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#野生の月評

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「月評」スピンオフ企画。新建築社刊行の雑誌『新建築』『住宅特集』などの掲載作品・論文にまつわる感想などの記事をまとめていきます。「#野生の月評」とつけてご投稿いただけると嬉しいで…
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#デザイン

梼原・木橋ミュージアム

text by 島田 枯葉のしまだです。 今回は、隈研吾設計の梼原・木橋ミュージアムを見学した時の感想です。 刎木(はねき)は交互に少しずつ迫り出しながら47mの建築を支える刎木構造が用いられたデザインとなっています。 真下に立つと180×300の交互に迫り出した大きな組木の本数とスケールの迫力を感じる場所でした。 横のEVを登ると47mの一直線に伸びた橋の空間となっています。 天井の梁が均等に連なり抜け感のある美しい空間です。 ギャラリー部分の天井も少しずつ迫

ローカルな空気感と温かみのある設えを体験する|LOG / Onomichi

先日、気が合いそうな友人たちと、昨年末に開業したばかりの尾道の宿・LOGへ行ってきました。 気が合い“そう”と書いた理由は、SNSで交流があっただけの初対面の人もいたから笑笑 お付き合いいただいた面々がみんな素敵で最高でした。文末にご紹介します LOG / Onomichi インドの建築事務所 Studio Mumbai がデザインを手がけたという内装がとても興味深い作りで、日本の建物ではなかなか見られない色使いや、内装に使われていた土や紙の使われ方がとても面白く、建築

¥300

#01 エストニア④ “負の歴史”に立ち向かうクリエイション

いま注目すべき取り組みを行っている街を訪れ、街づくりの未来を探るプロジェクト。 最初の訪問先は、“世界最先端の電子国家”として発展を遂げたエストニア共和国。 旧ソ連時代の巨大な廃墟、日本人の設計による悲願の国立博物館……リサーチメンバーの視点から、この国を突き動かす原動力の正体に迫ります。 ▶︎ 前編 ③ “仮想移民”とデザインが導く新たな展望 ▶︎「Field Research」記事一覧へ 「テクノロジー×街づくり」の歴史・文化的背景“世界最先端の電子国家”の現状を通し

軍隊経験と建築家|菊竹清訓と清家清、それぞれの戦後民主社会な「格納庫」

新建築主催「12坪木造国民住宅」コンペで佳作に選ばれた菊竹清訓案(新建築1948.4)と、清家清の建築家デビュー作となる「うさぎ幼稚園」(竣工1949、新建築1950.4)(図1)。特徴的なシェル形の建築は、ともにそれぞれの戦時中の軍隊経験に由来しています。 図1 ふたつのシェル型屋根建築 敗戦を境にして、民主的変革を遂げたといわれる日本社会。でも、そんな社会の建設を担った若き建築家たちは、やはりそれぞれに戦争を体験し、自らもその技術・技能でもって「一億総火の玉」の一端を

木造建築の語られ方|昭和期日本の精神史 はじめに&目次

noteのマガジン「木造建築の語られ方」ほかに書き散らしていた文章たちを再編成して目次化してみました。佐野利器にはじまり三澤千代治におわる木造建築のお話しを書くという目標に向かってスケッチしてみた架空書籍の目次とその前書きになります。 はじめに 木造・昭和・語られ方たとえば、十数年ほどの前の住宅雑誌のページを開いてみると、今と比べて茶色や緑色の割合があまりに少ないことに驚きます。かつては無彩色でまとめられがちだった建築も、今では木質感にあふれています。それこそ、『住宅特集』

studio velocity(栗原健太郎+岩月美穂)「山王のオフィス」を見学|ワクワク・物語・現象観察

「山王のオフィス」を見学今日は朝から建築家ユニット・studio velocity(栗原健太郎さん+岩月美穂さん)の新事務所「山王のオフィス」(2018)見学会に行ってきました。午後から天気がよろしくないということだったので、「雨が降っては楽しみが半減する!」と急いでの訪問。 なぜって、「屋上空間」がこうなってるから(図1)。建築専門誌『新建築』(2018年10月号)を見て「なんじゃそりゃ~」となったその「屋上空間」へ。 図1 オープンハウス・チラシ 諸事情あって今日は

タテモノを [見る] テーマ : ガラス編(その②)

