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#オペラ
谺する聖愚者の予言──マリウシュ・トレリンスキ演出、大野和士指揮によるムソルグスキー《ボリス・ゴドゥノフ》
ひっそりとした闇に包まれた舞台に、各辺を光らせた立方体が並んでいる。上手側に置かれたその内側が照らし出されると、痩せ細った、身体に障碍を抱えている若者が、斜め上を見て椅子に座っている。その表情が背後のスクリーンに大きく映し出され、それが荒涼とした大地のような映像とクロスフェードするとともに、個人的な感情ではなく、もっと根源的な、この世界を生きる人間が抱えている宿命的な哀しみのようなものを湛えた嬰
もっとみる権力、格差、犠牲の美化への痛烈な批判――アレックス・オリエ演出のプッチーニ『トゥーランドット』
2019年夏に上演された、アレックス・オリエ演出の『トゥーランドット』(プッチーニ作曲、アルファーノ補筆)は、現代性に富んだ傑出したものだった。
なぜ昨年の公演の話を今頃取り上げるのかというと、実は私はこの公演を生では観ておらず、昨今の状況を受けて、新国立劇場、および東京文化会館がネットに無料公開してくれたもので初めて観たからである(それぞれ前者から7月20日公演、7月13日公演)。大野和士指