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【保存版】マジックナンバー分析の教科書

Reproでマーケティングコンサルタントをしていると申します。
今回は、アプリマーケティングで頻出の「マジックナンバー分析」について解説します。

在籍企業上、恐らく日本で1番この分析をしている筆者の実体験も交えながら、概要からHowまですべてをお伝えします。


マジックナンバー分析とは何か?

「聞いたことはあるけど、実際どういう分析なのか分からない」という声をよく耳にします。私もアプリマーケティング支援を始めた際、話す人によって定義が揃っておらず苦労しました…。

実務の中で、「マジックナンバー分析」は従来の意味合いと、アプリマーケティングで使われるときの意味合いが異なると気付きました。

従来のマジックナンバー分析

ある期間内で「目標指標」に大きな向上効果を与えるイベントの実行回数を調査する分析


ユーザーが、1週間以内で求人詳細を5回閲覧すると「応募率」が大きく向上する

マジックナンバーは、求人詳細閲覧数「5」回となります。

アプリマーケティングにおけるマジックナンバー分析

ある期間内で「継続率」に大きな向上効果を与えるイベントの実行回数を調査する分析


ユーザーが、1週間以内にフォローを3回完了すると「継続率」が大きく向上する

マジックナンバーは、フォロー完了数「3」回となります。

このように、アプリマーケティングでは「継続率」を目標指標とする場合が多いため、「継続率」に大きな向上効果を与えるイベントの実行回数を分析する手法として扱われることが多いです。


なぜマジックナンバー分析が重要なのか?

業態にもよりますが、アプリのように継続利用するサービスでは、イベントを複数回実行したときの影響まで考慮して初めて、サービス成長のドライバーが明確になりやすいからです。

あるECサイトにおけるユーザー行動は以下のようなファネルで図示できます。

※厳密には上記のようなECサイトもスパンの長いサイクルとして定義できますが、需要が発生した際の短期の行動をベースにファネルとして図示されることが多いです

この場合、どういった情報に接触してもらうか、どの機能を使ってもらうかといったイベントの発火有無(イベント実行回数0→1回)がゴールである購入の促進に繋がりやすいです。

一方、アプリでは継続利用により収益が発生するビジネスモデルも多く、ユーザー行動は以下のようなサイクルとなります。

この場合、単純なイベントの発火有無(イベント実行回数0→1回)だけでは継続率の向上効果が測れない場合も多く、各イベントの実行回数(イベント実行回数n→n+1回)を調査して初めて、サービスの成長に繋がるドライバーが明確になりやすいです。

このように、アプリマーケティングではあるイベントの実行回数=マジックナンバーがサービス成長のドライバーとなる場合も多いため、マジックナンバー分析が重要となります。

マジックナンバー分析を理解するうえでの基礎知識

マジックナンバー分析の解説に入る前に、継続率については理解しておく必要があります。(知ってるよ!という方はスキップしてください)

継続率(Retention Rate)とは

ある期間のサービス利用者をベースに、その後の期間も継続して利用しているか、を計る指標です。
継続率のスコープは、日次継続率(Daily Retention Rate→DRR), 週次継続率(Weekly Retention Rate→WRR), 月次継続率(Monthly Retention Rate→MRR)の3つに分類できます。

  • 日次継続率(DRR)

    • 特定の「日」にサービス利用したユーザーが、○日後も利用しているか

  • 週次継続率(WRR)

    • 特定の「週」にサービス利用したユーザーが、○週後も利用しているか

  • 月次継続率(MRR)

    • 特定の「月」にサービス利用したユーザーが、○月後も利用しているかを図る指標

継続率について理解したうえで、実際のマジックナンバー分析の方法を紹介していきます。

マジックナンバー分析の基本原則

分析に入る前に決めておくべきことが3つあります。

①トレンドを考慮して対象期間を決定する

  • どんな分析でも必要ですが、ベース期間に特異的なデータが含まれないよう注意しましょう。

②継続率のスコープを決定する

  • 分析対象のサービスのユーザー行動を想定し、継続率のスコープを決めましょう。

    • 漫画アプリ(毎日読んでもらうことが理想)→日次継続率(+週次継続率)

