黒船になってはいけない

 「黒船になってはいけない。」
 これはある人が私にくれた言葉です。何か新しいことに挑戦しようとする時に、もともと「新しいこと」に必要性を感じていない人との関係性はとても大事にしなくてなりません。そしてそれが一番自分らしくものごとを変えていく方法なのだとその時あらためて気づかされたのでした。
 
 「泰平の眠りをさます上喜撰たった四盃で夜も眠れず」という幕末の有名な狂歌があります。1853年にペリーが黒船に乗って浦賀に来航した時の世相をあらわしていますが、鎖国を続けてきた当時の日本国民に、歴然とした力の違いを誇示することで、このあとの交渉が有利にすすむだろうという計算があったことでしょう。結果、まさに彼らの思惑どおりに事はすすみ、ついには不平等条約の締結に至ったというのは誰もが知る歴史上の事実です。
 
 この日本史のエピソードを、ものごとの改革をすすめていこうとする人の行動パターンに置き換えてみる時、こういう黒船のような改革をする人は、「とにかく変えちゃえ、時代はあとからついていくよ」という感じですから、スピーディーで話題性もあります。とくに、これまで遅々としてすすんでこなかった日本の教育改革には、時としてこういう黒船タイプの改革が功を奏している部分もあるでしょう。
 
 私もいつしかそんなセンセーショナルな教育改革にあこがれるようになりました。あこがれてはいるけれど、自分にはそこまでの勇気と力量が伴わないことをふがいなく思ったり、焦りを感じたりすることがよくありました。
 
 「黒船になってはいけない」
 肩の荷がおりたような気がしました。不思議なくらい楽になりました。自分らしいやり方でじっくりと新しいことにチャレンジしていきたいと思っています。

 あたり前のことだとわかっているつもりでも、やはり他人とのコミュケーションを通じてインプットする言葉には力があります。


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