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三大栄養素の代謝②|脂質代謝

こんにちはSHOです。僕のnoteを読んで頂きありがとうございます。

代謝シリーズ、糖代謝に続いて第2弾。
今回は「脂質代謝」です。

<代謝とは?>

糖質の代謝についてもエネルギー生成経路が2つあったり、解糖系やらクエン酸回路やら難しかったと思いますが、実は脂質代謝のが厄介だったりします。

丁寧にお伝えしていきますので、ご興味がある方は是非この先もご覧ください。特に糖質制限ダイエットをしていたりする人には読んで頂きたいです。

○復習から(脂質の消化吸収)

脂質は他の栄養素とはまた違う経路が消化吸収がされていきます。その大きな理由の1つが「水と油は混ざりにくい」ということです。

例えば、洗い物をしていて頑固な油汚れは水だけで落ちにくい、取れにくかったりします。じゃあどうするのか?洗剤を使って綺麗にしていくわけですが、洗剤には「界面活性剤」というものが含まれています。本来、水と油のように混じり合わないものを、混ぜ合わせるのに役に立ち、汚れを落とす洗浄の働きをするわけです。


身体の中でも同じようなことが起きます。


口の中でよく噛んで食べ物を小さくし、唾液と混ぜ合わせて食道に送ります。その後、十二指腸に到達すると、膵液に含まれる消化酵素リパーゼによって少しずつ分解されていきます。

ただし、油である脂質は疎水性(水を弾く)なので消化液とうまく混じってくれません。そこで、胆嚢から出る胆汁に含まれる胆汁酸が脂質を細かくしていき、リパーゼによって分解されていきます。胆汁酸には水と油を馴染ませる働きがあります。まさに界面活性剤みたいなものです。

ここでは、2つの脂肪酸とモノグリセリド(グリセリンに脂肪酸が1つくっついている状態)に分解されます。脂肪酸とモノグリセリドは親⽔性が低く取り込みにくいので、胆汁酸とともに「ミセル」という⼩さな構造によって⼩腸内の空腸で吸収されていきます。

「ミセル」とは小さな水溶性の脂質集合体だと思って頂けたらOKです。脂質の外側が親水基で囲まれるから水に溶けやすくなるのです。だから消化酵素で分解することができるという流れです。ダイエットには全く関係ない知識ですが、身体の中で起きていることは知っておいて損はありません。

○脂質の種類

先に話を進める前に、脂質の種類について簡単にまとめておきます。

●トリグリセリド(中性脂肪)

他にもモノグリセリド、ジグリセリドがありますが、生体内の中性脂肪のほとんどはトリグリセリドなのでこのように表記させて頂きます。

トリグリセリドは1分子のグリセリンと3分子の脂肪酸で構成されています。脂肪細胞は細胞質中に大量の中性脂肪を貯蔵エネルギーとして蓄えることができます。また、脂肪細胞は体熱の保存や内臓の保護にも重要です。

●リン脂質

細胞膜を形成する主な成分で、体内で脂肪が運搬・貯蔵される際に たんぱく質と結びつける役割を担い情報伝達にも関わります。

●コレステロール

これは以下で色々書いていきます。

○脂質代謝について

では、今回の本題に入っていきましょう。

食べ物に含まれている脂質にはほとんどのものにトリグリセリドが含まれています。

先ほど申し上げた通り、十二指腸に入って膵液に含まれているリパーゼによって分解され、モノグリセリドと脂肪酸に分解されます。

どちらも小腸的で吸収されますが、これらは小腸内でトリグリセリドに再合成されます。ここからグルコースとアミノ酸との違いなのですが、これからは門脈経由で静脈入って肝臓に向かっていくのですが、トリグリセリドはリンパ管を経由します。(グリセリン単体や中鎖脂肪酸などの一部の脂肪酸を除く)ちなみに、リン脂質やコレステロールも一緒です。このように工程が多いから脂質は消化に時間がかかるんだって覚えておくと良いです。

ここで問題が出てきます。

これらは疎水性なのでこのままだとリンパ液の中を流れにくいのです。

というわけで、ここで登場するのが「アポたんぱく質」です。アポたんぱく質とリン脂質のリン酸は親水基で水に馴染みやすいのです。

これらが疏水部分の脂質を囲みます。外側がこれで、内側にトリグリセリドやコレステロールを包み込むイメージです。このような小さな粒子にしてリンパ管を流れていきます。これを「カイロミクロン」といいます。リポタンパク質の一種です。カイロミクロンはリンパ管・血管を流れる大きな船のようなイメージでOKです。

[カイロミクロン号:乗客にトリグリセリド、コレステロール]
こんなイメージでOKです。

色んな名称が出てきてチンプンカンプンかもしれませんが、ここでの大きなポイントは脂質はそのままの状態だと液体の中を流れていかないから、他の物質の力を借りて流れやすくしないといけないということです。


●リンパ管に入ってからのカイロミクロンの動き

ではここからのカイロミクロンの動きについてみていきましょう。

リンパ管に入ったカイロミクロンは、静脈角から静脈に入り、心臓を通り動脈に運ばれていきます。カイロミクロン内のトリグリセリドは、毛細血管内のリポたんぱくリパーゼによってグリセリンと脂肪酸に分解されていきます。

グリセリンは肝臓へ運ばれていきます。脂肪酸はアルブミンと結合して、遊離脂肪酸として細胞に取り込まれていきます。また脂肪細胞にも送り込まれます。脂肪細胞では、脂肪酸を材料にしてトリグリセリドを合成して貯蔵されます。

