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売り手市場って大雑把に言わなきゃいいのに:その2(No.9)

前回、職種別の求人倍率がかなり違うことを挙げて、「売り手市場って大雑把に言わなきゃいいのに」と書きました。
今回は、地域についても同じようなことが言えることを書きます。


隣り合う都県で求人倍率はこれだけ変わる

今回は東京都と神奈川県の「求人・求職バランスシート」を比較します。
東京都の求人・求職バランスシート
神奈川県の求人・求職バランスシート
前回同様、「一般常用」の求人倍率を参照します。

2都県の令和6(2024)年3月「職業計」の求人倍率は次の通りでした。
■東京都 1.49
■神奈川県 0.85
神奈川県は1を切っています。

隣り合う2都県でこれだけ変わります。
だから、日本全体の求人倍率だけみて「売り手市場って大雑把に言わなきゃいいのに」なのです。

地域×業種で求人・求職バランスシートを見ると、より立体的に見える

前回記事では、東京都の事務従事者の求人倍率に注目しました。東京都は0.44でしたが、神奈川県の事務従業者の求人倍率は0.26。東京都よりもさらに厳しいですね。

こんな日常が起こっていても不思議ではありません。

【ある神奈川県民Aさん(架空)の求職活動】
神奈川県X市在住のAさんは、自宅近くの事務職の仕事を探していた。
ネット記事には、全国の求人倍率がしばらく1.0を超えていて「売り手市場」だと書かれていた。

東京に住む友人が最近、販売の仕事に就いた。「たくさん求人あったし、面接行ったらすぐ採用されてびっくりした!」とも言っていた。
私も自宅の近くで希望の仕事に就けそうだ。

…と思っていたのに、
最寄りのハローワークに求人紹介をしてもらいに行ったら、「事務職で仕事を探すなら、相当頑張った方が良いです」と言われた。なんか煽られた気がした…売り手市場って聞いてたのに💦

⇒上記の架空の物語では、「売り手市場」だとインプットがされていたAさんが、ハローワークの人の助言が受け止められない様子を想定しました。

「売り手市場」というざっくりとした情報が、仕事を探す個々人にプライマシーバイアス(最初に聞いたことが正しいと思い込む)、あるいは確証バイアス(自分に都合の良い・耳障りの良い情報を集める)を掛けてしまっていないかな~、と思うのです。

⇒ちなみに販売従事者も、東京都と神奈川県の求人倍率は結構違います。東京都は3.03、神奈川県は1.30(ともに令和6(2024)年3月)です。
神奈川県は東京都ほどには「超売り手市場」ではなさそうです。もしAさんが神奈川県で販売の仕事を探すとしても、友人の求職活動とはちょっと違った状況になりそうです。


自分起点で労働市場を捉えられたら、より良い仕事探しができるのでは?

架空の物語をでっち上げ(笑)ながら、求人倍率を地域×職種で立体的に捉えることの大事さを挙げてみました。
ここに「業種(業界)」の視点が加わるとより立体的に見えそうです。ですが求人・求職バランスシートには、業種ごとの求人倍率はありません。

そこで代替手段として参考になりそうなのが、前々回の記事で紹介した「人手不足感」の調査の、業種別結果だと思います。
二つのデータを組み合わせれば、自分が注目(希望)する地域×職種×業種の3軸で求人・求職動向を捉えたうえで、「どうやってその仕事に就くか?」の考えを巡らせられるのではないでしょうか。


※ちなみに私は「求人倍率が小さい・人出不足感がない地域・職種・業種で働くのを避けるべき」と言いたいのではありません。ファクト認知ができれば、求職活動の仕方を考えられるし、「こんなはずじゃなかった」といった後悔を避けられるはず!ということがお伝えできれば幸いです。念のため。


(おまけ)オープンデータは組み合わせると、得たきファクトが結構得られる


オープンデータは、一つ参照しただけでは知りたいことの断片しか得られないことも多いですが、私はいくつかのデータを組み合わせて見ることで、知りたいことの全体像が想定できることは結構あると思っています。

探索と解釈のコスト(労力)、あるいはその探索・解釈の結果を他者に伝達するためのコミュニケーションコストはちょっと高いですが、なんと言ってもタダ!なので、仕事や生活に様々活用しない手はないと思います。

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