『アナログバイリンガル』♯ショートショートnote杯
田森くんは高校でいちばん古文が得意で、教科書に出てくる問題だけでなく、国語教師が生徒たちに挑戦状を叩きつけた教科書以外の問題もなんなくスラスラとすべて正解した。
そのうち、生徒の間で
「田森くんは日常会話を古文でしていた」
「国語だけでなく、数学・理科・社会の授業をすべて古文でノートに書き取ってる」
「英語を古文で訳した」
というあり得ないような噂まで飛び交った。
その後、田森くんは大方の予想に反し、大学は文学部ではなく医学部に進んだ。
それから、10年後の同窓会で
「国試に合格した途端に、田森くんが行方知れずになった」
という話で持ち切りになった。
「田森くんはきっと杉田玄白や平賀源内とかで、タイムリープして医学を学びに来ていた」
二次会の席でだれかがそう言ったので、薬も道具も少ない時代に孤軍奮闘する田森くんの姿を想い浮かべて、彼が助けた人によって、現代がどう変わったのか推理して盛り上がった。
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