ちなみに、なんで細胞に脂肪酸を送っているのかというと、脂肪酸を酸化させることでエネルギー源として利用できるからです。これはβ酸化といって後で少し触れます。要するに、糖代謝ではグルコースからエネルギー(ATP)を生成していましたが、脂質代謝でも脂肪酸からATPを生成できるのです。

●肝臓に入ってからのカイロミクロンの動き

肝臓に到達したカイロミクロン内のトリグリセリドは少なくなっています。分解して各細胞に脂肪酸を配っているからです。

肝臓ではカイロミクロンが分解されてVLDLというリポたんぱく質が作られます。これは「カイロミクロンより小さいけど密度が高い船(リポたんぱく質)」のイメージでOKです。

構成成分はカイロミクロンと同じです。
・トリグリセリド
・リン脂質
・コレステロール
・アポたんぱく質
この4つですが、特にトリグリセリドが多く含まれています。

VLDLに含まれているトリグリセリドは先ほどと同様に血管内のリポたんぱく質リパーゼによってグリセリンと脂肪酸に分解され、各細胞に運ばれていきます。

VLDL内のトリグリセリドがどんどん分解されていくと、コレステロールが占める割合がどんどんと大きくなっていきます。名称も変わってこのようになったものをLDLといいます。VLDLより大きさは小さくなりますが、コレステロールの比率が大きくなったものです。

「LDLコレステロール」とか聞いたことがありませんか?まさにこれです、これ。悪玉コレステロールとか言われたりもしますが、ここから先ちゃんと見て頂ければその理由も分かります。

LDLは細胞にコレステロールを配っていきます。細胞は受け取ったコレステロールを細胞膜の生成やホルモンの原材料に使っていきます。また、胆汁酸の原料になるのもコレステロールです。

通常はこのようになるのですが、コレステロールが多い場合は血管壁にコレステロールを付着させてしまいます。これが動脈硬化を促進させる原因の1つです。だからLDLコレステロールが悪玉と言われてしまっているのです。

勘違いして欲しくないのは、LDLは悪玉でも何でもないし、コレステロールが悪者でもないということです。シンプルに余剰にあると動脈硬化の原因になりかねないということです。そして、LDLは肝臓に戻ってきます。

●肝臓で生成されるHDL

HDLもリポタンパク質の一種でLDLよりさらに小さいものです。大きさは
【カイロミクロン→VLDL→LDL→HDL】の順番で小さくなります。

HDLに含まれているコレステロールは善玉コレステロールとも呼ばれています。肝臓から出て血液中を巡りながら全身の余剰なコレステロールを回収していきます。この働きがあるからHDLは動脈硬化を抑制する働きがあると言われています。

●β酸化について

最後にβ酸化に触れます。

血中内でトリグリセリドが分解されてグリセリンと脂肪酸になるとお伝えいたしました。脂肪酸は遊離脂肪酸となって細胞に運ばれてエネルギー源となります。

エネルギー源としてはまずは糖質を使います。ただし、何かしらの理由で生体内の糖質が不足してきた場合は脂質を使ってATPを生成していきます。上で少し触れましたが、もう少し詳しく見ていきます。


遊離脂肪酸は細胞に取り込まれると、補酵素Aと結合してアシルCoAとなります。ちなみに、これがミトコンドリア内に運ばれるためにはLカルニチンというアミノ酸が必要だったりします。

ミトコンドリア内に入るとアシルCoAがバシっと切断(酸化)されます。これによってアセチルCoA、NADH、FADH2という糖質代謝でも見たことがある物質が生成されます。脂肪酸からアセチルCoAを取り出す過程のことを【β酸化】といいます。

ちなみになんでβ酸化と呼ばれているかというと、脂肪酸と補酵素Aがくっついていて、結合部分からα位、β位…となっていて(脂肪酸は水素、炭素の結合体)、アシルCoAのβ位のところを切断(酸化)して起こるのでβ酸化と呼ばれています。まぁこれは知らなくて問題ないです。

ここからのATP生成工程が非常に難しいのでほぼ全部省略です。計算式が複雑なのです。(需要があれば解説しますがおそらくないでしょう)

β酸化で得られたアセチルCoAはクエン酸回路、NADHとFADH2は電子伝達系に入ります。

脂肪酸ごとに得られるATPの数は違います。以下で示しておきます。

カプリン酸:78
ラウリン酸:95
ミリスチン酸:112
パルミチン酸:129
ステアリン酸:146
アラキジン酸:163
ベヘニン酸:180
リグノセリン酸:197

とりあえず「グルコース1分子から得られるATP数(38)よりめっちゃ多い」とイメージが出来ていればOKです。

○まとめ

いかがでしたでしょうか?

「なんか複雑」と思った方が多いはずです。


はい、僕もそう思います。


脂質の代謝って複雑なんです。工程が多いんです。だから消化吸収して身体の各組織に運ばれて代謝されるまで大変なんだというイメージを持って頂きたいのです。身体の6〜7割は水分で構成されていると言われています。水と油(脂)は混ざりにくいからこそ取り込むのも一苦労なわけです。だから身体にも負担がかかるんだなーというイメージです。

だからこそ、普段から油に気を使ってほしいし、身体に悪い油を入れていくと処理が大変なんだ、蓄積されていくとあまり良くないんだ、だからしっかりと排泄していかないといけないんだという流れになっていきます。

こういうのと身体の原理原則を知るとイメージと理解が出来ていくのでこのような話を知っていくのはすごく大事なことなんだと思います。こういう面白さをきっかけにして栄養のことや健康のことに興味を持って頂けると嬉しいし、ダイエットをする際にも行動が変わっていくはずです。

今回は以上となります。
次回はたんぱく質代謝についてお伝えいたします。


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