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それから・・・

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#認知症

サイン

サイン

特に気に留めることなく
過ぎていったささやかな出来事

それは
もしかして
何か意味のある事
ではなかったのかと
後になってから思ういくつかのこと

いつものように
静かに座って
会社で仕事を片付けていると

トク、トク、トクと
自分の心臓の鼓動が感じられ
そしてそれが段々と小さくなって
次第に途切れていくのを
時々感じるようになり

1度医者に診てもらった方がいいかもしれない
漠然とそう思いなが

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認知症の現実

認知症の現実

先日
久しぶりに映画館で
認知症を扱った洋画を観た

認知症の人から見た現実は
ミステリーのような
ホラーのような
つじつまの合わない世界が

認知症ではない
周りの人には理解されず

認知症の本人と
認知症の人の周りにいる人達との
トラブルの要因となり
そこから始まる悲劇の物語

そのパターンは
最近では食傷気味になるほど
見聞きをするが

そのトラブルの要因への理解の不十分さや
向き合い方、扱

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母の遺伝子

母の遺伝子

叔母から
母の初婚の相手は
背の高い人だと聞いていたが

時間より少し前に
待ち合わせた場所に着いて
あたりを見回すと
それらしき人は見当たらなかった

待ち合わせの相手である
母の最初の子供の
その人については

家にあったアルバムの中の
小さな子供の頃の写真と

名前については
母に送ってくれた
その人自身が編集に携わった
ある本から
知ったのだったかどうか忘れたが

ネットで検索をしてみると

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罪悪感

罪悪感

仕事以外で出かける
たいていの
自分が楽しむための外出

友人とランチに行く
ひとり旅をする
ライブに行く
ボディボードに行く
等々・・・

約束をしたり
計画を立てる段階から

楽しみな気持ちと
介護が必要な家族がいるのに
放って出かけるという罪悪感は
いつもセットになっていた

もちろん
自分がいない時に
何かあっても問題がないように
デイケアやショートステイや訪問介護は
必ず手配していたけれ

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ギリギリ

ギリギリ

精神状態を崩して
毎晩興奮して騒いで暴れて
手の付けられない状態になってしまった
母の入院が決まった時

父が炊飯器をガスの火にかけて
家じゅうが真っ白に煙った日から
毎晩1時間毎にアラームをかけて
何かやらかしてないか
父の様子を確認する日か続いたが
父が自力で立ち上がれなくなって
父の入院が決まった時

母が最初の入院で退院した日から
また始まった
毎晩の母の興奮状態との闘いが
かかりつけの内

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バナナ

バナナ

母の毎朝の朝食だったバナナ
母か亡くなってからは
あまり買うことがなかったが

久しぶりに
朝食にバナナを食べようと思い
スーパーで
何種類かあるうちの
少し高めの
美味しそうなのを選んだ

しかし
亡くなくなった母に
毎朝刻んで食べさせていた時には
一番安いバナナしか
買ったことがなかったことを思い出し

自分で食べようと思ったら
美味しそうな高い方をと
無意識に選んでいた事に気づいて
ハッとし

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つけ

つけ

母の身体の
脚力
体幹
腎臓・・・

見た目や
健診の数値で
少しずつ
衰えが増えてきて

さらには
片手だけグーにしたまま
指を伸ばすことが
出来なくなってきて

無理に広げようとしても
痛がって広げられなくて

お風呂上りなど
温めるながら
ゆっくり時間をかけると
やっと少し
握ったままの指がほぐれてくる

母の様々な身体の衰えを感じながらも
年のせいだから
仕方がないと
完治を目指すような治

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お兄さんたちの事

お兄さんたちの事

夜勤明けのグループホームのお兄さんが
親族だけの葬儀を数日後に控え
家に安置されている母に会いに立ち寄ってくれて

母がグループホームで
よく好んで飲んでいると聞かされていた
ジョアを上着から取りだし
さり気なく手向けて
お線香をあげて
両手を合わせて静かに帰っていった

その前日の夕方訪ねてきてくれた
グループホームの別のお兄さん達2人は
私が母の顔の上の白い布を取ると
母の名前を何度も呼びなが

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書きかけの寄せ書き

書きかけの寄せ書き

「早く元気になりますように」
「またお会いするのを楽しみしています」

母が亡くなって
自宅に安置されている時に
グループホームの方が届けてくれた
母の顔写真が真ん中に貼られた
寄せ書きの色紙は

その死があまりにも急だったことを
物語るように
未完成で余白部分も多く

翌月の母の誕生日のために
どんなケーキを作ろうかと
考えていてくれていたことも
グループホームの方が
話してくれた

父の時もそ

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