大泉 志保

元大阪府公立中学校の校長です。「学校には学校でしかできないことがある」「学校はたまたま…

大泉 志保

元大阪府公立中学校の校長です。「学校には学校でしかできないことがある」「学校はたまたま乗った電車と同じ。そこでどう折り合いをつける?」校長室をいつもオープンにして、そんなことを生徒に話していました。 現在は奈良県に単身赴任し、初めて教育行政のお仕事にチャレンジしています。

最近の記事

「奈良マラソン」を走って終わろう♪

 2023年12月10日に行われる「奈良マラソン」にエントリーをしています。61歳の私はフルマラソンの大会に出るのはこれを最後にしようと決めています。  なぜ、マラソンを?とよく聞かれます。もともと大学時代はアメリカンフットボールをやっていたのですが、大学を出てからもずっとスポーツは続けていたいなと思っていました。社会人になってまもない頃、先輩と飲んだ帰りに電車で寝過ごしてしまいました。折り返しの電車はなく、しかたなく走って帰ることにしました。革靴を履いていましたが何とか帰

    • 外へ出るようになったのはなぜ?

      「しほさんが、こうして外へ出ていろんな人と会うようになったきっかけは何ですか?」 他府県のある校長先生が一緒に飲んでいる時にこんな質問をしてくれた。この質問に対する回答は今の自分のスタンスの根幹にかかわっていると思うので、自分のためにもう一度きちんと整理して書きとめておこう思う。 教師になって… 1986年、大学を出てすぐに中学校教諭になった。その後採用が激減し、10年くらい職員室の中では一番年下のままで、先輩方からかわいがってもらった。その間、がむしゃらになって教

      • やっちゃえ、教頭!!

         教頭会の冒頭にごあいさつをさせていただく機会があり、自己紹介のあと自らの教頭経験をもとに以下のような話をさせていただきました。 1.先生方へのケアは自分のケアにつながる  教頭先生になる時に先輩から「教頭は嫌われ役でいいんや。」と言われたことがあります。今、自分の教頭時代の経験をふりかえってみて、それは違うと思っています。先生方に好かれようとこびへつらうことはありませんが「職務には厳しく、人には優しく」であってほしいです。子どもたちが担任の先生を慕うように、「教頭先生、

        • 郷に入りては郷に従え

          新年度に入り、これまでとは全く違った新しい生活をスタートさせている人も多いと思います。私もその一人です。とある小さな町の教育委員会で働かせていただくことになりました。生まれて初めての経験です。それにともない単身赴任をすることにしました。これも初めての経験です。 知らない人ばかりの世界に飛び込んでみるのは、自分がどういう人間なのかを見つめなおすとても良い機会になるんだなと感じています。60歳になってこういう機会をいただけたのはとても幸せなことだと思っています。 仕事の内容や

        「奈良マラソン」を走って終わろう♪

          3年間のキセキ

           令和4年度修了式はこんな話をしてしめくくりました。生徒のみなさんはしっかり聞いてくれて、大きな拍手をしてくれました。  ずいぶん前の卒業生のお話です。  入学式で初めてAさんと出会いました。  Aさんは小学校5年生の時から、いじめが原因で学校ではほとんど言葉を発することがなくなってしまいました。中学校入学後は暖かいクラスメートに囲まれて笑顔もとても多くなり、担任の先生とは交換日記で自分の思いを綴ってくれるようになりました。1、2年生の時は校内適応指導教室で過ごす時間

          3年間のキセキ

          私立高校入試の日に思う

           大阪私立高校の入試の日です。3年生の先生方は早朝5時過ぎに出勤して最寄りの駅に生徒を見送りに行きます。若い頃からずっと経験してきた職員室の文化です。近隣の学校では、こういった「入試の見送りの行事」をやめようという声が先生方からあがり、今日も見送りはしないという学校も増えているようです。  無事に遅刻せずに予定の電車に乗っているか。上靴などの忘れ物を学校に取りに来る生徒はいないか。中学校から高校に急遽連絡をとってあげなくてはならない生徒はいないか。こういった心配は中学校の過保

          私立高校入試の日に思う

          ラーンネット・エッジ

           37年間ずっと公立学校に勤めてきて、定年を目前にしてあらためて「学校とは何か」という命題について自問自答する機会が増えました。この先もずっと考え続けることになりそうですが、現時点で心の中にあるのは「学校は『学ぶところ』ではなく『学べるところ』であってほしい」という消極的な願いです。  神戸にある『ラーンネット・エッジ』を見学させていただきました。「より自分らしく生きられる人が育つ場」として設立された『ラーンネット・エッジ』。それぞれ地元の公立学校に在籍しながらここに通う子ど

          ラーンネット・エッジ

          笑顔が見たいから

           ヘリコプターの遊覧飛行は10分で4万円くらいかかるとても贅沢なアトラクションです。でも飛行機と違って、空を飛んでいるという感じがストレートに伝わってくるし、何万人もの人々の暮らしが空からいっぺんに見えるので、たった10分間だけど人生観が変わるほど感動するものだと言われています。私も若い頃、一度だけ友人と一緒に阿蘇の空を飛んだことがあります。眼下に広がる雄大な景色に、本当に感動したのをよく覚えています。  ある人が東京の夜景を見るためにヘリコプターの遊覧飛行に参加して、たっ

