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高価食材の仕込みをOEMに。ホールスタッフの士気が高まる副次的効果も。

2021年、三軒茶屋でオープンして話題をさらった『寿司とワイン サンチャモニカ』を知る人は多いのではないでしょうか。2024年4月には、3店舗目となる系列店『寿司とワイン オモテサンドリア』が表参道にオープン。「塚田農場」などを展開するエー・ピーカンパニーで執行役員を務めていた綱嶋氏が手掛けるこれら人気店について、オモテサンドリアの店舗責任者、水谷氏にお話を伺いました。

調理経験があっても難しいとされる
「銀鱈のカット」をOEMで依頼。

寿司とワインのコンセプトは、三軒茶屋で2021年にオープンした『寿司とワイン サンチャモニカ』で誕生しました。代表の綱嶋が緻密にマーケティングして考え抜いた業態です。カウンターで食べるお寿司やワインは高価なイメージがありますが、お寿司とのペアリングをカジュアルに楽しんでいただいたり、普段ワインを飲まない人がワインの美味しさを知るきっかけになったりする、親しみやすいお店を目指しました。

コロナまっただ中でのオープンでしたが、ソムリエが選んだワインと本格的なお寿司をリーズナブルに楽しめるスタイルが話題となり、開業半年後の年の暮れには月商950万円超に、翌年には月商1000万円を超える繁盛店となりました。綱嶋と同じくエー・ピーカンパニー出身の私もサンチャモニカで勤務。2022年に学芸大学駅でオープンした2号店目の『寿司とワイン サンフランスシコ』の立ち上げにも関わり、2024年4月に表参道でオープンしたここ『寿司とワイン オモテサンドリア』も立ち上げから携わっています。

綱嶋の知り合いがシコメルにいた関係で、2022年の暮れからシコメルOEMで銀鱈のカットをお願いしています。カット済みの銀鱈は全系列店で使用。オモテサンドリアでは「銀鱈西京焼き」としてお客様にご提供しています。

シコメルOEMを依頼する前は、各店舗で銀鱈のフィレを切り身にしていました。ただ、魚の扱いは長年の経験がないと難しいんです。人がカットするとこれまでの調理経験のちがいから、どうしても厚さや見栄えが人によって異なってしまうからです。特に銀鱈のカットはキャリアの長い人でも難しい。カットの厚さ、グラム数、見栄えが安定しないと、焼き具合にちがいが出て、安定した味をお客様にお出しすることが難しくなります。年々値上りしている銀鱈は今では高価な食材の1つ。仕込みでロスが出ないように、「ほぼ同じグラム数で、見栄え良くカットする仕込み」をシコメルに依頼しました。

シコメルは飲食店と食品工場の
「通訳」のような存在。

飲食ビジネスを広く展開する大企業であっても、自社工場ではない食品工場とやり取りすることは難しいと聞きます。飲食店が求めるサービスと、食品工場が提供したいサービスがマッチしないことが多いからです。たとえば私たち飲食店には「食材に掛けられる原価の上限」がありますが、食品工場にも「生産ラインを動かす最低基準」があります。そこを上手く取りもってくれるのがシコメルなんです。

シコメルがいなければ食品工場と何度も連絡を取りあいながら、貴重な時間を費やして仕込みの外注を進めることになります。食品工場が良かれと思って提案してくれたことが、飲食店の現場ではちがっているケースもあり、そうした行き違いの修正にも時間が取られてしまいます。そこでシコメルの登場です。シコメルが飲食店の意図をくみ取みとり、それを食品工場へ上手く伝えることで、仕込みの外注がスムーズに進行。飲食店側と食品工場側、双方の利益が成り立つように調整してくれます。飲食店と食品工場は「食材をあつかう」点では同じですが、似て非なるもの。両者の視点に立って調整してくれるシコメルは通訳のような存在です。

当社のケースだとカットされた銀鱈があれば、西京焼きの「味噌漬け作業」をホールスタッフにも任せられます。調理経験がなくても対応できるキッチン作業が生まれたことで、料理の楽しさをホールスタッフとも共有できるのは、あとから気づいた利点でした。

シコメルOEMの商品活用が、
ホールスタッフの意識を高めるきっかけに。

調理経験がないホールスタッフにとっては特に、キッチンの敷居は高く感じるものです。そこでキッチンに参加している意識を持ってもらえたらと、カット済みの銀鱈の味噌漬け作業はホールスタッフに担当してもらっています。シコメルの仕込み済み食材を活用することで、ホールスタッフの料理に対する意識、またその料理を味わうお客様に対する当事者意識を高められると私は考えています。

料理を提供するときに「私が仕込んだものなんです」と言えると、ホールスタッフの誇りになります。その料理でお客様からお褒めの言葉をいただけると、ホールスタッフの自信にも繋がります。自信のあるスタッフの言葉は「伝わる力」がちがってくる。他の料理の魅力もより一層お客様に伝わっていくはずです。銀鱈のカットの仕込みを外注することが、まわりまわってホールスタッフの士気を高めることになるとは、思ってもみないうれしい誤算でした。

仕事の幅を広げていくと、アルバイトスタッフも皆やりがいを持って働いてくれます。最近では簡単な仕込みや在庫管理も任せていますが、率先してやってくれるのでとても助かっています。アルバイトスタッフも新しいことにどんどん挑戦してもらって、「料理に関わる仕事って楽しいな」と思ってもらえたら、これほどうれしいことはありません。

仕込みというのは最も時間が掛かる作業です。仕込みで外注できるところは外注して、そのぶんスタッフの休憩時間を増やしたり、スタッフ教育に時間を掛けたりできればと私は考えています。

スタッフが働く先を探すときに見てるのもきっとそういうポイントだと思うんです。「このお店で働いたら楽しそう」と思えるポイント。うちではアルバイトスタッフにもワインの勉強をしてもらうので、シコメルの仕込み済み食材を活用することで、ワインの知識習得の時間を増やしていきたい。お店で学びながら楽しく働いて、学生アルバイトなら就活のときに自己PRに使えるアルバイト先になれたら良いですね。もちろん、お店の魅力を知るスタッフがそのまま社員になってくれたらもっと良いのですが(笑)

2024年夏にはオモテサンドリアの隣に『鮨 suntos』がオープン。学芸大のサンフランシスコの2階で営業する『RALIHO』の流れを継ぐ、個室を備えた完全予約制のお店です。店舗数はまだまだ拡大していくと思うので、これからお店で働く新人もさらに増えていくでしょう。シコメルOEMを活用することでクオリティを担保しながら、スタッフ教育の時間も充実させて、今後もキッチンとホールのスタッフ皆がやりがいを持って働けるお店づくりをしていこうと思います。

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