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つぎはぎだらけのシャツに、風をはらませて歩いていく

グラフィックデザイナーをめざしていたはずなのに、なんやかんやで音楽系フリーペーパーの編集者になっていた私。小規模な会社だったけど「さすが東京!」という経験をたくさん積むことができた。一方で、沖縄時代からの借金も膨らみつつあり、30歳を目前にかなり焦りを感じていた私は、WEBライターに挑戦し始める。

私の気まぐれな思いつきと前後して、携わっていたフリーペーパーは廃刊になってしまい、社員も激減した。在籍していた会社は、編集にとどまらず音楽関連のいろんな新規案件をこなしながらなんとか持ちこたえていた感じだった。

仕事量はそんなに多くなく、定期的な締め切りもない。そんな状況のなか、私は社長に許可をとって、その会社に在籍しながらとある情報サイトのライターで副業を始めた。それが面白かった。

取材と称して、プライベートでは絶対に関われないような人に話を聞いたり、入れない場所に行ったりできるのが刺激的だったのだ。

WEBの記事は、紙の記事と違って拡散性が高い。公開されたことを取材対象者に知らせると、喜んでTwitterやFacebookで広めてくれた。そういうリアクションを確認することで、自分の仕事に「やりがい」を感じられた。やっと自分が思い描いていたライターになれたような気分だった。

在籍していた会社がいよいよダメになるぞ、というタイミングで紙もWEBも手がける小さな編集プロダクションに転職した。そこは上司の仕事の振り方に不満を感じ、1年ほどで辞めた。でも、今思うと当時の私の感覚は稚拙すぎていた。振られた仕事はハードだったけど、とても良い経験になったし、そこで味わった苦しさやうれしさが今の自信にも繋がっている。もう少し頑張っていれば良かったなとも思う。

次に就職したのは、とあるWEB情報サイトだった。そこは完全なるブラック企業だった。1年くらいで辞めた。

次に就職したのは、とある広告代理店だった。ここでは上司や仲間にとても馬が合う人が数人いたこともあり、10年弱在籍した。しかし、組織のあり方に疑問と危機感を感じたので転職を決意した。ここでの判断は間違っていないと自信を持っている。

ライターという軸を持ちながらも、これまでに何度も転職をしてきた。あまり考えないようにしてきたけど、数えてみると6回も転職している。現在の職場は7カ所目だ。人によっては、なにかしら深刻な問題を抱えているように思えるだろう。でもそうじゃない。私が考えなしに転職をしてきた結果だ。いまの職場に拾ってもらえたのも奇跡に思える。

私くらいの年齢だと、着実にキャリアを積んだ結果、立派なポジションに就いている人も少なくない。人と比べても意味がないとは頭ではわかっているけど、やっぱりちょっとへこんでしまうし、仕事への「自信」があまり持てないのは事実だ。

一方で、それなりにやってこれたというのも事実。タラレバを言ってもきりがない。これが私のライター人生なのだと開き直って、いまできることを頑張るしかない。それでいいじゃないか。

私のキャリアを振り返るたび、思い出す言葉がある。
Leyonaの「パッチワーク」という曲の歌詞だ。

つぎはぎだらけだね 私の人生
日々の切れはしを嘆きの針で縫う
でも上出来よ このシャツ
色鮮やか
どの絵模様にも愛がしみこんでる
風をはらんで歩こう
見知らぬ街
いつか私の生き方も
色とりどりに見えるかな

2010年に発売されたアルバム『Patchwork』のタイトル曲で、作曲はLeyona、作詞はあの松本隆だ。

ぼろきれでも、つぎはぎでも、
そのひとつひとつは大切な経験だ。
それが縫い合わさって、
どこにもないパッチワークになる。
なんて素敵な人生賛歌なんだろうと思う。
大好きな一曲だ。

いつか、私の生き方が、
もっと色とりどりになるように。
どこを切り取っても素敵な絵模様になるよう
今を自分なりに生きていきたいと思う。

仕事はフラフラしていた私だが、
私生活はどうだったのかというと。
実はこちらもフラフラだった。
その話は、また今度。


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