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Aesopを戦略・決算の観点でみてみる

皆さんは、お気に入りの化粧品はあるだろうか?
世の中にはさまざまな化粧品が出回っており、老若男女問わず、人それぞれのお気に入りの化粧品があると思う。

私のお気にいりは「Aesop」である。
強いリラックス効果を与える魅惑的な香りと、統一されたシャープなパッケージ。洗面所に置いておくだけで、「なんだ、自分イケてるな」と思わせてくれる、そんなブランドであると思っている。

「素敵だ。イケている。」
このように思うのと同時に海外企業の分析が大好きな私は、1つ考えてしまうことがある。
「私が『Aesop』の商品に対して、強い好感を持てているのは、同ブランドのブランディングが上手く行っている紛れもない証拠ではないだろうか?」

こう考え出した瞬間、私の「知りたい」願望は一気に爆発した。
というわけで、今回は「Aesop」の戦略やブランディングについて深ぼって調査してみた。

Aesopのブランディング哲学

① 広告をなるべく抑える
Aesopでは、なるべく広告を流さないように注力している。
それは、Aesopが消費者からオーガニックで広がる信用力を重要視しているに他ならない。消費者との信頼関係と口コミのネットワークのおかげで、同ブランドの製品は広告を打たなくとも、売れるようになったのだ。

では、何に注力しているのか?
製品自体の質の担保もそうだが、Aesopではパートナーとの提携に力を入れている。例えば、高級ホテルや商業施設などだ。

Aesop製品をアメニティとしている施設
・パークハイアット東京
・Longman & Eagle(シカゴ)

「あそこのホテルの化粧品最高だった!」
といった具合に、ユーザーの既にあるUXにさらにワンポイントの付加価値を上乗せすることによって、同ブランドの印象付けは上手くいっているのかもしれない。

②店舗で表現するAesopの「美学」
Aesopの直営店舗はどれも芸術作品のような緻密なデザインを施されている。これは、各店舗が位置する風土や芸術的な観念に影響を受けており、さまざまな建築家、インテリアデザイナー、アーティストと共同で開発された、ある意味「芸術作品」である。

都会に高層ビルの中、落ち着いたエレガントなブティックと、製品が醸し出す芳香は、ある意味都会のジャングルかもしれない。

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Aesopの従業員の多く(おそらく本社メンバー?)は世界的なデザインコミュニティに参加していたりと、共通認識の美学を持っている。
彼らが店舗とともに織りなす美学が、顧客を惹きつける魅力になっているに違いない。

③従業員は皆Aesopのファンである
Aesopで働く従業員は、同ブランド製品を愛するファンから選ばれているようだ。このような人事決定は、顧客のUX向上に一躍買っているに違いないと感じている。
従業員がAesopのファンであるからこそ、従業員それぞれのブランドや商品の理解がより鮮明に深まり、より解像度と重厚なアウトプットを実現しているのだ。

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企業的な観点でAesopを見てみる

あまり知られていないが、Aesop自体はすでにExitを経験した会社である。
2016年にAesopはブラジルのNatura&Co社に買収される形で同社保有の完全子会社となった。
以下で、AesopとNatura&Co社の企業概要を抑えてみた。

社名:Aesop inc.
創業者:Michael O'Keeffe
設立:1987年
従業員:1,236人
本拠地:オーストラリア コリンウッド
業種:化粧品、Eコマース
URL:https://www.aesop.com/
備考:2012年より、Natura&Co社から買収交渉が開始される。
   その後、2016年に同社の完全子会社となる。
社名:Natura&Co inc.
創業者:Michael O'Keeffe
設立:1969年
従業員:約40,000人(グループ会社も含める)
本拠地:ブラジル サンパウロ
業種:化粧品、Eコマース、コンサルティング
URL:https://naturaeco.com/en/

備考にも記載した通り、Natura&CoによるAesopの買収交渉は2012年より開始された。その際には、Aesop社の持株を65%を約7160万米ドル(約77億円)で売却。
その後、2016年に残りの持株を全て売却し、AesopはNatura&Co社の完全子会社となる。

では、Natura&Co社をもう少し深ぼってみよう

Natura&Coを深ぼってみた

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同社はブラジル発のパーソナルケア化粧品企業である。
もともとは、地元ブラジルの豊かな生物多様性に着目し、ブラジル国内の30以上の生産地域と連携し、アマゾンの植物などを原料にした化粧品を、旗艦ブランドである「Natura Cosmeticos」(以下、Natura)」を通じて販売する企業であった。
Naturaのセールス展開は独特で、180万人以上在籍する「コンサルタント」と呼ばれる委託販売員による訪問販売方式をとり、消費者に直販するビジネスモデルをとっていた。

また、Natura&Co社は環境保全活動を積極的に行う企業であることでも知られている。Naturaでは、1983年にブラジル初のレフィル製品を販売、2006年に動物実験の完全廃止、2007年にCO2削減プログラム提唱、2011年にはアマゾンの森林を守るプロジェクトを実施。2019年には「世界のサステナブルブランド100」で15位にランクインしている。

そんな、Natura&Co社は企業買収にも積極的に力を入れてきた。
現在、同社の傘下企業は以下の通りである。

Aesop - 2016年買収(本拠点:オーストラリア)
THE BODY SHOP - 2017年買収(本拠点:イギリス)
AVON Products - 2019年買収(本拠点:アメリカ→イギリス)

このように、世界各地の化粧品ブランドを買収することにより、Natura&Co社は世界的なマーケットを手にしたグループ企業となった。

また、買収した企業はどれもネット販売に力を入れている企業であったため、もともとNaturaが持っていた訪問販売の弱点を克服できたともいえよう。
Natura&Coの共同創設者である Luiz Seabra氏は、プレスリリースにおいて、他企業の買収は消費者への直販スペースにおける一大勢力を生み出すと述べる。「直販は、ソーシャルネットワークという言葉が登場する前からソーシャルネットワークだった」と述べており、今でこそ注目が置かれているものの、自分たちは古くから消費者に直販するネットワークとオムニチャネルを実現していることを言及。
かねてから同社が貫き続けた販売姿勢が、現代のマーケティングで改めて脚光を浴びているとも捉えることができ、非常に興味深い動きだ。

Natura&Co社の直近の決算(第4四半期決算:3月5日)からAesopの売上を分析

先ほどから申し上げている通り、AesopはNatura&Co社の完全子会社である。つまり、Aesopの売上を知りたいという場合は、Natura&Co社の決算をみると良い。

ちょうど一昨日Natura&Co社のが第4四半期決算が発表された。
では、解説していく。

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会社全体の純利益は1億7,570万レアル(3,100万ドル)で、予想を推定8,940万レアルを上回ったと報告した。

また、同4Qの利息、税金、減価償却および償却前利益(EBITDA)が12.5億レアルであり、リフィニティブの12.9億レアルの見積もりをわずかに下回っているとも報告した。

一方のAesopのコロナウイルスの影響を大きく受けてオンライン販売の収益を190%増やしている。
また、アジアへの販売も活性化されており、62.1%の収益増加を達成している。

コロナ禍において、Aesopを含めてNatura&Co社がオンライン販売に注力していることが伺える。


まとめ

今回は私の大好きなブランドであるaesopについて取り上げさせてもらった。私たちが日常的に利用しているブランドを戦略の観点で某監視してみるような記事はいかがだったであろうか。

個人的に戦略を見ることは大好きなので、引き続きこのような毛色の記事を発信できたらと思っている。

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