ミストで「ヒヤッ」でデータセンターを冷やす #超入門カーボンニュートラル に学ぶ9
本記事は、ESG/SDGs/CSVに関しての個人的な学びのアウトプットです。
以前に、「ESG思考/夫馬 賢治」を読んで非常に勉強になりました(まとめ記事①、まとめ記事②、まとめ記事③)。ということで、同氏の「超入門カーボンニュートラル/夫馬 賢治」も読み始めました。
「第5章 カーボンニュートラル政策による各産業への影響」からの学びをまとめたいと思います。以下の13の切り口でまとめられています。今回は、「9. 冷媒:代替フロンからノンフロンへ」についてまとめてみました。といっても今回は、自分調べ多めです。
1. 電力:全電力をまかなえるほどの洋上風力発電ポテンシャル
>こちらの記事(まとめ記事④)でまとめました!
2. 交通・運輸:EV化の流れは止まらず
3. ICT産業:AI活用でデータセンター電力消費量を40%削減
>2-3は、こちらの記事(まとめ記事⑤)にまとめました
4. 鉄鋼:製鉄大手でも水素と電炉へ
5. 非鉄金属:資源サイクルの課題克服がカギ
>4-5は、こちらの記事(まとめ記事⑥)にまとめました
6. 石油化学:進むケミカルリサイクル
7. セメント:CO2排出量を70%削減するコンクリート生産法
>6-7は、こちらの記事(まとめ記事7)にまとめました
8. 紙・パルプ:他素材から紙製へのシフト
>8は、こちらの記事(まとめ記事8)にまとめました
9. 冷媒:代替フロンからノンフロンへ
10. 建物・不動産:超高層でも鉄筋コンクリート造から木造へ
11. 食品・農業:食料増産の難易度が上がる時代にできること
12. ライフスタイル:サーキュラーエコノミーでの行動変革
13. 製品ライフサイクルアセスメント
上記の切り口は、経産省が2021年6月18日に策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン戦略」で成長が期待される14分野、として提示されているものとは少し異なる切り口となっています。
9. 冷媒:代替フロンからノンフロンへ
現在、オゾン層破壊効果のある冷媒から、代替フロンであるHFC(ハイドロフルオロカーボン)にシフトしたが、これらも温室効果ガスに指定されており、段階的に廃止する国際条約も誕生している。HFCに代わり、CO2、アンモニア、HFO(ハイドロフルオロオレフィン)といったノンフロン・グリーン冷媒を活用する研究が本格化している。コスト課題を克服できるかが普及のカギ。
一方でダイキン工業は、ノンフロン切り替えではなく、HFCを回収・再生するルールメイキングをしかけ、EUにおいて再生HFCを使用禁止対象からの除外に成功。冷媒のサーキュラーエコノミーとして事業継続している。
経産省が発行している「戦略的国際標準化加速事業:ルール形成の普及に向けた評価指標とその活用方法の開発に関する調査」で、この事例は、日本のルールメイキングの成功事例として紹介されています。
出典:戦略的国際標準化加速事業:ルール形成の普及に向けた評価指標とその活用方法の開発に関する調査
出典:戦略的国際標準化加速事業:ルール形成の普及に向けた評価指標とその活用方法の開発に関する調査
出典:戦略的国際標準化加速事業:ルール形成の普及に向けた評価指標とその活用方法の開発に関する調査
そもそもESGの領域は、国であったり、産業であったり、が横断的に協調して大きな目標を達成していくというアプローチが必要となります。そのため、ルールメイキングというアプローチは非常に重要となるでしょう。
ルールメイキングは、経営理論の中では、非市場戦略に位置づけられると考えています。「世界標準の経営理論」の中で、非市場戦略は近年台頭してきた分野でもある、としています。引き続き、機会を見つけて勉強していきたいと思います。
<世界初>ノンフロン冷媒を使った局所空調
「超入門カーボンニュートラル」の中でも「ノンフロン・グリーン冷媒を活用する研究が本格化」と書かれていましたが、実は、私の所属するNECでこの領域の取り組みがあります(あ、ここからは宣伝です)
以前、こちらの記事でもまとめましたが、デジタル産業を支えるITシステムはデータセンターにある大量のサーバー(コンピュータ)がデータ処理をしています。パソコンやスマホが熱くなるように、データ処理は大量のエネルギーを使い、そして熱を出します。そのため、データセンターでは、冷却のためのに多大な空調コストがかかります。
以下のように、ITサービスを支える、データセンター(緑色)のエネルギー使用量はどんどん伸びていくことが予測されています。ちなみに、青は、ネットワーク機器です。
出典:Nicola Jones (2018), The information factories, Nature vol. 561
夏にミストで「ヒヤッ」とするやつ
そんなデータセンターの冷却を、NECは「相変化冷却」という技術でエコにする取り組みをしています。相変化冷却というのは、夏とかにミストを街中で噴射していたりしますが、ああやっが肌に噴霧された水が水蒸気(気化)になるときに「ヒヤッ」としますよね。あれをデータセンターの冷却に使おう、というものです。
図の出典:最先端のセキュリティと省電力技術を駆使した「NEC神戸データセンター」を徹底解剖
そんな仕組みを使った冷却システムを図にしたのが上記です。急にイカツクなりますが、左側は液体をためてるところにデータセンターから出てくる熱をあてることで、中の液体が気体になることで熱を下げるという仕組みです。上記の記事は、NEC自身の運営している神戸のデータセンターを取り上げていますが、以下の記事にあるように、NTTコミュニケーションズさんのデータセンターでも事例があり、以下のような効果が示されています。
NECとNTT Comは相変化冷却技術を用いた独自の冷却システムを開発。運用中のNTT Comの施設で共同実験を行った結果、従来の冷却システムと比較して消費電力を半減できることを実証しました。改正フロン排出抑制法の対象とならないノンフロンを空調設備の冷媒に用い実用化するのは、世界で初めての事例です。
引用:NTT Communicationsホームページ
また、興味深いのは、業務用冷凍空調機器を利用している場合は、フロン排出抑制法に従い高圧ガスを扱える有資格者による管理が必要となるのに対して、ノンフロンの空調設備であれば、有資格者を置く必要が減り、そういった意味でもコスト削減や運用の柔軟性が高まるという側面もあるようです。
また、このような仕組みを使って、生ぬるくした廃熱を「水耕栽培や養魚、スーパー銭湯やコインシャワーへの熱源の供給、ビルの暖房など」に活用するといったことも検討しているとのことでした。
これは先日、以下の記事の一番最後に書いたようなデータセンターがセントラルヒーティング的な役割を担うということにもなりうるということだと思います。
実際、そういう事例もヨーロッパではありますね。
おわりに
今回は「超入門カーボンニュートラル/夫馬 賢治」から「第5章 カーボンニュートラル政策による各産業への影響」の中で「冷媒:代替フロンからノンフロンへ」についてまとめてみました。
このほか、当方のESG/SDGs/CSV関連の記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。
ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。
しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie
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