パスタソースの外注により調理工程を5割削減。限られた人材でも、看板メニューに専念できる体制へ。
愛犬とともに食事を楽しめるカフェレストラン『AZEKIRI』。東京サマーランドが運営するドッグパーク内にあり、地産の食材を活かした人気店です。開業から好調だったカフェレストランに影を落とし始めたのが人材不足の危機でした。危機を脱するまでのストーリーについて、『AZEKIRI』のコック、齊藤博史氏にお話を伺いました。
相次ぐベテラン従業員の定年退職。
限られた人材で運営しつづけた苦悶の日々。
2015年10月、東京サマーランドの新事業としてドッグパークエリアが開業。このエリア唯一のカフェレストランとして『AZEKIRI』はオープンしました。ふわふわパンケーキと石窯で焼いたピザが看板メニューです。ランチではピザと並ぶほどパスタが人気で、創業時からパスタソースはすべて手作り。ピザ生地もパスタソースも、時間をかけて仕込んでいました。この手間を惜しまない本格メニューが、他県から来園されるお客さまや地元のリピート客から支持され、安定した運営をつづけていたんです。
オープンから3年ほど経ったころでしょうか。熟練スタッフ数人の定年退職が迫ってきたので、人材育成に取り組みはじめました。まず手始めにと新しいスタッフを募集。これがなかなか採用できません。採用できたとしても、ふわふわパンケーキの調理技術や、パスタソースの複雑な仕込みを習得するのに、かなりの時間を要することがわかってきました。調理を習得できても、経験の浅いスタッフが調理するとどうしても味や量にバラつきがでます。
そんな状況でまず不足したのが、看板メニューであるパンケーキの調理スタッフでした。パンケーキの提供には20分ほどかかるのですが、一度に焼ける数も決まっているため、オーダーが続くとお客さまをかなり待たせてしまいます。苦肉の策として、パスタを調理する人員をパンケーキ調理に移動させました。そこで新たに課題となったのがランチタイムです。ランチタイムはパスタに注文が集まることがあるのですが、新しく採用したスタッフの中にはパスタ調理ができない者も増えていたので、ランチタイムにもお客さまをお待たせすることが増えてきました。
2020年、コロナ禍の緊急事態宣言があけると、屋外のドッグパークという特性から比較的早くにお客さまが戻ってきました。有難いことにうちのお店にもいつもどおり、お客さまがご来店されるようになったんです。密にならないようテーブル数を減らしましたが、それでもやはりスタッフの手が足りません。調理の要となる新しいスタッフが充足しない状態で2年が経過しました。
その間に一人また一人と熟練スタッフが定年退職し、人手不足は深刻になるばかり。このままではお客さまが離れてしまう。何とか人手不足を解決しなければと、一刻をあらそう思いで打開策をネット検索していたときに見つけたのがシコメルさんのサービスでした。
質の高いパスタソースの導入に、
手作りにこだわるスタッフからも賛同の声。
シコメルさんに問い合わせてみるとすぐに担当者から連絡があり、お打ち合わせをさせていただきました。当初シコメルさんには、うちが提供しているパスタソースのOEM製造を依頼するつもりで連絡したんです。ですが担当の方といろいろ相談するうちに、おすすめのパスタソースがあると教えていただいたので、まずは試しにとスタッフもまじえて試食することにしました。
するとどうでしょう、手の込んだパスタソースを毎日仕込んでいるうちのスタッフたちが皆、シコメルさんのパスタソースに好評価を付けたんです。時間をかけて仕込んだパスタソースと変わらない品質。これならいけると確信し、さっそくお店で仕込んでいたパスタソースの代替えとしてメニューに加えることにしました。
シコメルストアから購入したパスタソースは「ナポリタン」「カルボナーラ」「ボロネーゼ」の3種です。スタッフ皆で相談しながら、ソースごとに麺の種類を変えて提供することにしました。パスタソースには何も手は加えていません。ナポリタンはソースをからめるだけ。最後に茹でたピーマンを彩りで添えています。カルボナーラは仕上げに刻んだパセリをのせるぐらい。ボロネーゼにはこま切れにしたローストビーフを少し足してソースとあえるのみです。言うまでもなく、パスタ調理にかける労力は激減しました。
シコメルさんのサービスを導入する前の仕込みと比べると、今は半分以下の負荷で提供できています。このパスタソースがあれば調理器具を使わなくてすむので、洗い場の負担も減りました。人手不足が解消されない苦しい日々を思いかえすと、これからは人手を増やす努力をするよりも、シコメルさんのメニューを増やす方がよっぽど現実的だと考えています。気づけばシコメルさんは、なくてはならない存在になりました。
看板メニューに専念できるようになり、
本来の店の魅力を取りもどした。
パスタソースの導入でいちばん懸念していたのが、お客さまからの反応です。これまで時間をかけて手作りしていたパスタソースを、「あえるだけ」のパスタソースに切り替えるのですから、お客さまからネガティブな意見が上がることも覚悟していました。
しかしいざ導入してみると、お客さまの反応がまったく変わらなかったんです。導入前と同じように、「パスタおいしいね」「味がほんといいですよね」と声をかけてくださいました。おそらくパスタソースが変わったことをお気づきになったお客さまはいないんじゃないかな。スタッフみんなが高評価を付けたパスタソースですから、お客さまも満足されるのは当然かもしれません。いちばんの懸念点は杞憂に終わりました。
スピーディーに高品質のパスタを提供できるようになった今、ランチタイムにお客さまをお待たせすることはなくなりました。お客さまの反応が変わらないぶん、もちろん売上も変わりありません。パスタソースの導入によるマイナス点は何一つなく、むしろ調理時間の短縮により、スタッフの負荷を大きく削減できたのが大きなメリットとなりました。何より、看板メニューのパンケーキに人材を集中できるようになったんです。
手間暇をかけるなら、看板メニューのパンケーキに集中させたい。ずっとそう思っていました。創業前のシェフによるメニュー開発では、パンケーキにいちばん力を入れたからです。メレンゲを作る工程では、分量や時間を何度も調整してふわふわ食感にこだわって開発しました。今ではお客さまの評判も上々のうちの看板メニューです。手のかかるパスタソースの仕込みがなくなったぶん、労力をパンケーキにつぎ込めるようになり、パンケーキの提供もスムーズになってきました。創業当時の『AZEKIRI』の魅力が戻りつつあるのかもしれません。
シコメルさんには今後、新たなオリジナルメニューの相談にのっていただきたいと考えています。とくにスイーツ関係ですね。看板メニューのふわふわパンケーキに並ぶ人気のものを、パンケーキよりスピーディーに提供できるものをシコメルさんと開発していきたい。今後も『AZEKIRI』の良き相談役でいてほしいと思います。
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