「ガラス・パビリオン」、正式には「トレド美術館ガラス・パビリオン」である。所在地はトレド・・といってもスペインではなくアメリカのオハイオ州。五大湖のひとつエリー湖のほとりにある街だ。シカゴからは車で4時間、一番近い主要都市のデトロイトからも1時間半くらいは掛かるので、観光ついでに立ち寄るには気合いが必要かもしれない。 トレドは元々ガラス産業が盛んで、デトロイトの自動車工場向けにガラス部品を納めたり、建材・瓶や工芸品などを製造していたらしい。それに関連してか、トレド美術館にも

徹底は気づかない

前回に続き、青森県立美術館の話。 日本のいろんな美術館や建築、場所に訪れた時に、人それぞれ違う感情が生まれると思いますが、僕は青森県立美術館に訪れた時は、「徹底された空間」というのを体と心ですごく感じました。 感じる、という言葉は個人的な偏った感覚で、理屈ではないようなのですが、今日は言葉にできる、その「徹底」を綴っていこうかと思います。 青森県立美術館の、その徹底ぶりは随所に僕は感じたのですが、その1つは館内のサイン計画でした。 あまり美術館では見ないような「傘立て

見えない言葉

写真は青森県立美術館の手すり。 学生時代からずっと訪れたかった美術館は、美術館としてもよかったのですが、それ以上に、この美術館をいかに集中して作品を鑑賞する空間にするか、という、建築家とデザイナーの徹底した空間づくりに非常に感動していました。 今日はそんな素晴らしい空間の中にあった「見えない言葉」についてグッときたので、思ったことを語ろうかと思います。 美術館の設計は青木淳さん、タイポグラフィ、サイン計画は菊池敦己さん、と有名なお二人がこの美術館を設計されました。美術館

渋谷の精神と時の部屋 『hotel koé tokyo』に泊まってみた

※hotel koé tokyoは22年1月末をもって営業を終了しております。 こんにちは。 さて、突然ですが みなさんはお店などを選ぶ際なにを参考にされるでしょうか。 雑誌、レビュー、知人の紹介、 今ではTwitterのタイムラインなどもでしょうか。 私はというと、デザイン誌や好きなデザイナーの仕事から 決めることがままあります。 今回は、好きな建築家である谷尻誠さんが設計されたホテルが 渋谷にあることを知り、泊まってみた話(レビュー)です。 それではさっそく。

門脇邸見学|田中義久×中山英之対談

一昨日の午前、少し雨雲が漂う中、最近できた門脇耕三さんの自邸に伺った。 初めてこのプロジェクトを知ったのは、二年前のちょうど今頃だった。私の卒業制作を話をする機会があり、そこに門脇さんも同席されていて、自邸のプロジェクトと、私が描いていたアクソメ図と近いものを感じ、話をしていただいたことを覚えている。 しかし、こんな建物がどのようにして現実にできるのか、想像が及ばない。いつかきっと見てみたいと思っていたプロジェクトだった。 そんな中、門脇邸に知人が訪れるというので、勢いで

青木淳さんの「矛盾を見つけてそれを解決する」という建築の作り方を、アドルフ・ロースで考える

こんにちは。 アーキテクチャーフォトの後藤です。 今日は、青木淳さんのほぼ日での糸井重里さんとの対談中の言葉を紹介してたいと思います。 そして、丁度最近a+u誌で2号に渡って特集があった、アドルフ・ロースの建築について、青木さんの言葉で読み解くことができる部分があったなあ、と思い返したことを書いてみたいと思います。 *** (青木淳さんは日本を代表する建築家で、ルイヴィトンの表参道店をはじめ多くの建築設計を手掛けていることでも知られています) (アドルフ・ロースは、オ

東京駅丸の内駅前広場にもっと注目してほしい

最近,日本の都市空間においてとてもインパクトのある空間が誕生しました. それが,2017年12月7日に全面供用が開始された「東京駅丸の内駅前広場」です. 2012年に復元が完了した東京駅の駅舎はインパクトを持って完成し,すっかり東京のお馴染みの顔となりました.そして,歩行者空間「丸の内中央広場」,交通空間からなるこの駅前広場も地味ではありますが,東京駅の駅舎と同じくらいとても興味深いプロジェクトです. 何が興味深いのか簡単に解説します(正確な表現ではなかったら,ご指摘く