ZARAはどんな書体を使っているのか
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。
ZARAというブランド
ブランド名:ZARA
創業:1975年
創業者:Amancio Ortega, Rosalía Mera
本社:アルテイショ(Arteixo) スペイン
店舗数:2007
ZARA(ザラ、スペイン語:)は、スペインの多国籍小売チェーン。ファストファッションに特化し、衣料品、アクセサリー、靴、美容製品、香水を販売しています。本社はガリシア州ア・コルーニャのアルテイショにあります。インディテックス(Inditex)・グループの最大の構成企業。2020年には年間20以上の新商品ラインを発表しています。
歴史
Zaraは1975年にアマンシオ・オルテガ(Amancio Ortega)によって創業されました。彼の最初の店舗は、スペインのガリシア地方にあるア・コルーニャ中心部にあり、現在もそこに本社を置いています。
彼は当初、1964年の名作映画『ギリシャのゾルバ』(Zorba the Greek)にちなんで「ゾルバ」という店舗名をつけていましたが、2ブロック先に同じ名前のバーがあることを知り、文字を並べ替えて「ザラ」と変更しました。1980年代には、リードタイム(lead time: 作業工程の始めから終わりまでにかかる期間)を短縮し、新しいトレンドに素早く対応するために、デザイン、製造、流通のプロセスを変更していきました。
映画『ギリシャのゾルバ』(Zorba the Greek)
スペイン国外での最初の店舗は、1985年にポルトガルのポルトにオープンしました。1989年にはアメリカに進出し、1990年にはフランスに進出 。 日本には2002年に進出しています。
2010年9月、Zaraはオンラインショップを立ち上げました。ウェブサイトはヨルダンで始まった。同年11月、Zara Onlineはさらに5カ国にサービスを拡大しました。
ZARAは2014年にRFID技術(タグを自動的に識別・追跡し、在庫を管理する技術)を店舗に導入しました。RFIDチップは、購入時に衣服から取り外されるセキュリティータグの中にあり、再利用が可能。このチップは、RFIDタグからの無線信号を検知することで、迅速な棚卸しを可能にしています。商品が売れるとストックルームに即座に通知され、商品を入れ替えられます。棚にない商品も、RFIDタグがあれば簡単に見つけることができます。
2019年、Zaraはロゴをリニューアル。 リブランディングは、フランスのエージェンシーBaron & Baronが担当。
2023年1月現在、衣料品小売業者はキッズとホームストアを含め、約3000店舗を展開しており。96カ国以上にまたがり、成長を続けています。
ZARAのロゴの遍歴
1975 — 2008
TT Tsars
書体名:TT Tsars
カテゴリー:セリフ体
分類:ディスプレイ
ファウンダリー:Type Type
2008 — 2019
2019 — 現在(2023)
このリブランディングを手掛けたのはフランスのBaron & Baron。Baron & Baronは、マルジェラ、ディオール、ボス、ボッテガ、コーチなどのブランディングも手掛けています。
2019にロゴを変えたのにも関わらず店舗におけるロゴはそのまま旧ロゴを使用している場合が多い。
ZARAはどんな書体を使っているのか
2023年10月現在、ZARAのウェブサイトで使われている書体は、Neue Helvetica(ノイエ・ヘルベチカ)。
Neue Helvetica
書体名:Neue Helvetica(ノイエ・ヘルベチカ)
カテゴリー:サンセリフ体
分類:ネオ・グロテスク
デザイナー:Max Miedinger, Eduard Hoffmann,
ディスプレイファウンダリー:Type Type
リリース:1983年
ノイエ・ヘルベチカ(ヘルベチカ・ノイエ)は、書体をHelveticaから改良された書体で、Neueとはドイツ語で「新しい(New)」を意味した言葉です。変更点は、読みやすさの向上、句読点の増加、数字のスペーシングの増加など。
ノイエ・ヘルベチカはUniversのように数字によるデザイン分類を採用しています。
ヘルベチカは、デザイナーではない方でもその名を知っている方もいるほどの有名な書体で、日本においてはデザイン集団、GROOVISIONS(グルーヴィジョンズ)が好んで使っていました。
Helvetica(ヘルベチカ)
ノイエ・ハース・グロテスク(Neue Haas Grotesk)という原名でも知られるヘルベチカは、スイスの書体デザイナーであるマックス・ミーディンガーとエドゥアルド・ホフマンによって1957年に開発されたサンセリフ書体です。
ヘルベチカは19世紀(1890年代)の有名な書体Akzidenz-Groteskやその他のドイツやスイスのデザインに影響を受けた、サンセリフ体のなかのネオグロテスクという分類の代表的な書体です。
その使用は1950年代から1960年代にかけてスイスのデザイナーの仕事から生まれたインターナショナル・タイポグラフィ・スタイルの特徴となり、20世紀半ばの最も人気のある書体の一つとなりました。
長年にわたり、異なる太さ、幅、サイズの様々なバリエーションがリリースされ、ラテン文字以外のアルファベットにもマッチするデザインも制作されています。当初デザインされたヘルベチカの特筆すべき特徴として、x-heightの高さ、横線または縦線上の終端、異常に狭い文字間隔が挙げられ、これらが組み合わさって緻密で堅固な印象を与えています。
スイスのミュンヘンシュタイン(バーゼル)にあるHaas'sche Schriftgiesserei(ハース活字鋳造所)によって開発されたこの書体のリリースは、ヨーロッパのグラフィックデザイナーの間で世紀末の「グロテスク」なサンセリフ書体への関心が再び高まり、同じ年にAdrian Frutiger(エイドリアン フルティガー)によるUniversもリリースされるというトレンドに合わせて計画されました。
ホフマンはハース活字鋳造所の社長であり、ミーディンガーはかつてハースのセールスマン兼デザイナーとして働いていたフリーのグラフィックデザイナーでした。
ミーディンガーとホフマンは、非常に明瞭で、その形に本質的な意味を持たず、様々な看板に使用できるニュートラルな書体を作ることを目指してこの書体を制作しました。
当初はNeue Haas Grotesk(新ハース・グロテスク)と名付けられていましたが、1960年にライノタイプ社によって急速にライセンス供与され、ラテン語で「スイス」を意味するHelvetiaからHelveticaと改名されました。
Helveticaを使う理由
見慣れたものに人間は好感を抱く傾向があるため、人気の書体は、より人気になる傾向があります。HelveticaとFuturaがその代表的な書体です。
またこれらの書体は、前述もしていますが、明瞭かつニュートラルな書体なため、ブランドにとってさらに使い勝手の良いものとなっています。
まとめ
ファッションブランドは、ターゲットと接する媒体がスマートフォンへ以降したことを理由にどこもかしこもすぐに認識できるサンセリフ体にロゴを変更する潮流があります。そのなかで、ZARAは、その潮流に逆行するかのようにファッション業界においてはクラシックなDidotというモダンローマン体というカテゴリをロゴにしました。
これの意図するところは、ファストファッションからラグジュアリーブランドへの参入ともとれます。しかし同時に字間をつめて「ファスト」な姿勢も保っています。
ユニクロというモンスターブランドの台頭にも重なるかもしれないのですが、ファストであり、ラグジュアリーでもある、という新しい市場の形成を目指しているのかもしれません。
ファッション業界も自動車業界も帝国化している現在、ブランドというよりは各帝国がどのような動きをしていくのか、その動向もまた興味深い対象です。
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参照
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