「オレが稼いでる」は上に立つ理由にならない

「夫の扶養からぬけだしたい」というマンガがある。結婚し、専業主婦となった女性の苦悩を描いている。
夫は「僕が稼いでいる、僕が働くおかげで家族は支えられている」という。まるで女性の仕事は取り替え可能の簡単な仕事で、自分の仕事とは比べ物にならないというかのように。

私は、家族にとっていちばん大事なのはみんなが元気で笑顔で暮らせることだと思う。その目的に立つと、稼いでいるかどうかで上下をつけるのはおかしいように思う。なるほど稼ぐのも必要な仕事だが、家族を支える家事も必要な仕事。

植物でたとえれば、「オレは光合成して植物全体のエネルギーを生み出してる!」と言って、葉が根を見下そうとするのはおかしいだろう。根がしっかと大地を加え込み、植物の体を支えてくれるから葉も茂ることができる。役割分担でしかなく、どちらの方が上なんて言っても仕方ない。

YouMeさんは、子どもたちや私ら家族が元気で滞りなく生活していけるようにするための仕事をしてくれている。これは家族にとってなくてはならない機能。それを十全に果たしてくれている。他方、私は外に働いて稼いではくるのだが、これは稼いでさえくればいい話で、考えようによっては難しくない仕事。

互いに相手の仕事に敬意と感謝を持ち、言葉にすることが大切なのだと思う。
家族はチームなのだと思う。野球はピッチャーもいればキャッチャーもいる。もし「オレのおかげだ」なんて豪語するピッチャーがいたら、そのチームはガタガタになって勝てやしないだろう。

心臓が「オレが24時間鼓動を繰り返すおかげだ」と肝臓を見下したらおかしいだろう。生命も一つのチームとして機能する。どの機能が欠けても生命が成り立たなくなる。

一人暮らしを経験している人は、家事なんて簡単にできる、と思いがち。しかし家族の健康を預かるという仕事は、一人暮らしの家事と比べ物にならない。一人暮らしなら自分の食べたいものを食べればよい。食べたくなければ食べなければよい。しかし家族の食事を用意するとなると。

好き嫌いもあったり食欲も一人ひとり違ったりその日はそのメニューの気分でなかったり、バラバラ。家族ができると一人暮らしのときと違って地域のコミュニティにも参加する必要が出てくる。学校との連絡などもある。一人暮らしの家事とは比べ物にならない複雑さと煩雑さ。

特に子どもが小さい間は、24時間休憩なし。いまだに「子どもと遊んでるだけだろ」と思う男性がいるらしいけれど、「ねえ、見て見て」攻撃をひっきりなしに受け、自分の仕事もさせてもらえず、休むこともできない育児は「仕事の方がマシ」。休憩ができるし、自分のペースでできるし。

仕事のしんどさでいうと、家事育児の方がカネを稼いでくるよりしんどい面がある。なのに金を稼いだかどうかで上下を設けるような発言を聞いたら、それは我慢ならないだろう。

相手に敬意と感謝を持ち、互いに「相手はすでに大切なことをしてくれている」という信頼を持つこと。これが夫婦円満には大切なことのように思う。

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