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考えること、考えられるということ、そして、好きなこと。

 私が退店した時、町はすでに眠っていた。


 1時40分ごろ、あまりにもあまりな残業を終えてから店を出る。2店舗の店長を兼任して、全ての管理を賄うというのはあまりにも無理があるように思える、人手不足の昨今、しわよせはもちろん管理者にくる。
 駅前の店だったから、従業員用の駐車場も限られている。私は仕方なくコインパーキングに泊めていた。煙草をふかしながら清算してみると、1400円、なんだか、予想より高い。
 最後に残ったのが力仕事だったせいか、運転席に座った途端、どっと疲れを感じる。そうたいした距離でもないけれど、運転するのが億劫に感じられた。

 眠りそうな頭で考えることは、それでも、いつもと変わりなく、何かを考えているような、考えていないような、歌詞が流れたり、言葉が浮かんだり、明日の仕事のことが浮かんだと思えば、同じところをループして、家に帰って何を読もうか、何を食べようか、そしてまた歌詞が流れる。
 あまりにもまとまりのない思考は、疲れているからではなくて、これが元々の、私の頭の中身で。
 考えなさいとよく言われるのは、確かに、必要なことだと思うのだけれど、考えようとしたところで、ループしたり、別のことが挟まったり、一つのことを、まともに考えることができないでいる。

 どこか、直感的なのだと思う。とっさに閃かなければ、延々と、だらだらと、どうでもいいことをはさみながら出しか考えられない頭なのだと、最近になって気づいた。


 欠点というよりも、欠陥という方が、しっくりくる。


 考えるということは、多分だけれど、その物事に対して、真剣であったり、情熱であったり、危機感であったり、ともかく、関心がなければ、できないのではないかと思う。
 人の管理を考えることのできない、人の面倒を見るということをできない私は、よっぽど、他人に興味がないということだろうか。
 さらにいえば、読むことだって、ちらちらと、意識が飛ぶこともあるし、書くことに至っては、本当に、考えて書いているのかと、自分で自分が疑わしくさえある。ただ指が動くままに書いているだけじゃないだろうか。

 だとすれば。私は何にも興味がないのだろう。そして自分の欠点にばかり考えが向くのは、自分自身のことにしか、興味が持てないことの表れなのかもしれない。

 たとえばカメラで写真を撮りに行く。構図を選ぶ。明るさを調節する。角度を、構図を、テーマを。よりより一枚を撮るために、考える。
 たとえば誰かの言葉に感銘を受ける。場面がある。出来事がある。そして自分には思いもよらない、天啓とも思える言葉を受ける。
 たとえば何かを書く。文章でも、小説でも、詩でもいい。何を書きたいのか。表したいのか。誤字はないか。矛盾はないか。丁寧に見直しをする。


 何もかもが、私にはない感覚だった。


 何も考えないから、上達もない。なんとなく、撮っている。なんとなく、聞いている。なんとなく、書いている。
 回数だけを重ねて、変化が訪れないから、マンネリ化して、飽きてしまって。
 人の言葉に耳を傾けているふりをして、それはただの音となって通り抜けていく。誰かに言われた言葉で覚えていることなんて、ひとつふたつしか、思い当たらない。
 そして思いつくがままに、言葉を、並べて。なんとなく、いい感じになった。なんとなく、気に入らないかもしれない。読み直す間もなく、投稿してしまう。


 好きだと言っていいのだろうか。関心があると、言えるのだろうか。


 今もこれを書きながら、最終的に、どう話がまとまるのか、実は見当がついていない。本当に、赴くままにしか、書いていなくて。書くことが好きだと言いながら、その実、ただ、文字を並べることだけで、書いた気になっている。
 この考えすらもただの思い付きで、実際には、まるで違うのかもしれないけれど、ただ、好きなものについて、考えることは、楽しいはずなのに。考えることが、できていない、ような気がしている。

 そうしてただ、自分の異常をあげつらって、また、書いている。私はよっぽど、私のことが、好きなんだろう。
 そんな自分が、どうして誰かと、生きていけると、思っていたのか。どうしてなにかをして、楽しめると、思っているのか。

 そんな当たり前のことさえも、できずに、いる。
そうして自分をがんじがらめにして。自分から、生きづらく、なっている。


 好きでいたい。好きでありたい。そう言いながら、綴っていく。
 それはもはや、ただの願いでしかなかった。


 きっと疲れているのだろうと、思う。
 眠ろう、安らかに。



 文筆乱れてお目汚し。失礼致しました。

 本城 雫

いつも見ていてくださって、ありがとうございます。 役に立つようなものは何もありませんが、自分の言葉が、響いてくれたらいいなと、これからも書いていきます。 生きていけるかな。