    • カードの明細アプリ(月1回支払い日周りに使われる想定)→月次継続率、など

③対象イベントと実行回数を決定する

  • すべてのイベントを網羅するとノイズが多いので、主要なイベントをピックアップしましょう。

  • イベント実行回数は各イベントまず3回くらいで見てみることをおすすめします。

これらを決定したうえでデータを集計していきます。

マジックナンバー分析の具体的な手法とツール

結論、下記のような形でデータが集計できればツールは何でも構いません。

後ほど掲載する事例を見やすくするため、ここではイベント実行回数2回までのローデータを掲載しています

SQLを利用する

恐らくこれが最も多いケースだと思います。
クエリとしてはベース期間に利用したユーザーと、リテンション期間の利用ユーザーをJOINすることで算出できます。(ベース期間におけるイベント実行回数を指定することで複数回イベントを実行した際の継続率も算出可能です)
よくあるデータベースを想定して月次継続率を算出するクエリを書いてみました。

WITH base_user as (
  SELECT
    user_id
    , event_name
  FROM
    table_A
  WHERE
    track_date between "2024-01-31T15:00:00.000Z" and "2024-02-29T14:59:00.000Z" 
    AND event_name = "app_launch"
)
, retention_user as (
  SELECT
    user_id
    , event_name
  FROM
    table_A
  WHERE
    track_date between "2024-02-29T15:00:00.000Z" and "2024-03-31T14:59:00.000Z"
    AND event_name = "app_launch"
)
SELECT
  base_user.event_name as base_event
  , COUNT(distinct base_user.user_id) as base_user_count
  , COUNT(distinct retention_user.user_id) as retention_user_count
  , CONCAT(round(100 * count(distinct retention_user.user_id) / count(distinct base_user.user_id), 2),'%') as retention_rate
FROM
  base_user
    LEFT OUTER JOIN
  retention_user
    ON
  base_user.user_id = retention_user.user_id
  GROUP BY 1

GA4を利用する

GA4のGUI上ではイベント実行回数1回までしか集計できません。そのため、マジックナンバー分析をする際はBigquery連携したうえでSQLを使うことになります。
「コホートデータ探索」とセグメントの掛け合わせで集計可能であることを発見しました。(24/05/26)

別軸ですが、Webでも継続利用されるサービスでは「コホート分析」レポートはお勧めです


成功事例から学ぶマジックナンバー分析の活用方法

ここからは実際にマジックナンバー分析を使用したアプリの改善事例を紹介していきます。

とある音楽系アプリで、新規ユーザーの翌週継続率を向上させることを目的としてマジックナンバー分析を行いました。
分析結果を見たところ、アプリを初回起動した週に2回以上プレイリスト再生を行っているユーザーの継続率が大きく上昇していることが分かりました。

新規ユーザー:対象スコープ期間にアプリを初回起動したユーザー
散布図の見方

上の画像はデータを見やすくするためにイベント実行回数2回まででプロットをしていますが、実際にやってみる際はまずイベント実行回数3回くらいで見てみることをおすすめします。

このアプリでは分析によって見えた「初回起動週にプレイリスト再生2回以上」を目標として、Push通知/アプリ内メッセージで施策を実施しました。
結果、初回起動ユーザーの翌週継続率が未配信群比110%改善しました。

このようにマジックナンバー分析で成長のドライバーを特定し、「目標の行動を促すために何をしていくべきか」を考えて施策を実施していくことが重要です。

マジックナンバー分析の注意点

ここまでで「やれそう!」というイメージが湧いてきたと思いますが、1点気を付けたいポイントがあります。
マジックナンバー分析で特に注意しなければいけないのが、継続率とイベントの因果の順序です。

よく言われる「にわとりが先か卵が先か」という話ですね。

最終的には分析担当者が「適切なユーザー行動か」を想像して判断する必要がありますが、因果関係が逆になりやすいケースを挙げておきます。

  • 極端に利用ユーザーが少ないイベント

    • コアな機能を使っているヘビーユーザーのため、継続率が高くなっている(因果が逆である)ケースが多いです。

    • 散布図でアウトプットする場合、左側にプロットされるイベントほど注意が必要です。

  • セッション開始やアプリ起動のイベント実行回数を増やした際

    • アプリ起動を3回すると継続率が高い、のような読み取りはNGです。

    • ただアプリ起動させればいいわけではなく、何がアプリ起動に繋がっているのかを考えましょう。

最後に

マジックナンバー分析は、アプリのような継続利用されるサービスで成長ドライバーを見極めるのに有効です。
Webでも漫画サービスやVODなど継続利用されるサービスでは示唆が得られやすいと思います。もし分析したことがなければ、一度トライしてみるのをお勧めします。

今後もデジタルマーケティングに関するコンテンツを発信していく予定です!
モチベーションに繋がるので少しでも良い部分があれば「スキ」で反応してもらえると嬉しいです。とても喜びます。

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