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お店の場所を聞かれたのでスマホで検索したら、狐につままれて包まれなかった

※画像は記事と無関係です

家の近所のコインランドリーで洗濯や乾燥をしている間、パイプ椅子に座ってスマホをいじっていた。

すると、目の前に初老の男性が現れた。

「⚫️⚫️商店を知りませんか?」

「⚫️⚫️商店ですか? う~ん。ちょっと、わかりません」

ここに住んで15年になる。よく脇道細道を通り寄り道をするが、聞いたことがない商店名だった。

「もしかしたら、そこのお茶屋さんのご主人なら知ってるかもしれません」

すぐそこのお茶屋さんは、創業50年以上はありそうな佇まいで、高齢のご主人が近所の人たちと談笑しているのをよく見かけた。きっと、この辺りのお店に明るいだろう。

「それが、誰もいなくて」

「えっ!?  誰もいない?」

苦笑しながらも、レジや商品をそのままにするとは、なんて平和なんだろうと微笑ましくなった。

「はぁ~」

大きなため息が聞こえて我に返った。見ると、初老の男性は茶封筒を持ちながら疲れ切った表情で去って行くのが見えた。

なんだか申し訳ない気がしてきた。

(そうだ!  持っているスマホで検索しよう!  今ならまだあの男性は近くにいるかもしれない)

「『⚫️⚫️商店』っと。……、ん?  ん?  ん!」

Googleさんが、全国の⚫️⚫️商店から、現在地から近い順に⚫️⚫️商店を3軒ピックアップしてくれたのだが、最も近い⚫️⚫️商店でも

10㎞以上離れていた。

いや、Googleさんと言えども完璧ではない。できたばかりのお店や、あまりにも小さいお店までは把握していない可能性だってある。

(いや、商店名を聞き間違えたか? でも、復唱して確認したが)

取り合えずあの男性を捜そうと思い、慌ててコインランドリーを出た。しかし、見通しの良い一本道には、もうあの初老の男性の姿はなかった

なんだか狐につままれた気持ちになった。

(狐につままれた……?)

実は、わたしは『狐につままれた』という言葉がなかなか覚えられない。いつも『狐につつまれた』とどっちが正しいのか迷ってしまう。

そんなときは、そばに親友がいたら、彼女にどっちが正しいのか確認する。すると、親友は
狐に包まれてどうすんのよ! 怖いわ!
とツッコミを入れてくれるのだが、考えてみると、狐に抓まれる(摘ままれる/撮まれる)のも怖いので、『狐にされると怖くない方』という覚え方は無理があるのだった。

「ふふふふふ」

思い出し笑いをして一人でニヤケていると、視線を感じた。いつの間にか、お茶屋さんのご主人がお店に戻ってきていて、こちらを怪訝な表情で見ている。

いや、あるいは、お茶屋さんのご主人はずっとそこにいたのか?

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