなと個人的には感じます。)

立ち読みレベルでこの気づきなので、続きが楽しみです!

【後記】
組織論に関心を持ったきっかけはGoogleの目標設定手法に関する書籍です。逸話に出て来る指導者の元インテルCEO、アンディ・グローブが、影響を受けたドラッガーについて「人間本位で成果主義のマネジメントを説いた」と触れており、成果を追い求めるあまり、メンバーの気持ちを切り捨てがちだった「調和より成果」志向の自分にとって「絶対に必要だ」と直感的に確信が湧きました。

「会社とは」「組織とは」という定義について、人間本位と成果主義という、現代の組織で相反しがちな両者双方に重きを置き、考察を提示して啓蒙したのがドラッガー、
彼の生きた時代には存在しなかった最新の組織運営の事例から新たな「働く人間観」を提起しているのが本書、というのが私個人の整理です。

目標管理が不要という疑念に至ったのは皮肉です…

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