          笑顔が見たいから

          部活動顧問のありかた

           冬休みに入る前に、部活動の顧問の先生方をねぎらうべく、ミニ研修を開催しました。こんな話をしました。  中学校や高等学校での部活動顧問の先生の指導のあり方が問題になることが時々あります。どうしてそうなってしまうのかを考えてみました。顧問の先生は指導者であるべきだという考えがいまだに主流であるからではないかと思っています。  アクティブラーニングという言葉が使われ始めた時に、教師主導型の授業中心でやってきた私たちは、果たして『学び合い』のようなアクティブラーニングなんてでき

          部活動顧問のありかた

          黒船になってはいけない

           「黒船になってはいけない。」  これはある人が私にくれた言葉です。何か新しいことに挑戦しようとする時に、もともと「新しいこと」に必要性を感じていない人との関係性はとても大事にしなくてなりません。そしてそれが一番自分らしくものごとを変えていく方法なのだとその時あらためて気づかされたのでした。  「泰平の眠りをさます上喜撰たった四盃で夜も眠れず」という幕末の有名な狂歌があります。1853年にペリーが黒船に乗って浦賀に来航した時の世相をあらわしていますが、鎖国を続けてきた当時

          黒船になってはいけない

          地に足をつけて

          毎年恒例の小学校6年生の中学校体験入学が行われました。5か月後に入学してくるかわいい小学校6年生たちが、中学校の授業や部活動を体験してくれました。帰り際に体育館に集まってくれた6年生の前で、私はこんな話をしました。  「背伸びをする」という言葉があります。辞書で調べると「自分の実力以上の状況に見せかけること」とあります。みなさんは5か月後に中学校に入学するのだけれど、決して「背伸び」をして入学しないでください。そんな必要はありません。「背伸び」をしていたらしんどくな

          地に足をつけて

          参加点でも9.0以上

           高校生の時に体操部に所属していて試合に出たことがあるけれど、器械体操6種目のうち「あん馬」なんかはまったく練習していなかったので、10点満点中1.0という私の得点が会場に表示され、観客から笑われたことがあります。恥ずかしくて逃げ出したくなりました。そしてなんと1.0は参加点だというのです。  自分の演技がまったく評価されなかったのはしかたがないけれど、10点満点で参加点はたったの1点だというのです。(※ 現在は採点方法が変わっています。技の難易度に応じて加算されていくポイ

          参加点でも9.0以上

          忘れられない夜

          「ぼくは、なかなか学校に行けなくて…。でもある日、朝起きられないでいたら先生が2階の窓から突撃訪問してきて起こされました。先生は本当に生徒一人ひとりのことを大事にしてくれていると思います。」 「私はコミュニケーションをとるのがとても苦手です。でもこのクラスだったら居心地がいいです。自分からはなかなか話しかけられないけど、どうかみんなから話しかけてください。よろしくお願いします。」 「ぼくは公立高校に行かなくちゃいけないんです。兄や弟が私立に行くから。本当にたいへんなん

          忘れられない夜

          夏休みのすてきな光景

          夏休みに入り、本校(中学校)の校区の3小学校で小学生の学習会が行われている。そこに学習サポーターとして有志中学生に参加してもらうことになった。昨年、この中の一つの小学校で実施したところ、小学生にも中学生にもとても評判がよく、今年はついに校区すべての小学校の学習会に参加させてもらうことにしたのである。 もともと小中それぞれの学力向上担当者が「こんなことができたらおもしろい」という共通認識からスタートしたものだ。「おもしろい」という言葉の裏には、小学生にとっても

          夏休みのすてきな光景

          本当に強い人

          先ほど〇〇君に表彰状を手渡しました。2000メートル、つまり2キロのレースで優勝、すごいですよね。私も走るのが好きです。夏休みは〇〇君と一緒に走って、家に帰ったら子ども用のプールに水をためて飛び込む、それが楽しみでたまりません。今年久しぶりに行われるフルマラソンの大会に出ようと思っているのでこの夏はとにかく少し練習しようと思っています。 さて、フルマラソンの思い出ですが、毎年泉州国際マラソンという大会に出ていました。堺市の浜寺公園をスタートして、泉佐野のり

          本当に強い人

          学び続ける職員室に

           教員の免許更新制度の廃止にともなって、文部科学大臣は「今後、教員の研修は校長の責任において実施せよ」という談話を発表しています。それにともなって、各都道府県教育委員会、各市町村教育委員会がどんな施策を打ち出してくるのかまだわかりませんが、私は全国の学校が競いあうように校内研修をたくさん実施して、先生方の余裕がどんどんなくなっていくことをとても危惧しています。  その学校の現状に応じて生徒のために必要な校内研修を実施することはとても大切なことだと思いますが、たくさん実施すれば

          学び続ける職員室に