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3年間のキセキ

  令和4年度修了式はこんな話をしてしめくくりました。生徒のみなさんはしっかり聞いてくれて、大きな拍手をしてくれました。
 
 ずいぶん前の卒業生のお話です。

 入学式で初めてAさんと出会いました。
 Aさんは小学校5年生の時から、いじめが原因で学校ではほとんど言葉を発することがなくなってしまいました。中学校入学後は暖かいクラスメートに囲まれて笑顔もとても多くなり、担任の先生とは交換日記で自分の思いを綴ってくれるようになりました。1、2年生の時は校内適応指導教室で過ごす時間がほとんどでしたが、欠席はほとんどなく本当によくがんばりました。夏休みには校外学習にも出かけました。

 3年生になって支援学級に入級してからは、クラスの行事にも積極的に参加するようになりました。クラスではいつも担任の先生と友人たちが笑顔で迎えてくれました。「おはようございます。」と授業の初めの「礼。」という言葉を発するのが、学校の中では精一杯だったけれど、確実にAさんは自分の思いを表情で伝えてくれるようになりました。まばゆいばかりのAさんの成長を見てきた3年間でした。

 卒業式の前日、支援学級で『お別れ会』が催されました。いつも純粋な心で私たちを包んでくれた3年生たちが、それぞれの思いを先生方や後輩たちの前で話すことになりました。トップバッターはAさんでした。内心、Aさんは何も話せずマイクが次の生徒に回されるものだと思っていました。ところがマイクを握ったAさんは、きりっとした表情で顔をあげました。そして大きな一呼吸のあと、Aさんは堂々と語ったのです。

「みなさんのおかげでここまで来ることができました。3年間本当にありがとうございました。」

 Aさんの素敵な声が教室いっぱいに響きました。この声を聴ける日を3年間待っていました。Aさんもこの言葉をみんなに届けるために3年間がんばってきたのだと思うと、身体中が震えて涙が止まりませんでした。

 中学校の3年間は、心も身体もすごく成長する3年間です。2年生はあと1年、1年生はあと2年でどんなふうに自分を変えることができるでしょうか。学年が変わるこの春休みも、大きく変わるチャンスかもしれません。しっかり成長をして、この学校でよかったと思える中学校生活を送ってください。

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