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脱炭素の影響「鉄鋼業・非鉄金属」編 #超入門カーボンニュートラル に学ぶ6

本記事は、ESG/SDGs/CSVに関しての個人的な学びのアウトプットです。

以前に、「ESG思考/夫馬 賢治」を読んで非常に勉強になりました(まとめ記事①まとめ記事②まとめ記事③)。ということで、同氏の「超入門カーボンニュートラル/夫馬 賢治」も読み始めました。

「第5章 カーボンニュートラル政策による各産業への影響」からの学びをまとめたいと思います。以下の13の切り口でまとめられています。今回は、4,5についてまとめてみました。

1. 電力:全電力をまかなえるほどの洋上風力発電ポテンシャル 
こちらの記事(まとめ記事④)でまとめました!
2. 交通・運輸:EV化の流れは止まらず
3. ICT産業:AI活用でデータセンター電力消費量を40%削減
>2-3は、こちらの記事(まとめ記事⑤)にまとめました
4. 鉄鋼:製鉄大手でも水素と電炉へ
5. 非鉄金属:資源サイクルの課題克服がカギ

6. 石油化学:進むケミカルリサイクル
7. セメント:CO2排出量を70%削減するコンクリート生産法
8. 紙・パルプ:他素材から紙製へのシフト
9. 冷媒:代替フロンからノンフロンへ
10. 建物・不動産:超高層でも鉄筋コンクリート造から木造へ
11. 食品・農業:食料増産の難易度が上がる時代にできること
12. ライフスタイル:サーキュラーエコノミーでの行動変革
13. 製品ライフサイクルアセスメント

上記の切り口は、経産省が2021年6月18日に策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン戦略」で成長が期待される14分野、として提示されているものとは少し異なる切り口となっています。

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出典:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン戦略

4.鉄鋼:製鉄大手でも水素と電炉へ

鉄鋼業は、以下の図にあるように、日本の二酸化炭素排出量の14%を占めるためカーボンニュートラル的には取り組みが重要視させる産業の一つです。

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出典:日本鉄鋼連盟, Zero Carbon STEELホームページより

日本で鉄鋼を作るための高炉を持つのは日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所の3社だと言います。鉄鋼業ってすごい設備による参入障壁があるんですね。

鉄鋼業は、コークスを用いて酸化鉄(FeO)状態になっている鉄鉱石から鉄分子を抽出する際に、残りの酸素とコークスの炭素が結合し、大量の二酸化炭素が出ます。

二酸化炭素を排出せずに鉄鋼石から鉄分子を抽出する方法は主に以下の3つがあると説明されています。

・既存の高炉にCCUS設備を設置
これは、CCUSはCarbon, Capture, Utilization and Storageの略で、発生する二酸化炭素を回収して別用途に使ったり、地下貯留するなどして大気に排出されないようにする方法
・水素還元方式
コークスの代わりに水素を利用。酸化鉄と結合してもH2Oにしかならないが、大量の水素が必要。先行するスウェーデンのSSABは、2020年に大規模プラントを稼働。水力発電や再エネ発電を活用したグリーン水素を大量導入。
・溶融酸化物電気分解(MOE)
酸化鉄に電子をぶつけて酸素イオンを引きはがす。副生物は酸素。米スタートアップのボストンメタル保有の技術。2024年に大規模実証プラントが建設される予定。

MOE以外についての全体像は、日本製鉄のサステナビリティのページの中にある以下の図で俯瞰することができます。

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出典:日本製鉄, サステナビリティ

図の左側にあるSuper COURSE50というのが、日本鉄鋼連盟で進める二酸化炭素を排出しない鉄鋼生産「ゼロカーボン・スチール」の取り組みの中での既存プロセスの低二酸化炭素化の取り組みの名称のようです。既存の高炉を使った方式だが、水素を吹き込むことで炭素量を減らすことができると言います。

図の右側に電炉ルートとあります。電炉製鋼法と呼ばれる超高温の放電熱でスクラップ鉄を溶かし、酸素や窒素などの不純物を除去し、高品質の鉄を得る方法。超高温の放電熱を得るのは、高炉よりも二酸化酸素排出量は少ない。ただし、高炉よりも鉄の品質が下がることが課題でさらなる研究開発が求められると説明しています。

これに関しては、日本鉄鋼連盟のZero-carbon STEELのページにある以下の説明が非常にわかりやすかったです。水素を使った製鉄では、還元反応=吸熱反応なので、温度のコントロールが非常に難しいということなんですね。

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出典:日本鉄鋼連盟, Zero-carbon STEEL

以下も、同じく日本鉄鋼連盟のZero-carbon STEELのページにある活動全体のロードマップとなります。2030年まではR&D、それ以降順次、実装・導入が進むという時間軸なのですね。

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出典:日本鉄鋼連盟, Zero-carbon STEEL

超入門カーボンニュートラル」では、最後にいずれにせよ、鉄鉱石採掘過程で二酸化炭素が発生する。また採掘場所が森林である場合もある。スクラップ鉄などからのリサイクルの推進も必要であると述べています。

5. 非鉄金属:資源サイクルの課題克服がカギ

鉄鋼と合わせて非鉄金属までまとめておきたいと思います。非鉄金属とは以下のようなものものの総称です。

<非鉄金属>
アルミニウム、マグネシウム、リチウム、チタンなどの軽金属
金、銀、プラチナなどの貴金属
銅、亜鉛、鉛、スズなどのベースメタル
ニッケル、マンガン、モリブデン、タングステン、タンタル、コバルトなどのレアメタル

これらは電子機器に不可欠な素材です。鉄鉱石同様、採掘でCO2排出されるためリサイクル推進が必要になります。

リサイクルにおける課題は、各素材が複雑に絡まった製品設計、廃棄物の回収フローが社会的に確立されていない、リサイクル工程での熱・電気利用および抽出に使う化学物質による環境・健康への影響、といったことが挙げられています。

書籍の中ではあまり説明されていませんでしたが、欧州の動きとしては、エコデザイン指令の動向が重要なのではないかと思います。例えば、以下の記事の内容を抜粋・要約すると

「欧州議会がEUで販売される製品に関して、リサイクル材の使用割合について目標を設定することを求めるだけでなく、”修理が容易”, "リサイクルが可能"な製品になるよう製品別の基準をエネルギーに関連しない製品にも拡大する新法案を2021年中に提出するよう欧州委員会に促している」といった内容が書かれています。

といったことが書かれています。

日本の製造業の企業も欧州のルールに影響を受けます、決められたルールに従い、不利な条件でコスト高にならない取り組みが求められるでしょう。ルールメイキングに関しては、以下の記事もご参照いただけますと幸いです。

おわりに

簡単に、本書の13の切り口だけまとめるつもりが、一つ目の電力についてソースのデータなど見ていたら脱線しまくって、第1項目だけで1記事になってしまいました。ということで、今回は「超入門カーボンニュートラル/夫馬 賢治」から「第5章 カーボンニュートラル政策による各産業への影響」の中で鉄鋼・非鉄金属についての項目からの学びをまとめました。

このほか、当方のESG/SDGs/CSV関連の記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。

ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。

しのジャッキーでした。

Twitter: shinojackie

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