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タトゥーが入っていない体は、入れ墨美学的に美しい
数年前、刺青師(タトゥーの彫師)の方に会ったことがある。
がっしりした体格のおっちゃんは夏の暑い時期にもかかわらず長袖のTシャツを着ていて、目に見える部分には小さなタトゥーひとつないのに、衣服で隠れる部分には手も足も所狭しと墨が入っているらしかった。
「らしかった」というのは、おっちゃんが最後まで見せてくれなかったからである。
おっちゃんが刺青師をやっているとわかった経緯はすっかり忘れてしま
すっぱい葡萄とプライドの高い私たち
「重かったんだよね、そういうのが。」
そう言うと彼は、ゆっくりグラスを傾けた。そっかぁ、と相槌を打ちながら、私は残り少なくなったミックスナッツをいかに時間をかけて食べるか考えていた。手元のグラスはとうに空いていたけれど彼がそれに気づく気配はまるでなかったし、私も話を中断してオーダーするほど飲みたいわけではなかった。ただまるで興味のないこの話題が終わるまで(欲を言うならそうして「そろそろ帰ろうか」